いつも寝不足 (blog版)

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川端裕人のネイチャーライティング (3)

2005年06月12日 | 読書
川端裕人のネイチャーライティング (2)」の続き。

ペンギン大好き!

新潮社

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ペンギン大好き!』という書名を最初目にした時は、あまりに頭が悪そうな書名なので敬遠してしまったのだが、『ペンギン、日本人と出会う』を読んで開眼してしまったので、次の機会には迷わず手にした。

これは、『ペンギン、…』と後続する『サボテン島のペンギン会議』の写真集に相当する。と言うか、『ペンギン、…』、『大好き!』、『サボテン島…』は私の中では川端裕人のペンギン3部作として位置づけられている。

『ペンギン、…』がペンギンに関する包括的な話を展開しているのに対して、『大好き!』は、もう、純粋に、「これだけ色々なペンギンの姿を撮ってきたんだっ」という川端裕人の喜びがあふれているような写真集。『ペンギン、…』では触れられていないフィヨルドランドペンギンを冒頭に持ってくるあたりは、さすがによく計算されている。

「森の妖精」と呼ばれ、森林の小川を泳ぐフィヨルドランドペンギンは見る者に強い印象を与えずにはおられない。フィヨルドランドペンギンは、ニュージーランドの森林部に棲む種類で森の中に巣を作りながら川を泳いで海へ行ったり来たりしている。

ペンギンが森林の中の淡水の川を泳ぐ姿って、何だか想像しにくいでしょ。でも、泳いでる。この写真1枚だけでも、自分の知っているペンギン像の大幅な修正が必要だということを実感させられる。しかし、それは決して不快な体験ではなく、「もっと君たち(=ペンギン)のことが知りたい」という拡張への心地良い欲求を喚起してくれるはず。

『ペンギン、…』はペンギンと日本人との絡みが中心となったので、日本人に馴染みのあるフンボルト属、エンペラーペンギン属がメインで、マカロニペンギン属がポチポチと言った感じだったのだが、『大好き!』はのっけからマカロニペンギン属のフィヨルドランドペンギンだ。

また、ペンギンの中で最も絶滅が危惧されているキガシラペンギンにも紙数を割いている。正直言って、キガシラペンギンの未来は暗いと思わざるを得ない。ただ、著者が川端裕人。そんなことでは心は折れません。恩田陸が評するところの「見えるロマンチスト」はある意味リアリストで、目の前の現実を受容した上で、どうするか考え行動する。これって、できそうでなかなかできないんだけどね。

少なくとも、著者のそういった性格によってキガシラペンギンにまつわる暗めの話も現状を正しく認識するための単なるステップになっている。悪い事実を知ると嫌な気分になるというのは、一見すると正しそうだが、実際は、個々人にしみこんだ思考パターンがその経過の途中にあって、悪い事実から無媒介・直接的に嫌な気分が発生するわけではない。

つまり、ダメそう→ダメだ、ではなく、ダメそう→ダメじゃないかも、という可能性があることを認識し、悲観にも楽観にも傾かない。だから悪い情報も拒否しない、それを受け入れた上でどうするかが重要だから。

まぁ、こんな小難しい話が書いてあるわけではなく、もっと気軽に、もっと楽しく、もっと真剣にペンギンを知る手がかりとなる写真集。やっぱ、写真で見ると実物が見たくなるね。野生の棲息地は難しいので、手近の動物園や水族館へ行ってみよう。

日本で今の時季に見られるペンギンと言えば、フンボルトペンギン属。『大好き!』の中にもケープペンギンの大群生の様子が納められているが、やはり脇に追いやられている感がなきにしもあらず。と言うわけで、次は1冊まるまるフンボルトペンギンの『サボテン島のペンギン会議』へと続く。



サボテン島のペンギン会議

アリス館

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「川端裕人のネイチャーライティング (4)」へ続く(予定)。

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