ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

東吾妻日記その3 吾妻小舎~鎌沼~一切経山~高湯温泉

2007-07-03 10:39:49 | 登山(東北南部)

【6月19日(火)】
吾妻小舎→姥ヶ原→鎌沼→酸ヶ平→一切経山→五色沼→家形山→大根森
→不動沢→高湯温泉



吾妻小舎を後にして浄土平湿原に向かう。
チングルマの咲き乱れる姥ヶ原・鎌沼を経由して、一切経山に登る。

全ての景色が、心に染み入るように美しい。
一切経山の登山道途中から、吾妻小富士の火口が見え始めると
頂上はすぐそこだ。
一切経山の頂上は、360度の大展望が広がる。
そして、何より圧巻なのは、
一切経山の北側斜面に回ると見える、五色沼だ。

「魔女の瞳」と呼ばれるその神秘的なたたずまいは
見る者を引き込んでしまう。


北側のザレた斜面を下る。

この右手には常に五色沼が視界に入っているが
その美しさに眼が吸い寄せられ、下りの足元が危うくなる。

五色沼を眺めたいが眺められないもどかしさを抱えながら
やっと五色沼を眺めるのに格好の場所にたどり着く。


「五色沼は福島の宝だ」と書かれているブログを拝見したことがあるが
まさしく福島の、いや、地球の、宇宙の宝だ!といっても過言ではない。
その場から離れるのは大変心残りであったが
また来ることを心に決めて、美しい東吾妻の山を後にし
下山口である高湯温泉に向かったのだった。

森林限界を過ぎると、高山帯の植生がガラリと変わり
樹林帯の中をクマザサ生い茂る登山道となった。
相方が「ねえ、クマっているのかな?遠くだったら、見てみたいと思わない?」と聞いてきた。
私「この辺はクマはたくさんいるよ。さっきから、糞だらけだよ。」
相方「近くじゃいやだけれど、遠くの、湿原みたいなところで親子で遊んでたりしてさ。」
私「私は見なくていい。」
相方「え~、でもさ、遠くでじゃれあったりしていて、写真撮ったりしてさ。」
私「(ーー;)…。御希望ならいくらでもいるんじゃない。この辺は人間よりクマの方が多いよ、きっと。」
そんな話をしていたのもつかの間、案の定相方がバテ始め
二人の距離がかなり開き始めたころだった。
前方のクマザサが、「ガサッ!」という音と共に塊となって動いた。
「ん?何?」
眼を凝らして、動いたクマザサを見つめること2,3秒…。
「クマだっ!」の声と同時に大きな足音が背後から迫ってきた。
この足音はクマの足音?それとも相方の逃げる足音?
いずれにしてもクマは逃げてはいけないんじゃ…。
そんなことが頭の中をよぎったが、すぐに
「クマだ、それっ!」
という相方の声が背後に迫り、否応なく逃げる態勢に。
クマは追ってきているのか?まさか!
どこまで逃げりゃあいいんだよーーーーー!
頭の中をいろいろな考えが駆け巡るが、
とにかく転ぶまい、もう逃げるしかないと、下りの山道を駆け下りる。
どのくらい走ったろうか。
「もう大丈夫。」
という相方の声で走るのをやめたが、止まった私は顔面蒼白。
足は震えて、正直な話チビりそうだった。

よくよく相方から話を聞いてみると
私が林の中を注視しているのに気付いた相方が
何気なく自分の横のクマザサに目をやると、2、3メートル(!?)先に
黒くて鼻のとがった物体が、横を向いていたのだという。
その黒い物体は相方には気付いていないようで
相方は気付かれる前に逃げるしかないと思ったそうだ。
それにしても、そのままシラッと早足で下りてくれば良かったのに
大声を出して「クマだっ!」と叫びながら
ドカドカと走って逃げるとは…。
事情を把握していない私にとっては恐怖の体験だった。

その後相方は、クマの恐怖で疲労困憊。
クマが怖くて休憩も取れず、疲れをとるために何かを口に入れるよう勧めても
止まるのが怖いらしく、何も口にしないため、ますます疲労の度合いを強めた。
途中、無理矢理キャラメルを口に入れさせて、なんとか高湯温泉に到着。

まったくー、クマに会いたいなんて、いうからだよ。



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