これまで2回に渡りお話ししてきました祇王と仏についてですが,最後は仏御前のその後についてお話しします。
(前回から間がかなり空いてしまったので,復習する方はこちらから→「祇王と仏」第1回,第2回)
小松市原町。小松市市街地から,以前お話しした「鳥越一向一揆歴史館」に向かう途中のこの地に,ひっそりと「仏御前の里」があります。
この地が仏御前の生まれ故郷であり,終焉の地とされています。
なぜ仏は京の往生院を去らねばならなかったのでしょう?
そこで,加賀に伝わる仏御前の伝承を大ざっぱですがお話ししましょう。
祇王の後を追って往生院に入った仏でしたが,あるとき仏は身体の異変に気付きました。
実はそのとき既に,仏は清盛の子をお腹に宿していたのです。
いずれこの場で子を産むこともできず,産んだら産んだでその子をめぐり,また清盛の呪縛から逃れることができなくなってしまう予想される運命。ましてや祇王に対する面目も立たないその身…
晩春のある日,仏は一人,故郷である加賀の郷に帰ることにしました。
身重である仏一人での加賀への旅路はさぞやたいへんだったことでしょう。
仏は美濃を経由し,白山麓の木滑(きなめり。現・吉野谷村)まで来たとき,陣痛が起こり,通りかかった老婆の力を借りて,その場で出産しました。
ところが,その子は産まれて間もなく死んでしまいます。
しばらく,亡くなった子を木滑の地で弔った後,ようやく故郷にたどり着いた仏は,生活の手段として茶屋を開きました。
元加賀一の白拍子が開いたという茶屋は日に日に繁盛し,村の男たちは仕事を忘れて,仏の茶屋に通うようになりました。
そんなことが続いたこともあり,村の女たちは仏に嫉妬し,村に災いを呼ぶものとして,最後,仏は21歳の若さで村の女たちに惨殺されてしまったのでした…
この話を初めて耳にしたときは衝撃でした。
というより,私が「仏御前の里」を訪れた際には,仏がこの地に帰ってきて亡くなったことしか情報がありませんでした。
そのうちいろいろと調べていく内に,このような伝承があることが判明しました。
なんとなく,ドラえもんの最終回とかサザエさんの最終回とかのうわさ話を彷彿させる悲劇の結末なのですが,わからない話ではありません。
今でも,仏御前の里界隈では,仏御前の祟りが降りかからぬよう,出産の際には四方窓を閉め切って行うしきたりがあるらしいです。
しかし,今では町を挙げて仏御前が大切にされています。
現在,町の一民家に仏御前の木像が代々大切に保管され,事前に連絡をすれば見せてもらえるとのことです。
また,原町には,仏が開いた茶屋の跡や,仏の墓,屋敷跡が残されています。
(冒頭の写真は仏の屋敷跡に残されている仏の墓です。)
この地とは別に,仏が子を産んだ場所とされる吉野谷村の木滑神社境内には,仏が出産するときしがみついたという石が残されており,皮肉にも現在ではその石は安産祈願の石とされています。
さて,伝承では,仏御前が祇王に寺を出ることを話したのかどうかまでははっきりとしませんが,おそらく仏は祇王になんらかの相談をし,祇王たちの協力の下に京を去ったのではないでしょうか。
そして,仏が京を去ったときに,仏は往生院で亡くなったことにし,仏のその後の幸せを祈りつつ祇王たちは仏を送り出したのかもしれません。
しかし,結果は最悪でした。
自ら夢を求めて京に上ってきた仏御前。
一度は夢を掴んだかに見えた彼女でしたが,はかなくも運命に翻弄され悲劇の結末を迎えることになってしまった彼女の物語こそ,平家物語に残されるべきだったのではと思う今日この頃です。
仏御前の里のHPはこちら
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ぴえるさんもぜひ!
われらが新宿の首領様がすべてを取り仕切るとのことでした。
そう言えば、以前に「坂東33観音巡り」をした際、茨城県の筑波山に近い所にある「第26番 清滝寺」に行った際、その側に「小町の里」と言うのがあって、「小野小町」の墓があったのを思い出しました。
今年に入ってからロクなことがないので,温泉でキレイさっぱり気分も一新したいっす
そういえば,訪中しているはずの首領さまが報道陣の目をくらまして何処に行っているのかと思ったら,なるほど都内の飲み屋にいたんですね
matsumoさんは板東33箇所巡りにも行かれたのですね!
私もちょびっとずつでも板東33箇所巡ってみたいです。
26番には小野小町の墓があるのですか。
33箇所巡りのついでに,歴史的史跡も巡れるのはありがたいですね!
貴重な情報ありがとうございました
元気があればーー、何でもできる・・(笑)
たっちゃんですッ★★
悲劇ですねーー↓↓
全然知らない話でした!!!
超勉強になったッスよーーー♪♪
個人的にはこういうディープなお話って好きですね
しかしたっちゃんさんはいつも元気いっぱいですね!
こちらまで元気が出てきます!