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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

秘密の保護より情報の保全と公開こそ急務 日本の知る権利はここが問題だ 

2013年10月25日 | #安倍晋三が諸悪の根源

 

 国家機密の情報漏えいに対して厳罰を科す「特定秘密保護法案」が2013年10月25日、とうとう閣議決定されました。これまで、国家機密法とか秘密保全法と呼ばれた法案をなんとか廃案にしてきたのですが、いまや日本に暮らす人の知る権利は風前の灯といえます。

 日本では、情報公開法こそありますが、それでなくてもこれについても不十分な点が多いと指摘されています。現行の情報公開法では、情報の開示をめぐって裁判になった場合、裁判官が該当 する文書を見て開示の必要性を判断することができません。これでは政府にとって都合の悪い文書はすべて非開示にすることができてしまいます。また情報公開 請求にはお金がかかるため、資金力がないと大規模な情報公開請求ができないような仕組みになっています。

 そのうえ、特定秘密保護法案では、(1)防衛、(2)外交、(3)特定有害活動(スパイなど)の防止、(4)テロ活動防止の4分類に関する事項のうち、漏えいすると日本の安全保障に著しい支障を与える恐れがある機密を「特定秘密」に指定し、保護するとされています。しかし、たとえば(4)のテロ対策名義で原発の情報が、また(1)の外交の問題としてTPPなどに関する情報も秘密扱いにできることになっています。秘密とは何かは非常にあいまいです。

 しかも、罰則の対象となるのは関連企業や研究者も同様です。

航空自衛隊の次期主力戦闘機へのF35選定と秘密保全法 官僚の都合で侵害される国民の知る権利

 秘密の有効期間は「上限5年」で、大臣など行政機関のトップの判断で無限に更新でき、その間、国民には重要情報が知らされなくなります。このように、秘密保護法案では、一度「秘密」に指定された情報を「秘密」から解除する手続きが極めて不十分です。つまり、国民にとって重要な情報を闇に葬るのが秘密保護法なのです。また、情報を漏らした国家公務員などには、最大で懲役10年の罰則が科されます。

 これでは、いくら法文の中に知る権利を入れるだの、報道と取材の自由を規定するだの言っても絵空事です。なにしろ、「不当な」取材かどうかは政府が判断するのですから。これでは取材する側もされる側も萎縮するのは間違いありません。

 ところで、文書の作成・管理に関する法律は公文書管理法で規定されているのですが、なんと、この法律が施行される2011年4月まで、日本では公文書を管理するための法律は存在していませんでした。ですから、政府機関は公務員の勝手な判断で文書を作成したり破棄している状態だったのです。このため年金記録が存在しない、重要な外交文書が公務員の都合で破棄されるといった問題がたびたび発生していました。

海上自衛隊で破棄したはずのいじめ自殺資料「発見」。この国に必要なのは秘密保全法より情報保全法だ!

 公文書管理法の施行によってとりあえず政府機関はすべての文書をルールに従って管理することが義務づけられましたが、法律の施行後も原発事故に関連した会議の議事録が作成されないなど、法律はないがしろにされたままです。

原子力災害対策本部の議事録を作らず、原発事故の最悪シナリオは「なかったこと」に 情報保全法こそ必要だ

また情報公開法が先に施行されてしまったため、各省の公務員は、情報公開法の施行 を前に、自分達に都合の悪い文書はすべて破棄してしまいました。このため、過去に遡って国政を調査することが極めて難しくなっています。

 今、日本で必要なのは、日本に住む人間にとって本当に必要な情報を秘匿させない情報保全法ともいうべき法律です。政府にとって都合の悪い秘密を守らせる特定秘密保護法を作るなどというのは、住民の福利とは逆方向なのです。

 

やはり日本の基本的人権を危うくする安倍内閣。

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 北海道新聞社説

政府は安全保障にかかわる秘密の漏えいに重罰を科す特定秘密保護法案をきょう閣議決定し、国会に提出する。

 外交・安全保障政策の司令塔となる日本版「国家安全保障会議(NSC)」設置に合わせて情報管理を徹底し、米国との情報共有を進めて安保体制を強化する狙いだ。

 法案には、連立を組む公明党との調整で、国民の「知る権利」や報道の自由への配慮が盛り込まれた。

 だが、秘密情報の範囲が不明確で拡大解釈が可能な点をはじめ、根本的欠陥は変わっていない。

 法制化されれば、ただでさえ不十分な情報公開が一層後退し、国民主権の基盤である知る権利や報道の自由が侵害される恐れが強い。

 情報管理は国家公務員法などで対応可能だ。民主主義を危うくする秘密保護法案は撤回すべきだ。

 

■欠陥だらけ変わらず

 法案は《1》防衛《2》外交《3》特定有害活動の防止《4》テロの防止―に関する機密のうち、特に秘匿の必要性がある情報を行政機関の長が「特定秘密」に指定し、漏えいした公務員らに最高で懲役10年を科す。

 最大の問題は、対象となる情報の規定が曖昧なため、閣僚などが秘密指定の範囲を拡大し、都合の悪い情報をいくらでも隠蔽(いんぺい)できる点だ。

 政府は特定秘密の指定基準を策定するための有識者会議を設置するとしたが、会議は意見を述べるだけで、実際に個々の秘密指定が妥当かをチェックするわけではない。

 政府の勝手な判断を第三者が排除する仕組みはないままだ。

 特定秘密の有効期間は上限5年だが何度でも更新できる。政府は指定期間が30年を超える場合は内閣承認を必要とする規定を設けたが、内閣さえ認めれば永久に秘密にできる。

 報道や出版の取材についても新たに「法令違反または著しく不当な方法」でなければ「正当な業務とする」との規定を盛り込んだ。しかし、「著しく不当」の内容は不明確だ。

 法案担当の森雅子少子化担当相は、沖縄返還に伴う日米密約を報道した記者が、外務省の女性事務官をそそのかしたとして逮捕された西山事件のような取材活動は、新法でも処罰対象になるとの認識を示した。

 社会的に有意義な報道の価値を軽視し、漏えいを働き掛けたとして記者を厳罰に処すなら、報道の自由への配慮など名ばかりではないか。

 国会議員を処罰対象としていることも問題だ。国政調査権の侵害につながり、国権の最高機関である国会の地位を揺るがす。法案を成立させることは国会の自殺行為だ。

 

■狙いは日米同盟強化

 秘密漏えいに対する法律は既に存在する。自衛隊の秘密に関しては最高で懲役5年の自衛隊法があり、国家公務員法も懲役1年以下の罰則付きで広範な守秘義務を定めている。

 にもかかわらず安倍晋三首相が秘密保護法制定にこだわるのは、自身が掲げる「積極的平和主義」に基づく安全保障政策の柱の一つに位置づけているからだ。

 積極的平和主義は、中国などに対抗するため、集団的自衛権行使を容認して日米同盟を強化し、従来より踏み込んで日本が米国の軍事力を補完する役割を担おうとするものだ。

 その司令塔となるのが日本版NSCであり、米国NSCと情報共有を進めるため重罰規定を持つ秘密保護法の制定が米側からも要請された。

 日本版NSCの活動方針「国家安全保障戦略」の概要には武器輸出三原則の見直しが盛り込まれた。米国などとの武器の共同開発・生産を後押しする狙いだ。そのためにも秘密保護法が必要ということだろう。

 だが積極的平和主義は憲法の平和主義を逸脱している。国家安保戦略は首相の私的懇談会が概要をまとめた段階にすぎない。

 国会でしっかり議論されておらず、国民の理解も得られていない構想や戦略を基に関連法を整備することは、手法としても問題だ。

 

■憲法の原則を脅かす

 民主党は今国会に同党が提出する情報公開法改正案と秘密保護法案をセットで審議するよう求めている。

 民主党案は、公文書の非開示決定の是非を裁判所がチェックできる仕組みなどを盛り込んでいる。

 現行の情報公開法の不備を補う内容で意義があるが、仮にそれが成立しても秘密保護法を正当化する理由にはならない。国会審議で同法の危険性を厳しく追及すべきだ。

 国の情報は国民の共有財産であり、それを基に主権者である国民は政策の是非を判断する。それが時の政権によって恣意(しい)的に隠されてしまえば民主主義は機能しなくなる。

 知る権利は、憲法が保障する基本的人権の一つである表現の自由に基づく。治安維持法などで言論が弾圧され、日本が悲惨な戦争に突き進んだ歴史への深い反省から導かれたものだ。

 それをないがしろにし、国民主権や基本的人権の尊重という憲法の基本原則を脅かす悪法の制定は、断じて許してはならない。

 

 

秘密保護法案を閣議決定=NSC法案、審議入り

 

閣議に臨む安倍晋三首相(中央)ら=25日午前、首相官邸

 政府は25日午前の閣議で、安全保障などに関する機密を漏えいした国家公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案を閣議決定した。同日夕に国会に提出 する。また、先の通常国会から継続審議となっている日本版NSC(国家安全保障会議)創設関連法案が同日午後の衆院本会議で審議入り。政府・与党は、密接 に関連する両法案が戦略的な安全保障政策の推進に不可欠と判断しており、今国会での成立を目指す。 

 菅義偉官房長官は閣議後の記者会見で「外国との情報共有は、情報が各国で保全されることを前提に行われている。秘密保全に関する法制を整備することは喫緊の課題だ」と指摘した。
  秘密保護法案では、閣僚ら「行政機関の長」が「防衛」「外交」など4分野で特に秘匿が必要な情報を特定秘密に指定。これを取り扱う国家公務員らが漏らした 場合は10年以下の懲役とし、共謀や教唆などは5年以下の懲役とするのが柱。国家公務員法が定める1年以下の懲役に比べ、大幅に厳罰化した。
 法 案は「国民の知る権利の保障に資する報道または取材の自由に十分に配慮しなければならない」と明記。取材行為を「法令違反または著しく不当な方法と認めら れない限りは正当な業務」と位置付け、原則として処罰対象外とした。特定秘密の指定期間は最長5年で、更新も可能。30年を超えて延長する場合は内閣の承 認を得なければならないと規定した。特定秘密指定に関する統一的な基準づくりを議論する有識者会議の設置も定めた。
 一方、日本版NSCは、外交 や安保政策の司令塔として首相官邸主導で迅速な意思決定をするのが狙い。首相、官房長官、外相、防衛相で構成する「4大臣会合」の新設や国家安全保障担当 の首相補佐官の常設、事務局となる国家安全保障局の設置を盛り込んだ。各省庁には情報提供を義務付けた。(2013/10/25-11:06)

 

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9 コメント

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希望 (村野瀬玲奈)
2013-10-25 21:10:26
久しぶりの更新!
宮武嶺さん、もっと書いてください!
返信する
何か、ねぇ (AS)
2013-10-25 21:20:18
アメリカに対してだけは、秘密は一切あってはいけないみたいですよ。
防衛事務次官通達「部外者からの不自然な働き掛けへの対応要領」に“アメリカ合衆国政府機関職員”は除外される旨書かれていますし。
返信する
乱用罪を10年以下の懲役に (N.O.)
2013-10-28 05:27:28
罰則を外国との比較で見ると、10年というのは、突出して厳しいアメリカに合わせたのですね。やはり普段から人に言えない悪行を重ねている国は違いますね。そんな国に言論の自由を献上してしまうのは国民に対する裏切り行為だと思いますよ。CIAがどんなに優秀なのか知りませんが、自前の情報網より信頼できると思うのはちょっとお人好しすぎるのでは。
それに法案を読むと、本来なら国民に知らせるべき情報を勝手に特定秘密に指定した場合の罰則が書いてないじゃないですか。これがなければ乱用は避けられないのでは。バランスをとるために、これを民主主義に対する罪として10年以下の懲役に処することを提案します。また、公務員が「これはあきらかに隠すほうが犯罪だな」と気付いた場合は公表するように義務付けるべきです。
返信する
批判的な意見も (庵野雲)
2013-10-30 11:53:08
秘密保全法については、「左翼が騒ぎすぎるだけ」「対象は公務員。一般人には影響は無い」「直にたいした事がない分かって沈静化して、反対派は赤恥をかく。」「反対派はやがて自分のやったことを見て見ぬふりをするだろう」といった反対に対する揶揄する声も聞く事もあります。
ただ、公務員に影響があるなら当然一般人にも波及するのは普通に考えたら分かる話ですし、政府の今までのやってきた事を考えたらどうなるか予想できそうな物だと思いますが。
すいません、あんまりイラっときたのでつい愚痴ってしまいました。
返信する
問題は存在しないことにされる事 (AS)
2013-10-30 15:42:39
マスコミが萎縮して、“国民が知るべき事実”を存在しないことにするのを自分は更に危惧します。
2012年6月29日夕刻、脱原発を叫ぶ人々が、警察の規制を振り切って国会議事堂前の車道に溢れた際も、翌日これを報じた大新聞はありませんでした。各社は必要に応じて目を・口を閉じ耳を塞ぐのです。
返信する
確認はどうやって? (N.O.)
2013-10-31 20:42:37
外国から情報をもらうために機密性を高めなければと政府は説明しているけれど、もらった情報が正しいかどうか、どうやって確認するのでしょうね?
逆に公表したほうが、「それは違いますよ」と指摘してくれる人が現れて、日本の安全に役立つと思います。
「とりあえず、信じるしかないから正しい情報です」という思考回路だけは捨ててもらいたいものです。
返信する
東條英機時期の戦前へ (360)
2013-11-02 10:46:59
惡質な指導者があらわれると
必ずおこうなことが言論統制と国民監視ですよね。

東條英機は治安維持法を設定し
思想弾壓し日本の侵略戦争反対する人たちを
投獄拷問しました。
安部晋三は東條の亡霊です。
返信する
40万項目 (N.O.)
2013-11-06 01:44:44
数日前の日経に、特定秘密はまずは40万項目と出ていたので「ずいぶん多いなあ」と驚いたのですが、他の新聞には出ていましたか?朝日は野球の記事が異様に大きく、カムフラージュしたのかと思ったほどです。福島の海の汚染度も先週水曜から急に13倍に跳ね上がったという事なので、気になります。
返信する
Unknown (あゆ)
2013-11-18 15:41:32
いろいろ読みましたが、
争点は「安全保障に秘密は必要」というのは的外れですね。
不要という社説はありません。

争点は憲法違反かどうかですね。
(取材の自由・国政調査権などみんな憲法問題みたいです)
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