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毎日、泣いて笑って喜んで哀しんでる、かなりラテンの血の濃い、そんな宮武嶺のエブリワンブログです!

認知症徘徊事故、家族が監督義務者の責任を負わないとする画期的な最高裁判決。そして残された課題。

2016年03月02日 | 法律と裁判・事件

 

 2007年12月、愛知県大府市のJR共和駅の構内で、認知症の91歳の男性が電車にはねられ死亡した事故で、JR東海は振り替え輸送にかかった費用などの賠償を求める裁判を起こし、1審と2審はいずれも家族に監督義務があるとして賠償を命じていました。

 この場合、亡くなった男性が起こした事故は一種の不法行為であり、JR東海は不法行為の被害者ということになりますから、本来は男性が不法行為責任に基づく損害賠償義務を負います。

民法709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 ただし、この責任は本人に意思能力(良い悪いの判断がつき、良いことはするし悪いことはしないという行動の制御能力もある)ことが前提です。よって、高度の認知症など心神喪失状態の加害者には責任を問えないのです。

民法713条 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。

 もっとも、これでは被害者がやられ損ということになりますので、この意思無能力者に「監督義務者」がおり、この人に監督義務違反がある場合には、被害者はこの監督義務者に損害賠償を請求できます。

民法714条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

 本事件の最大の論点は、男性と同居していた妻や介護を手伝っていた長男が、この「監督義務者」にあたるかということでした。

 

 今回の最高裁判所の判断は、認知症の人や精神的な障害がある人について、妻や実の息子だからといって、それだけで無条件で監督義務を負うものではないと判断しました。

 同居しているかどうかや、日常的な関わりがどの程度か、財産の管理にどう関与しているか、それに介護の実態などをもとに、家族などが監督義務を負うべきかどうかを考慮すべきだと指摘しました。

 そのうえで今回のケースについて検討し、妻は当時85歳で自分自身が介護が必要な状況だったうえ、長男も離れて暮らし、月に3回程度しか実家を訪ねていなかったことなどから、

「認知症の男性を監督することはできなかった」

として賠償責任は認められないと結論づけました。

 判決要旨には

民法714条は、責任無能力者が他人に損害を与えた場合、法定の監督義務を負う者に賠償責任があると定めるが、保護者や成年後見人であるというだけでは監督義務者には当たらない。また民法752条は、夫婦の協力や扶助の義務を定めているが、これらは夫婦が互いに負う義務であって、第三者に対して、夫婦いずれかに何らかの義務を負わせるものではない。男性の妻や長男は監督義務者に当たらない。

となっています。

 このように認知症の人が事故を起こした時の家族などの責任について最高裁が判断の基準を示したのは初めてで、高齢化が進む中、認知症などの介護の現場に広く影響を与えそうです。

浅岡弁護団長。



 この最高裁判決は認知症などの病気の家族を持つ方々には朗報ですが、他方、最高裁は

もっとも、法定の監督義務者でなくとも、責任無能力者との関係や日常生活での接触状況から、第三者への加害行為を防ぐため実際に監督しているなど、監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情がある場合は、監督義務者に準ずる者として民法714条が類推適用され、賠償責任を問えると理解すべきだ。

としましたので、病院や介護施設などの関係者にとっては重い判決です。

 最高裁の判断基準で言うと、家族の中で高齢者と密接に関わる人ほど責任を負うリスクが高まり、病院や介護施設なども責任を負うリスクが出てくるわけですから、この判決だけで家族や介護関係者が全面的に救われるわけではありません。

 こういう人たちが安心して認知症患者の介護ができるような、政府の支援や保険の整備が必要でしょう。

 逆に、今回は原告がJR東海ですから、この事情の中でご家族に請求し、裁判までやるのはどうかと思いますが、認知症で徘徊して事故を起こした人の被害者が一市民だった場合にはどうでしょうか。加害者である患者さんの関係者に損害賠償を請求したいというのはやまやまではないでしょうか。

 そもそも、不法行為責任という制度は、社会に起きた損害を誰がどれだけ負担するかという公平を保つための制度です。となると、今回の判決は、被害者がJR東海という社会的強者であったことも関係しているかとも思え、そうなるとなおさら画期的な判決というべきかもしれません。

 


この事件の場合、同居していた妻が要介護状態ではなく、十分に監督できるような状態だったら、判決はまた違っていたかもしれないということです。

それにしてもそんな状態の妻に請求したJR東海も、請求を認めた一審二審の裁判官は鬼ですな。

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最高裁、判決要旨

 最高裁が1日言い渡した認知症事故訴訟の判決の要旨は次の通り。

 【事実】

 男性は2000年12月ごろから認知症の症状がみられ、妻と、近くに転居した長男の妻が自宅で介護していた。症状が進んで1人で外出するようになり、家族は連絡先を記した布を着衣に縫い付けたり、玄関にセンサー付きチャイムを設置したりした。男性は07年12月、家族が目を離したすきに1人で外出し、電車にはねられて死亡した。

 【監督義務】

 民法714条は、責任無能力者が他人に損害を与えた場合、法定の監督義務を負う者に賠償責任があると定めるが、保護者や成年後見人であるというだけでは監督義務者には当たらない。また民法752条は、夫婦の協力や扶助の義務を定めているが、これらは夫婦が互いに負う義務であって、第三者に対して、夫婦いずれかに何らかの義務を負わせるものではない。男性の妻や長男は監督義務者に当たらない。

 もっとも、法定の監督義務者でなくとも、責任無能力者との関係や日常生活での接触状況から、第三者への加害行為を防ぐため実際に監督しているなど、監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情がある場合は、監督義務者に準ずる者として民法714条が類推適用され、賠償責任を問えると理解すべきだ。

 監督義務者に準ずる者かどうかの判断は、本人の生活や心身の状況に加え、責任無能力者との親族関係や同居の有無、介護の実態などを総合考慮すべきだ。実際に監督している、あるいは容易に監督できるなどの事情を踏まえ、責任を問うのが客観的に相当かという観点で判断する必要がある。

 【判断】

 事故当時、妻自身85歳で、要介護認定を受けていた。長男は20年以上男性と同居しておらず、事故直前は週末に男性宅を訪ねていただけだった。いずれも第三者への加害行為を防ぐために男性を監督することはできなかった。監督義務を引き受けていたとはいえず、監督義務者に準ずる者ではない。

 妻の賠償責任を認めた名古屋高裁の判断には明らかな法令違反があり、その部分は破棄を免れない。長男の賠償責任を否定した判断は是認できる。(共同)

 

逆転勝訴 「良かった」遺族安堵 弁護団は「画期的判決」


 
最高裁の判決言い渡しの後、会見する浅岡輝彦弁護士(左)ら遺族側弁護団=東京都千代田区の司法記者クラブで2016年3月1日午後4時5分、猪飼健史撮影
 

 認知症の人による損害の責任は家族が負うべきなのか。超高齢社会に浮上した重い命題に1日の最高裁判決は介護家族に責任はないとする判断を下した。1、2審で責任があるとされた家族にとっては土壇場での逆転勝訴。裁判を闘ってきた男性の長男(65)は「本当に良かった」と取材に安堵(あんど)の声を上げた。【銭場裕司、島田信幸、山下俊輔】

 

 判決後、記者会見した遺族側代理人の浅岡輝彦弁護士は「介護しているだけでは監督責任に当たらないとした。素晴らしい、画期的な判決」と喜びをかみしめるように語った。一方、JR東海は「お気の毒な事情があることは十分承知しているが、列車の運行に支障が生じ、振り替え輸送にかかる費用なども発生したことから裁判所の判断を求めた。最高裁の判断を真摯(しんし)に受け止める」などとコメントした。

 1、2審判決に危機感を覚え、「家族の責任にしてはいけない」との見解を繰り返してきた公益社団法人「認知症の人と家族の会」(京都市)も続いて会見。高見国生代表理事は「うれしい、良かった、に尽きる。家族は(認知症の身内の)単独での外出を防ぎきれないが、裁判官に認知症を理解していただいた。最高裁まで頑張った遺族に敬意を払いたい」と時折感極まった様子で語った。

 1、2審の判決は、同様に認知症の身内を介護する全国の家族に大きな衝撃を与えた。自分たちだけの裁判ではないとのプレッシャーを強く感じていた長男は「肩の荷が下りてほっとした。良い結果に父も喜んでいると思う」と声を弾ませた。

 事故は2007年12月7日夕、愛知県大府(おおぶ)市で暮らす父(当時91歳)が、母(93)のまどろんだ間に外へ出て発生。所持金はなかったものの、最寄りの大府駅で列車に乗り、隣の共和駅で降りて線路に入ったとみられる。父の要介護度は5段階中2番目に重い「4」。認知症で故意の事故ではないと伝えたが、JR東海は「家族は監視する義務があった」などとして賠償金約720万円を請求。母が暮らす自宅の土地の仮差し押さえも受けた。

 事故から8年余。父の死と裁判に直面した日々を長男は「JR東海の強い姿勢に翻弄(ほんろう)され、大変苦しかった。大企業と一個人の闘いだった」と振り返る。

 2審判決は、夫婦は同居し互いに協力して助け合わなければならないとする民法の規定を踏まえ、高齢の母の責任を認めた。この判断を最高裁は「同居する配偶者であるからといって監督義務は負わない」と覆した。長男は、2審判決の内容を気にかけていた母と、介護を支えた自分の妻と父に「良かったね」と報告するつもりだ。

 ただ、最高裁判決は「特段の事情がある場合は賠償責任を問える」とも言及。認知症の人と介護者を巡る状況を総合考慮し、介護家族が事実上の監督義務者に当たる余地を残した。

 長男は「我々の状況は監督義務者に当たらないと判断されたが、各家庭の介護態勢はさまざまなので心配は残る」と懸念した。

「介護家族、責任基準を明確に」 東武と和解の男性

 2012年3月に認知症の妻(当時75歳)が列車にはねられ死亡し、東武鉄道から賠償金137万円余を請求され63万円余で和解した埼玉県川越市の伊藤貞二さん(80)は「当然の判決」と語る。「一日中つきっきりというわけにはいかないし、縛っておくわけにもいかない。1、2審の判決は少し度が過ぎると思っていた」

 一方で最高裁判決は介護家族の責任を完全には否定しておらず、仮に伊藤さんの事例が訴訟になった場合にどうなるかは不透明だ。「自分たちのようなケースは今後増える。その辺(の基準)ははっきりしてもらいたい」と伊藤さんは話した。

「安心して外出できる社会に」 認知症本人の団体

 認知症の本人たちで作る「日本認知症ワーキンググループ」は判決を受けて声明を出した。「家族だけに責任を負わせず、認知症でも安心して外出できる地域に全ての市区町村がなるよう、私たち当事者と話し合いながら取り組みを進めてほしい」とした。

賠償、個別事情を考慮 昨年度トラブル29件、22人死亡 鉄道事業者

 国が全国約200の鉄道事業者から報告を受けてまとめた資料によると、2014年度に認知症の人が関係した鉄道事故やトラブルは少なくとも29件あり、22人が死亡した。認知症の高齢者らが徒歩や乗用車で線路内に立ち入って列車と接触したケースが多い。計685本に運休や遅れが出て中には車両が脱線した事故もあった。

 事故によって電車が遅れたり、車両が壊れたりすると鉄道会社側に損害が発生する。「原則として故意過失によって電車が遅れたと認められれば賠償請求している」(西武鉄道)、「因果関係が明らかになった場合は原則請求する」(JR九州)などとしており、多くの鉄道会社が相手方に被害回復を求めることにしている。

 ただ請求額については一律の基準はなく、被害の大きさや事故の状況に応じてケースごとに判断しているとみられる。関西の大手私鉄の担当者は「個別の事情を考慮している。相手の賠償能力も踏まえ、請求するかどうかを含め判断している」と話す。JR東海の請求を棄却した最高裁判決によって、鉄道事業者が損害の負担を当事者や家族に求める場合、従来とは異なる対応を迫られる可能性もある。

 最高裁判決後、阪急電鉄の担当者は「現在も認知症であるかどうかに関わらず、事故の個別の事情を考慮して賠償を請求するかどうかを判断している。判決で参考にできるものがあれば参考にしたい」と語った。【山本将克】

 

 認知症の男性=当時(91)=が徘徊(はいかい)中に電車にはねられて死亡した事故をめぐり、家族が鉄道会社への賠償責任を負うかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は一日、「監督が容易な場合は賠償責任を負うケースがあるが、今回は困難だった」として家族に責任はないと判断、JR東海の賠償請求を棄却した。この事故で家族は賠償責任を負わないとする判断が確定した。

 民法は、責任能力のない認知症患者らによる事故などの損害は「監督義務者」が賠償すると規定。ただし、監督義務を尽くしていれば免責される。最高裁が、認知症患者の家族が必ず監督義務者に当たるとは限らず、防ぎきれない事故の賠償責任まで負わないとする初の判断を示したことは、今後の在宅介護のあり方に影響を与えそうだ。

 判決によると事故は二〇〇七年十二月に愛知県大府(おおぶ)市で発生。要介護の五段階のうち二番目に重い4の認定を受けていた認知症の男性が、在宅で介護していた妻(93)がまどろんだ隙に外出。JR東海道線の共和駅構内で電車にはねられ、死亡した。最高裁は二審判決を破棄し、妻と当時横浜市に住んでいた長男(65)の賠償責任を認めなかった。裁判官五人全員一致の意見。

 今回の訴訟は、妻と長男が監督義務者に当たるか、監督義務者に当たるなら免責されるかが争点だった。最高裁判決は「認知症患者と同居する配偶者というだけで監督義務者に当たるとは言えない」と指摘。介護する家族の健康状態、親族関係の濃密さ、同居しているか、介護の実態などを総合的に考慮して判断すべきだとした。

 その上で、男性の妻は事故当時、八十五歳と高齢で要介護1の認定を受けており、男性の長男は別居していたことなどから、いずれも「監督が可能な状態だったとは言えない」と判断した。

 一審名古屋地裁は、妻と長男にJR東海の請求通り約七百二十万円の賠償を命令。二審名古屋高裁は、二十年以上も別居していた長男に監督義務はないと認定。一方で、「夫婦に協力扶助義務がある」とする別の民法の規定を引用し、妻にだけ約三百六十万円の賠償を命じていた。

 判決後、長男は「大変温かい判決。父も喜んでいると思う」とコメントした。

◆公的な救済体制急務

<解説> 認知症の高齢者が徘徊中に電車にはねられた事故をめぐり、一日の最高裁判決が、家族はできる限りの介護をしており、監督責任はないと判断したことで、今後、適切な介護をした家族が損害賠償を免れる事例が増えそうだ。「懸命に介護してきた家族にまで負担を押しつけるのはおかしい」といった批判の声に応えた形だ。

 ただ、判決は「総合的に判断する」とも指摘しており、別の訴訟が起こされた場合に責任を認める余地も残している。

 認知症の人による事故を完全に防ぐには、家族は一瞬たりとも目を離せず、過大な負担を強いられる。一方で、加害者が認知症患者という理由だけで、被害者が十分な補償を受けられない事態となれば、逆に認知症の人を危険視する風潮を広めかねない。今回、損害が生じたのは鉄道会社だが、交通事故などで個人が被害者になる場合もある。

 九年後の二〇二五年には、高齢者の五人に一人が認知症患者になるとの国の推計もある中、解決策の一つとして、公的な救済制度の創設を求める声もある。この判決を機に、認知症患者や介護する家族、介護施設で働く人たちの懸念を少しでも和らげつつ、被害者の救済の道を閉ざすことのないよう、社会全体で認知症患者を支える体制の整備が急務だ。(加藤益丈)

 <民法の監督責任> 民法712条と713条は、未成年者や精神上の障害(認知症など)により、自分の行為が法的な責任を負うと認識できない人は、他人に損害を与えても賠償責任を負わないと定める。一方で、被害者救済の観点から、民法714条1項は、こうした責任能力がない人の監督義務者が賠償責任を負うとも規定する。ただし、監督義務者が、その義務を果たしていれば賠償責任は免じられる。

(東京新聞)

 
  

認知症事故賠償訴訟 JRが敗訴

3月1日 19時17分 NHK


 
愛知県で認知症の男性が電車にはねられ死亡した事故を巡る裁判で、最高裁判所は、「家族に監督義務があるかどうかは生活の状況などを総合的に考慮すべきだ」という初めての判断を示し、今回のケースでは監督義務はなかったとして家族の賠償責任を認めない判決を言い渡しました。
平成19年、愛知県大府市のJR共和駅の構内で、認知症の91歳の男性が電車にはねられ死亡した事故で、JR東海は振り替え輸送にかかった費用などの賠償を求める裁判を起こし、1審と2審はいずれも家族に監督義務があるとして賠償を命じていました。
1日の判決で最高裁判所第3小法廷の岡部喜代子裁判長は、認知症の人や精神的な障害がある人の家族などが負う監督義務について「同居しているかどうかや介護の実態、それに財産の管理など日常的な関わりがどの程度かといった生活の状況などを総合的に考慮するべきだ」という初めての判断を示しました。そのうえで、「このケースでは妻も高齢者で介護が必要なうえ、長男も仕事のため離れて暮らしていたことなどから認知症の男性を監督することが可能な状況ではなかった」と指摘して、家族の監督義務や賠償責任を認めない判決を言い渡しました。
1日の判決は、認知症の人の家族などが無条件に賠償責任を負うのではなく、客観的に判断して監督することが難しい場合、責任を問われないとするもので、認知症などの介護の現場に広く影響を与えそうです。

認知症の男性の長男「温かい判断で大変感謝」

訴えられていた認知症の男性の長男は、判決のあと、弁護団を通じてコメントを出しました。長男は、「最高裁判所には、温かい判断をしていただいて大変感謝しています。よい結果となり、父も喜んでいると思います。8年間いろいろありましたが、これで肩の荷がおりました」とコメントしました。
弁護団の浅岡輝彦弁護士は「配偶者や家族だという理由だけで責任を問われることはないというこちらの主張が全面的に取り入れられ、すばらしい判決だと思います。認知症の人が関わる事案がいろいろある中で、介護の関係者や認知症の家族にとっては、救いになるのではないか」と話していました。

JR東海「真摯に受け止める」

今回の判決についてJR東海は「個々にはお気の毒な事情があることは十分に承知していますが、当社としては列車の運行に支障が生じ、振替輸送に係る費用なども発生したことから、裁判所の判断を求めたものです。今回の判決については、最高裁の判断ですので真摯(しんし)に受け止めます」とするコメントを発表しました。

判断のポイント

最高裁判所の判断は、認知症の家族だからといって、監督する義務を無条件に負うものではなく、生活の状況などを総合的に考慮して判断すべきだと指摘しています。
民法では法的な責任を問えない人が他人に損害を与えた場合、監督する立場の人が代わりに賠償責任を負うという規定があります。これについて最高裁判所は、認知症の人や精神的な障害がある人について、妻や実の息子だからといって、それだけで無条件で監督義務を負うものではないと判断しました。同居しているかどうかや、日常的な関わりがどの程度か、財産の管理にどう関与しているか、それに介護の実態などをもとに、家族などが監督義務を負うべきかどうかを考慮すべきだと指摘しました。
そのうえで今回のケースについて検討し、妻は当時85歳で介護が必要な状況だったうえ、長男も離れて暮らし、月に3回程度しか実家を訪ねていなかったことなどから、「認知症の男性を監督することはできなかった」として賠償責任は認められないと結論づけました。
認知症の人が事故を起こした時の家族などの責任について最高裁が判断の基準を示したのは初めてで、高齢化が進む中、認知症などの介護の現場に広く影響を与えそうです。

専門家「新たな法制度含め考えていく必要」

最高裁判所の判決について、損害賠償の問題に詳しい東京大学大学院の米村滋人准教授は、「認知症の人の家族に負担をかけるような判断をすべきではないという1審や2審への批判を重く受け止めた判決だと思う」と話しています。また「最高裁は、家族だけでなく、社会全体で責任を負う方向で問題を解決しようと、『認知症の高齢者と密接に関わりを持ち、監督できる立場にある人が責任を負う』という枠組みを示したのではないか」という見方を示しました。
一方で、「きょうの判決によると家族の中で高齢者と密接に関わる人ほど責任を負うリスクが高まり、病院や介護施設なども責任を負うリスクが出てくる」と指摘しています。そのうえで米村准教授は、「今回の判決ですべての問題が解決するとはいえない。少子高齢化の時代に、認知症の人が関わる事件や事故の負担を社会全体でどのように負っていくべきなのかしっかりと議論して、新たな法制度を作ることも含めて考えていく必要がある」と提言しています。

家族の会「感謝し敬意払いたい」

1日の判決について、「認知症の人と家族の会」の高見国生代表理事は「私たちはこれまでさまざまな方法で、家族の介護の大変さ、認知症の実態を裁判官に訴えてきましたが、それが通じたと思っています。法律家に認知症の問題を理解してもらえたことに感謝し、敬意を払いたいと思います」と話していました。

認知症の当事者で作る団体「認知症への理解を」

今回の判決について、認知症の当事者、およそ30人で作る「日本認知症ワーキンググループ」の藤田和子共同代表は、「認知症だと外出は危険だという一律の考え方や過剰な監視・制止は、私たちが生きる力や意欲を著しく蝕み、これから老後を迎える多くの人たちも生きにくい社会になることを懸念しています」と話しています。そのうえで、「今回の判決を機会に、家族だけに介護の責任を負わさず、認知症であっても安心して外出できる地域にすべての自治体がなるよう、具体的な取り組みを進めることを切望しています」として、認知症に対する理解や社会的な支援を求めています。

介護する家族は

認知症の高齢者と離れて暮らし介護にあたる家族からは、責任を問われる可能性があるならば安心して介護をすることができないといった声が聞かれました。
大阪・松原市に住む会社員、山口省三さんは(67)月に3回程度、東京で1人暮らしをしている母親の貴美子さん(95)の元に通って介護を続けています。おととし認知症と診断された貴美子さんは、週3回訪問看護のサービスを利用していますが、夜間は1人になるため山口さんは緊急の連絡に備え携帯電話を常にそばに置いているといいます。先週、2週間ぶりに母親の元を訪れた山口さんは、数日分の食料を買って冷蔵庫に入れ母親の様子を確認しました。山口さんが最も心配しているのが、一緒にいない間に母親が火事や事故を起こさないかということです。おととし、母親が台所のガスコンロをつけっぱなしにして鍋を焦がしてしまったのをきっかけに電気で調理をするIHの機器に替えました。はいかいに備えて、母親がいつも持ち歩くかばんに住所や名前が分かるキーホルダーをつけています。
山口さんは、「自分のように仕事などの都合で離れて暮らさざるをえない家族は今後増えると思う。24時間見守ることができない家族の介護には限界があることを理解してほしい」と話しています。そのうえで、今回の判決が家族に監督の義務があるかどうかは生活の状況などを総合的に考慮すべきだとしていることについて、「家族の責任が問われる可能性があるなら安心して介護を続けられない」と話していました。

年間1万人余が行方不明

警察庁によりますと、認知症やその疑いがあり、はいかいなどで行方不明になったとして、警察に届けられた人はおととし1年間にのべ1万700人余りに上り、3年前に続いて、2年連続で1万人を超えました。このうち、98%はおととしのうちに所在が確認されましたが、168人は行方不明のままでした。
また、過去に行方不明の届け出が出され、おととし、死亡が確認された人は429人でした。
警察は、はいかいなどで行方不明になったお年寄りをいち早く発見して保護するための対策に取り組んでいて、ホームページに顔写真などの情報を公開したり、保護したものの、身元が分からない人の写真などを閲覧できる台帳を作成して警察署などに置いたりしています。

認知症の人の鉄道事故死22人

国土交通省によりますと昨年度、鉄道事故で亡くなった認知症の人は、少なくとも全国で22人に上るということです。
国土交通省は、全国のおよそ200の鉄道会社から事故報告書の提出を受けていて、昨年度からは事故の当事者が認知症だと分かった場合は報告書に記載するよう求めています。それによりますと、報告書に記載があった事故は29件で、22人が亡くなり、3人がけがをしたということです。
おととし8月、兵庫県佐用町で94歳の女性が列車にはねられて亡くなった事故など多くは線路への立ち入りが原因だったということです。鉄道各社によりますと、事故が起き、列車の運転を見合わせる時間が長くなると振り替え輸送の費用や人件費がかかるということで、NHKが全国の大手鉄道会社22社に対応を聞いたところ、14社が「相手方に原因があると判断した場合は、個別の事情に関かかわらず原則、賠償を求める」と答えました。残りの7社は「事故の状況などを踏まえて個別に判断する」と答え、このほかの1社は「公表できない」としました。
JRの訴えを退けた今回の判決は、今後の鉄道各社の事故後の対応に影響する可能性もあります。

電話相談が相次ぐ

介護に関する電話相談を行っている窓口には、認知症の高齢者のはいかいなどに悩む家族からの相談が相次いでいます。
東京・杉並区で介護に関する電話相談を15年以上続けている社会福祉法人の窓口には、年間およそ2000件の相談が寄せられています。このうちのおよそ8割は、認知症の高齢者を介護する家族からで、はいかいなどの症状への対応が分からず心身ともに疲れたといった相談が相次いでいます。この日は、60代の女性から「認知症の夫の介護で悩んでいるが、子どもは離れて暮らしていて頼れない」といった相談が寄せられ、担当者は「介護サービスの利用に加えて地域のボランティアに頼ってみてはどうか」とアドバイスしていました。
浴風会・介護支え合い電話相談の角田とよ子室長は「ドアに鍵をかけたり、つきっきりで介護をしていたりしても認知症の高齢者がはいかいするケースは少なくない。家の中に閉じ込めるわけにもいかず介護をする家族は疲れ切っているのが現状だ」と指摘しています。そのうえで、今回の判決について、「認知症の人と家族が安心して暮らせるよう地域で支える態勢を整えていく必要がある」と話しています。

損害保険の対象拡大も

認知症の人が起こした事故で家族が賠償を求められる場合に備えて、損害保険各社の間では、補償の対象を広げる動きがあります。
認知症の人が他人にけがをさせたり物を壊したりした場合、同居している家族や本人が「個人賠償責任保険」に契約していれば相手に支払う賠償金が原則、補償されますが、これまでは離れて暮らす家族は補償の対象になっていませんでした。
しかし、損害保険大手の三井住友海上とあいおいニッセイ同和の2社は去年10月から離れて暮らす家族も補償されるように対象を拡大しました。二つの社は今回の裁判をきっかけに対象を広げたということで、「高齢者だけの世帯が増えるなか、離れて暮らす家族が賠償を求められるケースも増えると考えた」としています。
また東京海上日動火災もことし10月に個人賠償責任保険の対象を同じように拡大するほか、損害保険ジャパン日本興亜も来年度中の拡大を検討しているということで、認知症の人の事故に備える動きが広がっています。

10年後には5人に1人が認知症

厚生労働省によりますと、認知症の高齢者は去年の時点で全国で520万人と推計され、いわゆる、団塊の世代がすべて75歳以上になる9年後には700万人に達して高齢者のおよそ5人に1人に上ると見込まれています。
厚生労働省は去年1月「新オレンジプラン」と呼ばれる、認知症の医療と介護の5か年計画を策定しました。これには、認知症の人が住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう認知症の人を支える医療と介護の充実や治療法などの研究開発の推進、それに、認知症の本人やその家族の視点を重視し政策に反映させることなどが盛り込まれています。

 

2016年03月01日 18時00分
<認知症事故訴訟>「肩の荷がおりてホッとした」JR東海に逆転勝訴の家族がコメント
男性の家族側の弁護団・浅岡輝彦弁護士(中)
 

認知症の91歳の男性が徘徊中に線路に立ち入り、列車にはねられて死亡する事故が2007年、愛知県大府市で起きた。この事故をめぐって、JR東海が、男性の家族に損害賠償を求めていた訴訟で、最高裁判所第3小法廷は3月1日、男性の妻に賠償責任を認めた2審判決を破棄して、JR東海の請求を退ける逆転判決を言い渡した。

判決後、男性の家族側の弁護団が東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。浅岡輝彦弁護士は「家族側の主張が全面的に取り入れられた素晴らしい判決だった」「画期的な判決だった」と述べた。

また、男性の長男は弁護団を通じて、「最高裁におかれましては、大変あたたかい判断をしていただき、心より感謝しています。父も喜んでいると思います。8年間いろいろなことがありましたが、これで肩の荷がおりてホッとした思いです」というコメントを発表した。

●男性の家族は「監督義務者」にあたらない

弁護団などによると、事故が起きたのは2007年12月。認知症の男性は、妻(当時85歳)が目を離したすきに外出して、愛知県大府市にあるJR東海道本線の駅構内から線路に立ち入り、列車にはねられた。JR東海は2010年、列車が遅延して損害が発生したとして、男性の家族に損害賠償を求める訴訟を起こした。

民法では、責任能力がない人は損害賠償責任を負わないとしつつ、その人の「監督義務者」が原則として責任を負うとしている(714条)。男性は認知症で責任能力がなかったとされたため、男性の妻や長男らに「監督義務」があったかどうかが大きな争点になった。

1審の名古屋地裁は、JR東海側の主張を認めて、妻と長男が監督義務者にあたるとして、計約720万円の支払いを命じた。2審の名古屋高裁は、同居していた妻のみに監督義務を認め、計約360万円を支払うよう命じる判決を下した。だが、最高裁は、妻も長男も、今回のケースにおける監督義務者にはあたらないと判断し、JR東海の請求を棄却する逆転判決を言い渡した。

浅岡弁護士は会見で、「配偶者や家族であることだけでは、『監督義務者』にあたらず、特別な状況がなければ、監督責任を負わないと判示された。画期的な判決だったと評価している。家族法の分野についても重要で、成年後見人の制度についても、とても素晴らしい判決だった」と強調した。

JR東海は「個々にはお気の毒な事情があることは十分に承知しているが、当社としては、列車の運行に支障が生じ、振替輸送に係る費用なども発生したことから、裁判所の判断を求めたものであります。今回の判決については、最高裁の判決でありますので、真摯に受け止めます」というコメントを発表した。

 

 

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8年かかった…。 (リベラ・メ(本物の))
2016-03-02 12:09:20
司法の人間に、介護人の苦労と悩みを解らせるのに8年もの日々を費やした家族の心中は、いかばかりか…と思い出す。恐らく私達の想像を絶するものに違いありません。そんな家族の心中を察する努力すらしないJR東海と地裁と高裁は、杓子定規な面々ばかりなのでしょうか。
家庭に介護を押し付けるなら、安倍自民政府はケツを持たなきゃダメだよね。あと、改札を無賃で通したJRの管理責任は? (L)
2016-03-02 12:17:29
 安倍自民政府は家庭に介護を押し付ける金持ち偉い人にとって「安上がりな」政策をとっているのだから、事故・支障が起きたらケツを持なきゃダメだよね。まあ、施設の場合でも同様でしょうが。
 この判決で介護施設における広い意味での「拘束」へのインセンティブが高まるでしょう。老人病院という業態なのか、精神病院で認知症を広く受け入れています。こういうところは、「ノウハウ」が豊富でしょう。また、原発で老人が沢山亡くなった病院がありましたが、実質老人病院だったそうです。

 あと、改札を無賃で通したJRの管理責任は?あまり大きく話題にされていませんし枝葉ですけど、フェンスを乗り越えたわけじゃないですからね。介護家族の管理責任を云々できた筋じゃないでしょうと思うのですが。ここも論じて欲しかった。
 会社について言えば、こうしたことは会社を経営して利益を出す上での経費でしょう。JRについて言えば設立の時から政治的思惑から格安で設備と権利を手に入れてやっている会社。何を舐めた筋悪の請求をしているんだと。逆宣伝と裁判経費及び無駄な時間と人件費等を考えれば、株主は経営者を処分して賠償をさせるべきです。
 先ごろ、アリさんマークの件で社員に事故賠償をさせるのは違法ということが話題になりました。その理由は、事故費用は当然に会社が負うべき経費だからでした。ここにも同じ匂いがします。ぜひレイ様にそれは無関係とか論じてほしいです。

 とはいえ、法人ではない私人間ということになると、こんな括りでは済まないわけで、保険なり税なりで補償しなくてはならないでしょうね。早速、保険屋が稼いでいるのはさすがです。原発保険は引き受けませんがこれなら安心してもうけられますもの。
「安心して外出できる社会に」 (masaki)
2016-03-02 15:35:36
結果によっては、認知症あるいはそれが疑われるような方々(私たち全員がそうなる可能性大です)の自由が奪われるようなことになるのではないかと心配していました。

もちろん、その自由が「安心して外出できる社会」によって支えられたらいいのですが。 この認知症本人の団体の声がすべてのような気がします。
Unknown (ラッキー)
2016-03-03 00:07:51
ちなみに今後は、要介護1と要介護2の社会保障は、なくなります。
鬼畜政権
極悪人・JR東海 (バードストライク)
2016-03-03 05:12:19
鉄道自殺すると、随分な金額を賠償請求される、という噂を聞いたことがあるけど、これは事実だったようですね。
家族が目を離した隙に徘徊し、線路内に立ち入って轢死した、さらに監督不行き届きであると遺族に損害賠償を請求する、とはむごいと思っていました。
却下されて良かったです。

JR東海は、問題山積のリニアをごり押しで着工した極悪企業。
水脈の分断、残土の処理、糸静構造線など活断層を横切る工事、乗客への電磁波の影響、無人運転のため、事故時の対応の不安・・・
など、納得のいく返答はないままに、とにかく急いで見切り発車したのです。
これから人口は減っていくのに、こんなもの、必要?
工事費用1兆円とか言われますけど、一企業で負担できる?

莫大な電気を喰うリニアのために、原発再稼働を主張するJR東海・葛西会長は、安倍のお友達のひとり。
浜岡を動かしたいのです。
国鉄民営化で、たまたまドル箱路線の東海道新幹線を受け継いだから財政が良好なだけなのに、我が世の春風に傲慢。

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