ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

磐梯山 ~万年バロック青年の野外授業~

2011-08-21 07:21:31 | 登山(東北南部)

【第3日・8月16日(火)】
八方台登山口→中ノ湯跡→弘法清水→磐梯山山頂→お花畑→中ノ湯跡→八方台登山口



8時30分に吾妻小舎を出たぴすけとダーリンと万年バロック青年は
万年バロック青年の自家用車で、磐梯山ゴールドラインの八方台登山口に向かった。
昨夜の夕食時に、磐梯山に初めて登る我々のために、万年バロック青年が選んでくれたのは
標高1184メートルの八方台登山口から中ノ湯跡を経由し山頂に至るものと
猪苗代リゾートスキー場のスカイシャトルを使って、標高1250メートルから登る
最も標高差の少ない2つのルートだった。
万年バロック青年によれば、八方台ルートはブナの樹林帯を歩く、いわば陰のコース
猪苗代リゾートからのルートは翁島登山口からのルートと合流し、猪苗代湖を眼下に見下ろす
いわば陽のコースということで、それぞれ異なる趣があって楽しめるということだった。
ぴすけの好みは陽のコースだが、ゴンドラの運行が天候に左右されることと
ガンガン登ってグングン下るには、足の状態が良くないこと
旧噴火口を取り巻く火口壁と、その上部のお花畑に行ってみたいことを考慮し
今回は八方台から登ることにしたのだ。

八方台登山口を10時10分に出発。

ブナの二次林の中を進む。
林層を眺めながら、磐梯山の植生や植物の特徴などを万年バロック青年がレクチャーしてくれる。
地元の山歩きの先生が教えてくれる、贅沢な野外授業だ。

10時35分、中ノ湯跡に到着。
磐梯山山頂は雲が被っている。

中ノ湯の廃墟。
ここで小休止するが、ここまでまだ日射しがあって、猛烈に暑い。

途中、裏磐梯が見渡せる見晴らしの良い場所に出る。
旧噴火口を囲むように火口壁が聳え、緑青の水を湛えた銅沼が見える。
その向こうには、霞んでいるものの、桧原湖・小野川湖・秋元湖が見渡せる。

中ノ湯まではハイキングコースといっても良い程度の道だったが、そこから先はブナの原生林の中を進む。
かなり段差のある大石がゴロゴロしており、かつ滑りやすい赤土の道で
足が痛いぴすけは、登りなのに珍しくタイムオーバー気味。

弘法清水に着いたのは、10時55分になっていた。
弘法清水は大変冷たい水で、この先がちょっとした広場のようになっており、大勢の人が休んでいた。
2軒ある休憩小屋(岡部小屋・弘法清水小屋)で登山バッヂを購入し、我々もしばし休憩。
ここで万年バロック青年が
「お先にどうぞ。」
と、先頭を譲ってくれた
恐らく、初めて磐梯山に登る我々のために、先に頂上を踏めるように気を遣ってくれたのだと思う。

切り立った崖の下に見える草原は、沼の平だ。
時間があって、足がなんともないならば、裏磐梯へ下るルートも変化があって楽しそうだ。
裏磐梯スキー場からと川上温泉からのルートを、景色を見ながら万年バロック青年が教えてくれる。
櫛ヶ峰の稜線のガレ場は、下りに使うと滑落事故が多いと聞く。
天候・体力・時間が整った時に、登りに使えば、変化に富んだ山行が出来るのではないだろうか。

大石がごろついていた登山道がガレに変わると
進行方向左手には急な登り、右手には緩やかに巻くように、道が二手に分かれる。
最初ぴすけは左の急な登りを選択し、歩いていたのだが
なぜか途中で「磐梯山山頂」と書かれた看板が下方にあることを発見。
それに引きずられるようにガレ場を下った。
ところが、やはりおかしいのだ。
そこより高い頂が、現実に見えているのだから

エエ~~~ッ
見上げれば、先ほどのガレ場の急登を登りつめ、万年バロック青年が颯爽と歩いているではないか

そ、そ、そんな~
ぴすけが文字に引きずられて道を誤っている間に、一足早く山頂に着いた万年バロック青年。

山頂で手招きをしている。
「なんであんな所に紛らわしい看板を立てるのかね~
と、訝しがっていたが、何回も来ているのだから、先に教えておいてよ~

これぞまさしく山頂に祀られている、磐梯明神の石祠。
独立峰だけあって風が強かったが、その風のお蔭で、一瞬猪苗代湖の湖面が顔を覗かせた。
山頂からほんの少し下がった場所で、猪苗代湖方面を眺めながらお昼
その後、万年バロック青年が翁島ルートに少し行った場所で、地形や場所を説明してくれる。
山頂付近に咲いているミヤマシャジンやウスユキソウについてもレクチャー。

山頂付近で長居をしたつもりはなかったのだが、小1時間いたようだ。
弘法清水からお花畑経由で下山する。

地図上に「お花畑」と書いてあっても、「お花畑」という地名があっても
実際にお花畑が広がっていることは稀で、時期的な問題もあるのかもしれないが
がっかりすることもしばしばだ。
天狗岩と櫛ヶ峰を背景に、ここにはまさしくお花畑が広がっていた。

タカネナデシコとヤマハハコ。

キオンとアキノキリンソウ。
ほかにもメイゲツソウ・ノアザミ・ノリウツギ・エゾシオガマ・ウメバチソウ・マルバシモツケなどが咲いている。

お花畑から見上げた、磐梯山山頂。

火口壁が屹立している火山って、なんてカッコイイのだろう
とはいえ、微かだが噴気を上げている山肌を見ると、噴火が起きないよう祈るばかりだ。
裏磐梯の美しい湖沼群も、明治の大噴火で堰き止められて出来たというが、被害も甚大だった。
お花畑を回り、往路と同じ道を下って八方台登山口に着いたのは15時だった。


下山後は、万年バロック青年が押立温泉・住吉館に連れて行ってくれて、3日分の汗を流す。
住吉館の風呂は改装したばかりとみえて、木の香も漂い、森の中にいるようで眺めも最高
隣の男湯からは、ダーリンと万年バロック青年が風呂場のドアを開けるなり
「おおっ、良いね~
「なかなか良いじゃないですか
と、感嘆の声を上げるのが聞こえた
お湯も冷たい金属臭と金属味が感じられるものは筋肉疲労にはもってこいだし
少し温かい方はお肌がすべすべになる感じがする。
露天には内湯から長い廊下を歩いていかなければならないが、運良くほかにお客がいなかったため
露天にも入ることが出来た(ただし露天は混浴)。
押立温泉・住吉館、気に入った
万年バロック青年とダーリンは、何もしないでゴロゴロしたりボケーッとするために
またここに来てみたいと言うほど気に入ったようだ。
それにしても、風呂好きのぴすけが言うならまだしも、早風呂自慢の2人が言うのもおかしなものである
ぴすけが風呂から出ると、16時半を過ぎており
この時点で郡山駅17時33分発の東北本線に乗ることはあきらめ、18時台の列車に変更。
ぴすけは郡山駅の時刻表をうろ覚えだったのだが、東北本線の上り列車で
上野方面にうまく接続する列車は、確か1時間に1本で、30分台にあったように思い込んでいたので
それを良いことに万年バロック青年と猪苗代湖畔をドライブし
さらには、万年バロック青年のフィールドとも言える額取山や御霊櫃峠を望める場所まで案内してもらい
郡山駅に着いたのが18時過ぎだった。
郡山駅に不案内な我々のため、万年バロック青年はわざわざ改札前まで見送りに来てくれたのだが
そこで電光掲示の時刻表を見てびっくり
18時台の上り列車は21分発で、その時既に18分だった

ううううう、うわ~~~っ

お礼もそこそこに握手をして改札を通過し、見送る万年バロック青年に手を振って
足の痛さもなんのその、21分発の東北本線上り列車に乗ることが出来た
無事に列車に乗れたのも、わざわざ改札まで案内してくれた万年バロック青年のお蔭である。
楽しい時間、知的好奇心を満たす野外授業、素敵な温泉、本当にありがとうございました


4年越しの念願であった吾妻連峰縦走に加え、磐梯山まで歩くことが出来
充実した3日間が過ごせて大満足。
吾妻小舎で迎えてくれるはずだった遠藤さんが御健在なうちに吾妻連峰縦走を果たしたかったが
残念なことに、遠藤さんはこの春鬼籍に入られてしまった
不思議なことだが、初日弥兵衛平小屋(明月荘)に着くまで
ぴすけはダーリンの後ろから誰かがついてくる気配を感じ、何度もダーリンに
後ろから人が来ているのではないか、と尋ねていた。
山を歩いていて、そういう感覚を持ったことは滅多にないのだが
もしかしたら遠藤さんが心配してついてきてくれたのではないかと、勝手に思っている。
我々2人が最初に吾妻を訪れた時と同じく、東北本線の普通列車に乗り
黒磯駅・宇都宮駅と乗り継いで、無事に帰宅した。



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2 コメント

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磐梯山はいい山です (芝刈り爺さん)
2011-08-28 08:21:14
私も何年か前、同じコースで歩き、登り始めの美林に感動。途中の温泉跡地では、許されるならすっぽんぽんになって、湯あみしたいくらいでした。それにしてもあの爆発、怖いですね。
怖い怖い、この畏れる気持ちを大切にしたい爺さんです。
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ガイア! (ぴすけ)
2011-08-28 23:38:07
芝刈り爺さん、私なんぞの山歩きは軟弱で、まだまだ甘っちょろいのですが、それでも一人で山を歩いている時に誰にも会わなかったり、山中で夜に真っ暗な闇の中で星を眺めていたり、山肌に火山活動の息吹を感じたり、様々な生物と遭遇したり、テントの布を隔てた外気に風の温度や音を感じたり、山にいると畏怖・畏敬といった感情を強く抱きます。
都市部で暮らす人々は、自然に対してそうした感情を抱くことは少ないように感じます。自然の怖さを打ち消す暮らしが、都市化とうことなのかもしれません。
人間は、殊に都市部の人間は、自然の怖さをすぐに忘れてしまいます。観念的に怖いと思っているかもしれませんが、自分の素肌で感じる怖さからは遠ざかっていて、それが自然を征服できるかのような錯覚につながったり、自然を甘くみたりすることにつながるのだと思います。
私の場合、人から遠ざかるために山に行く部分があるのですが、人から遠ざかるということは、怖さを感じることでもある。それでも山に行くと、なんだか「地球全体、みんなまるごと生きている!」という感じを抱くのです。
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