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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

5月の原発ゼロに焦って再稼働に固執する野田首相が言えば言うほど、がれき処理に安心して協力できない件

2012年03月15日 | 原発ゼロ社会を目指して

  

 今、日本で原発依存度ナンバーワンの関西電力で稼働中の原発がゼロになっています。5月には日本で今稼働中の二つの原発がともに定期点検に入り、日本の全原発が停止します。

 日本で原発がなくても支障がないという現実が全国民に突きつけられるのです。

 その事態だけは避けたいというのが政府と財界の本音なのです。

 そこで、定期検査で停止中の関西電力大飯原子力発電所3・4号機の再稼働問題が風雲急を告げています。内閣府原子力安全委員会が、関西電力大飯原発3、4号機への安全評価(ストレステスト)結果を了承する見通しとなったからです。

 斑目委員長がストレステストの第1次テストでは安全審査としては不十分だと断言したのに、それでいて再稼働を了承するだなんて狂っています。まさに、原発ゼロ阻止、それが大飯原発再稼働の真の目的です。

 原発がないと、今年の夏、2010年と同じ猛暑になったら、原発なしでは9%電力が足らなくなる恐れがある、などというのですが、2010年は記録のあるこの114年で最も暑かったんですよ。

 どうして明治時代の津波は無視して福島原発事故を起こしておいて、猛暑だけ100年に一回の夏を想定するのか。

 実はこの冬も電力が9%足りないと散々宣伝していたのです。政府と電力会社は電力不足キャンペーンに関しては、完全に狼少年と化しています。

原子力発電依存度No.1の関西電力原発11基全停止 原発ゼロ社会は「やればできる!必ずできる!」


 野田佳彦首相は2012年3月14日の参議院予算委員会で、

「再稼働のプロセスでは、最終的に、地元の理解を得られるかどうかを政治が判断して決断するが、懸念があった 場合に説明できないと、理解は得られないと思う。説明できる環境を作れるかどうかが、再稼働の条件になる」

と述べ、原発の再稼働について、地元の理解を得るための環境整備を進める考えを示しました。

 この発言では、下のチャート図のように、野田首相は地元の理解が再稼働の前提で、地元の理解が再稼働の前提条件であると言っています。しかし、こう言わざるを得なかったのは、実は3月11日の記者会見で、停止中の原発の再稼働について

「安全委の確認が終わった段階で私を含む関係4閣僚が集まり、安全性と地元の理解をどう得ていくかを議論する。その上で、政府を挙げて説明する。私も先頭に立たなければいけない」

と、再稼働が地元の理解が前提ではないかのようなことを言い出して、猛反発を受けたからです。

 枝野経産相も上の表のように発言を原発再稼働にシフトしていますし、野田首相が強引に原発を再稼働しようとしているのは見え見えで、日経などは3月14日付けの記事で、まだはっきりと、

「政府は月内にも首相ら関係閣僚の協議で再稼働を決める」

と書いているほどです。

 

 

 ところが、このストレステスト自体がコンピューターシミレーションによる検査でしかなく、限界があるところに加えて、大飯原発独自の問題が発生しています。

 経済産業省原子力安全・保安院の専門家会合で、原発の目前に広がる若狭湾で三つの断層が連動して地震を起こす可能性を考慮するよう、指摘されたのです。

 従来は、関電はこの原発に関しては、二つの断層の連動しか想定していませんでした。

 断層は長いほど地震の規模は大きくなるわけですが、関電は「3連動の可能性は極めて低い」と主張しています。

 ああ、福島原発で、東電が大津波の発生可能性を知っていながら、極めて可能性は低いと無視していたのと全く同じ。

 いつになったら、電力会社と原発推進派は事実を謙虚に見つめて、そこから学ぼうという態度になるのでしょうか。

 今回のストレステストも二つの断層の連動を考慮した揺れや津波で実施されましたし、原子力安全委員会でも、連動問題は検討中として議論されなかったのです。

 検討中のことをちゃんと検討しろよ!



 おまけに、原発にあくまで固執する野田首相は、まだ建設中の原発についてさえ、

「(建設が)九十数パーセント進んでいる場合もあり、個々の進捗を踏まえ判断するケースはあり 得る。(建設中止か稼働かの)二者択一ではない」

と述べ、ある程度建設が進んでいる原発については稼働、営業開始を認める可能性があるとの認識まで示しました。

 これは、ほぼ完成した状態にある中国電力島根原発3号機(島根県)が念頭にあるとみられますが、こんなもの今年の夏に間に合わないじゃないですか。どうして、まだできていない原発稼働まで言わなければいけないのか。

 野田首相は3月14日の首相官邸のブログで、東日本大震災からの復興の妨げとなっている大量のがれきについて、

「被災地だけでは処理できない。全ての国民が『当事者』という前提で考えていただきたい」

と、広域処理への協力を呼び掛けました。

 私は、放射能ゼロでもがれき処理反対という立場ではありませんが、今言われている広域がれき処理は有害無益であり他の方法があると思っています。

 しかし、福島原発事故を過小評価し、原発再稼働に異常に固執し、放射能の被害を矮小化して考えている野田首相がこんなことを言っても、それは全国民に放射線被曝の当事者になってほしいと言っているように聞こえるのは当たり前です。

 原発事故を真剣に分析し、対処しようとしない彼には、がれき処理を受け入れろと国民に言う資格はないのです。

 また、2012年3月12日付け産経新聞 東日本大震災 首相がれき要請 橋下市長が絶賛によると

 橋下徹大阪市長は12日、野田佳彦首相が被災地のがれき処理について、災害廃棄物処理特別措置法に基づいて都道府県に受け入れを要請する意向を示したこと について、「すごい覚悟を持たれた決断。こういうことができれば、首相の支持率は一気にうなぎ上りに回復する」と評価した。

 震災がれき処理を前向きに検討している橋下市長は「平時は地方分権をしっかりやり、緊急状況では国がしっかり指揮命令系統を持つことが重要」と指摘。 「首相は『決定できる民主主義』をやろうとされている。一身に批判を受けることになるが、これが本来の政治だ」と期待を寄せた。

ということなのですが、野ダメ首相を手放しで称える橋下市長も同じく思慮の足りない政治家で、原発住民投票にも反対しているようにその脱原発依存なんて底が浅く、吹けば飛ぶような軽さだと言うことがわかります。

 


 上のグラフのように、朝日新聞が大震災から1年で実施した世論調査で、定期検査で止まっている原発の運転再開には、57%が反対しました。とくに女性は賛成15%に対し、反対が67%にのぼっています。

 また、原発を段階的に減らし、将来はやめることにも、全体の70%が賛成しています。

 なかでも注目すべきは、原発に対する政府の安全対策への信頼のなさで、「あまり信頼していない」「まったく信頼していない」で80%に達しているのです。

 3月14日も首都圏で大きな地震があり、東日本だけでなく全国の人々が肝を冷やしたはずです。

 原発に反対する全ての人々は、がれき処理問題で分断されることなく、原発再稼働反対一点に絞って結集するべきだと思います。


 

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クローズアップ2012:大飯原発、安全委審議終了 再稼働、政府が前のめり

 内閣府原子力安全委員会が、関西電力大飯原発3、4号機への安全評価(ストレステスト)結果を了承することで、原発再稼働に向けた段取りが一歩進 む見通しになった。夏場の電力不足を警戒する経済界からは、再稼働の可能性が出てきたことへの歓迎の声が上がるが、東京電力福島第1原発事故の深刻な被害 は続いている。「ストレステストは不十分」との懸念も根強く、再稼働の前提となる「地元の理解」への道のりは依然、険しい。

 ◇夏の電力不足、懸念

 「原子力安全委員会の結論が出てから(地元への説明を)考える」。13日の記者会見で枝野幸男経済産業相は、大飯原発3、4号機のストレステストを安全委が「問題なし」とした段階で、再稼働への地元の理解取り付けに動く考えを示した。

 野田佳彦首相も11日の記者会見で、停止中の原発の再稼働について「安全委の確認が終わった段階で私を含む関係4閣僚が集まり、安全性と地元の理解をどう得ていくかを議論する。その上で、政府を挙げて説明する。私も先頭に立たなければいけない」と、強い意欲を見せた。

 政府が再稼働に前のめりなのは、夏の電力不足への懸念があるためだ。政府の試算では、原発ゼロのまま夏を迎えれば、10年並みの猛暑の場合、沖縄 を除く9電力会社管内で平均9・2%の電力不足になる恐れがある。特に原発依存度の高い関西電力は、夏場の猛暑時に最大25%の電力不足もありうるとして 「できるだけ早く再稼働したい」(八木誠社長)と悲鳴を上げる。

 火力発電で穴埋めできたとしても、燃料費の増加は必至。さらにイランがペルシャ湾のホルムズ海峡封鎖を示唆するなど、原油価格高騰の火種はくす ぶっている。再稼働に慎重だった枝野氏が、5日の衆院予算委員会の分科会で「安全確認できたら、当面は原子力を使わせてほしい」と訴えたのも、電力不足 が、日本経済に打撃を与えかねないためだ。

 「電力が安定供給されなければ産業、とりわけ製造業に大きな影響が及ぶ」(経団連の米倉弘昌会長)とみている経済界の多くは、原発再稼働に向けた 政府の対応を歓迎している。経済同友会が13日発表した調査によると、会員の経営者(製造業)が政府に求める政策としてトップに挙げたのが「原発の再稼働 を含む電力安定供給」で48・6%を占めた。中期的な「縮原発」を唱える長谷川閑史代表幹事も「短期的には安全を確認できた原発の再稼働を国が責任を負う 形で進める必要がある」と述べた。

 しかし、与野党間の調整の難航で新たな「原子力規制庁」の4月1日発足は困難な情勢。「信頼性が地に落ちた」(細野豪志原発事故担当相)原子力安 全・保安院、安全委によるチェックが当面、続くことになる。地元・福井県の西川一誠知事は13日の県議会予算特別委員会で「我々が求めているのは福島事故 の知見がいかに反映されるかということ」と、原子力規制、行政の改革を強く求めた。【笈田直樹、川口雅浩、安藤大介】

 ◇地元理解、難航必至 3断層連動は想定せず

 ストレステストで確認したのは、設計時の想定を超えた地震や津波に対し、炉心溶融を防ぐ重要機器がどの程度の余裕を持っているかだ。

 関西電力大飯原発3、4号機について、関電は想定より1・8倍大きい地震の揺れ(1260ガル=加速度の単位)や、4倍高い11・4メートルの津 波に見舞われても、炉心損傷しないと評価。東京電力福島第1原発事故の原因となった全交流電源喪失があっても、非常用電源で16日間は炉心を冷やすことが できるとした。

 評価では想定する地震の揺れや津波が重要だが、それが揺らぎかねない事態が起きている。同原発の目前に広がる若狭湾で三つの断層が連動して地震を 起こす可能性を考慮するよう、経済産業省原子力安全・保安院の専門家会合で指摘されたからだ。従来は二つの断層の連動しか想定していなかった。断層は長い ほど地震の規模は大きくなるが、関電は「3連動の可能性は極めて低い」と主張。二つの断層の連動を考慮した揺れや津波でストレステストを実施した。原子力 安全委員会でも、連動問題は検討中として議論されなかった。

 毎日新聞が2月に周辺の自治体に実施したアンケートでは、再稼働を容認する首長の約8割が「政府が再稼働に必要な安全基準を示すこと」を条件に挙 げた。原子力政策に詳しい吉岡斉・九州大副学長は「(最新データを考慮しない)ストレステストの結果など、吹けば飛ぶようなものと思われている。事故を踏 まえた安全基準を決め、それを満たさない原発をリストラしなければ、再稼働への理解は得られない」と指摘する。

 保安院は事故の教訓から、電源の多重化や非常時の対応など30項目の安全対策を取りまとめたが、「法令に落とし込めるのは原子力規制庁ができてから」と説明する。地元の理解を得るには時間がかかりそうだ。【岡田英、河内敏康、西川拓】

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 ■ことば

 ◇安全評価(ストレステスト)

 原発が設計上の想定を超える地震や津波に襲われた時、原子炉建屋や安全上重要な機器などが壊れ、炉心損傷などの深刻な事故に至るまでにどのくらい 余裕があるのかを調べる検査。日本では、原発の再稼働の判断に使う1次評価と、運転継続の判断に使う2次評価の2段階で実施する。これまで8社が計16基 の原発の1次評価結果を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。

 

 

 

毎日新聞 2012年3月14日 東京朝刊



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2 コメント

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瓦礫広域処理の狙いは農業つぶし (関西人)
2012-03-18 06:48:04
震災瓦礫の広域処理により日本全国が放射能により汚染されます。
国はこのことは十分わかっているはずです。細野環境大臣が理解していなかったとしても優秀な環境省の官僚が必ず大臣が理解するまで説明しています。にもかかわらず、瓦礫の広域処理が細野環境大臣と環境省主導で推し進められているのは何故でしょうか?
放射能汚染が日本全国に広がれば日本で作られた農業生産物(食料)は輸出ができなくなるだけでなく、日本人自身が食べることができなくなります。そのため、日本は食糧を全面的に輸入に頼りらざるを得なくなります。そして、日本が生きていくためには工業製品の輸出に頼らざるを得なくなります。
つまり、日本の農業はつぶれてしまうのです。これ(農業の息の根を止めること)こそが、瓦礫広域処理の真の狙いなのです。
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瓦礫広域処理の必要性のウソ (関西人)
2012-03-20 16:07:03
斎藤恭紀氏(宮城県第2区選出の衆議院議員)の3月16日、20日のブログ(http://saito-san.sblo.jp/)に瓦礫広域処理の必要性のウソがわかりやすく説明されています。見ていただければ幸いです。


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