アメフト与太話

『アメリカンフットボールを愛する馬鹿の与太話』

アメリカンフットボールの尊厳を取り戻すのは君たちです

2018年05月26日 23時49分54秒 | Coach's message
5月26日、中間考査が終わり部活が再開しました。
その間、日大関学戦の問題は社会問題化してしまいました。
雑多な記事・意見が氾濫しており、一指導者として自チーム内ではこの問題に決着をつけなければならないと感じました。
社会で結論が出ていない問題に決着をつけるなど不遜なことかもしれませんが、BOMBERSの選手達の認識は1つとなるように心をくだいたつもりです。
本投稿を読まれたOBにおかれては、ご意見は多々あろうかとは思いますが、BOMBERSはこういう思いでやっていきます。
先に話したことを文章に直してみると、内容が飛び散らかり過ぎているなとは思いますが、正直な気持ちでもあります。
困難に打ち克つ、アメリカンフットボールの最高の醍醐味をこれからも選手達に伝えていこうと思います。また、自らが勝利至上主義に陥らない自戒とすべく、ここに記しておく次第です。

〜練習前ハドルにて〜

世間を騒がせている日大の反則プレーだが、内田監督が反則を指示したのか、反則になってもかまわないくらいギリギリのプレーの意図を誤解されたのかは正直なところはわからない。

井上コーチにしても、選手はコーチが監督を務めていた高校の頃は楽しかったと言っているわけだから、同じ指導者の立場として信じたくない気持ちもある。普段の日大フットボール部の強権的な指導体制が裏目にでている面もあるかもしれない。

また、選手のタックルにしても、彼は最悪の事態は避けるために大腿裏へショルダーへタックルしたと私は思っている。自分なら、QBを壊すために背後からタックルするなら、腰にヘルメットを当てに行き、下半身をパックして、相手を地面に激しく打ちつけるように倒すと思う。人によっては、膝を壊しにいった悪質なタックルと評する者もいる。どちらが正しいのかはわからない。少なくとも、タックルの瞬間に、彼が冷静だったことは有馬の質問でわかっているので、私は彼の良心を信じてあげたいという気持ちもある。

BOMBERSでも、オプションプレーを止めるときには「ピッチマンをまず潰せ」と指示しているわけで、言葉だけで故意かどうかを判断するのも難しい。

真実はわからないけれども、結果としてあからさまな、しかも相手を傷つける反則を行ってしまったことの責任は免れないだろう。

ああいうプレーをすれば、審判の敵意も買うことになる。フェニックスとして、あのプレーを容認しているとみなされれば、今後の審判のジャッジは厳しくなるし、その時点で日大が優勝することはなくなると個人的には思う。私が現役の頃、もう四半世紀以上も昔のことであれば、あの行為は反則であっても、ただの反則として流されたかもしれないが、今は時代が違う。内田監督も私以上の年齢であるから、時代の変化を理解できていなかったかもしれない。

単純に損得で考えても審判を敵に回して得なことなどあるわけがない。
悲しいことに今でも前時代的な監督やコーチはいて、ベンチサイドで死ねだの殺せだの発言する馬鹿はいる。試合中に、審判に対してサイドからやたらと「今のはホールディングだ」とか「インターフェアだ」とか喚くコーチを私が死ぬほど嫌っているのは君たちが知っての通りだ。
アメリカンフットボールには、審判に訴える手順がルールで定められているにもかかわらず、そのルールを無視するような輩は今回の内田監督を避難する資格があるとは思えない。
無視をしていいルールなんてない。ルールを守る、ただそれだけの意志があれば、今回の騒動だって起こらない。

アメリカンフットボールは、サッカーやゴルフのように庶民の遊びから発展したスポーツではなく、大学で作られたスポーツで、そもそも「ルールありき」だ。これまでも言ってきたように、アメリカンフットボールのルールには3種類ある。1つめは、アメリカンフットボールという競技を規定するルール。なぜ4回の攻撃で10ヤードなのか、選手は11人なのか等々だ。2つめは、攻守のバランスを取るルール。ゲームをよりおもしろくするためのルールと言ってもいい。ホールディングやフォルススタート等々。そして3つめが、守られないと人が死ぬか重傷を負うルールだ。この3つめのルールが守られないと、それはスポーツではなく、単なる暴力の振るいあいになってしまう。

守るべきルールを故意に破ったから、今回の日大問題になってしまっている。

また今回の報道のなかで、ルールを守れば安全なスポーツだと主張する意見も散見されるが、それは違うと思う。

アメリカンフットボールだけでなく、スポーツはすべからく危険を孕む。陸上100m走ですら、接触転倒しただけで選手が死亡し訴訟に発展したこともある。人は全力で動くと危険が増す。安全なスポーツのほうがはるかに少ない。

当然にアメリカンフットボールは決して安全な競技ではなく、それゆえ安全を確保するために幾たびもルール改正が行われきた。ラグビーにはないフォワードパスも、選手が密集しすぎると負傷者が続出することへの対策として作られたルールだ。近年も脳震盪対策のため等々の選手の安全を確保するルールが作られている。安全のための規則は10年前とすら大きく違う。

だが、混同しないでほしい。アメリカンフットボールは危険なスポーツではあるが、決して野蛮なスポーツではない。

己を鍛え上げた者だけがフィールドに立つ資格があり、全力でぶつかり、強さを競うスポーツだからこその価値がある。全力で闘うなかで、極限状態のなかですら、ルールを守るからこその価値がある。

日常で誰かに全力でタックルすれば、十中八九、相手は死ぬか重傷を負い、その行為は犯罪だ。日常では犯罪となる行為が、フィールドという非日常では、ルールを守るからこそ許される。全力でタックルして、万一相手が死のうとも、それは相手に非がある。一方で、逆もしかり。全力のタックルをくらって怪我をするのは、己が弱いことがいけない。

今回はタックルをしたことが問題ではないし、相手を傷つけたことも問題の本質ではない。ルールの外でタックルをしたことが問題なんだと理解してほしい。

これからもBOMBERSの活動は続くけども、ハードヒット、ハードブロックを追求していくことに変わりはない。また、相手にそれこそ潰されないように己を鍛えてください。

そして、浅野のような進学校でアメリカンフットボール部に所属しているとなれば、世間の耳目を集めてしまうこともあるだろう。親戚等の集まりで「あんな危険なスポーツをやるなんて」とか「野蛮なんじゃないか」とか言われるかもしれない。

そういうときこそ、君たちが、アメリカンフットボールがいかに素晴らしいスポーツであるかを態度で言葉で示してほしい。

残念ながら、私自身はラフプレーが許容されていた時代の人間で「お前の若いときはどうなんだ」と問われれば、返す答えはないけれど、君たちは違う。今だけでなく、これから10年20年とフットボールとの関わりが続いていくなかで、アメリカンフットボールの尊厳を取り戻してほしい。
これは、コーチからのいつものような指示ではなく、お願いだと思ってくれてかまわない。

さあ、練習を始めよう。


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