平凡であることの幸せ

人生は光に導かれる旅

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黒木和雄 ~戦争レクイエム3部作~

2006-08-14 | 映画

     明日 8月15日は61年目の終戦記念日です。 合掌

TVでも毎年夏になると戦争関連の番組が連日のように放送され 戦争を知らない私にとっても戦争と平和を考えさられる季節でもあります。12日土曜日の夜は NHK教育テレビで ETV特集 「戦争へのまなざし~映画作家・黒木和雄の世界~」を見ました。今年4月12日に 、『紙屋悦子の青春』を完成させたところで 75歳で急逝なさった黒木監督のお名前と作品を知ったのはまだ2年前の夏のことでした。

TOMORROW 明日』(1988)
美しい夏 キリシマ』(2002)」(2003年度キネマ旬報 第1位)
父と暮らせば』(2004)

黒木和雄 戦争レクイエム三部作 iconを完成させたという2年前の夏の新聞記事をみて、まず 平和映画祭 in 横浜 のイベントで上映されていた映画「美しい夏 キリシマ」を観に行きました。1930年宮崎県えびの市出身で 幼少期を旧満州で過ごした黒木和雄監督が、故郷宮崎で体験した「戦争」を語った 自伝映画でもあります。

1945年5月8日 15歳の時 学徒動員でアメリカ空軍のグラマン機に奇襲され、学友の凄惨な死をまのあたりにし 助けを求めた瀕死の学友を置いて逃げた記憶がPTSD(心的外傷ストレス障害)となり、「生き残ってしまって うしろめたい」という魂の病にひきずられ、その後同志社大学を卒業、岩波映画を経てフリーとなって 戦争の体験を渾身こめてよみがえらせ、あの時代の悲傷をなんとか伝えたいと思って作った映画なのだそうです。

美しい霧島連山を背景に 日常的にグラマン編隊が北上するなか、戦火こそない田舎であっても 当時の人々にさまざまな深い傷を残した「もうひとつの戦争」に 涙するというより 観るものを苦しくさせる映画でもありました。当時の体験者でなければ描くことのできないような映像  日常の情景 登場人物の地味な着物姿  言葉遣い ささいな出来事などの「戦前生まれの日本人」の姿に 今は亡き明治生まれの祖母の姿が重なりました。
61年たった今でも 戦争の悲しみの記憶を語れない方もおられる事実・・・。体験者が少なくなってきたからこそ 歴史的事実である戦争を風化させてはいけないと思わずにはいられませんでした。

   * ないごて  おいの方が 生き残ってしもたとな *

  私の戦争  黒木和雄

  映画作家 黒木和雄の全貌

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その年の秋には、神保町の岩波ホールで上映されていた 宮沢りえさん主演の「父と暮せば 通常版」を鑑賞したのですが、井上ひさし原作(父と暮せばの戯曲(父と暮らせば こまつ座ビデオ劇場1[ビデオ]の映画化で 第二回読売演劇大賞「優秀作品賞」受賞作品でもあります。Photo_139

広島の原爆投下から3年、生き残った後ろめたさから幸せになることを拒否し、苦悩の日々を送る主人公美津江が 亡き父の亡霊にに励まされ、悲しみを乗り越え、未来に目を向けるまで4日間の物語です。美津江役は「たそがれ清兵衛」で数々の映画賞を受賞した宮沢りえさんで素晴しい演技でした。父親役の原田芳雄さんの「エプロン劇場」にも圧倒されました。また 映画というより お芝居を観ているような父と娘のやりとりは寂しさばかりでなく ユーモアもあり、戦争をテーマにしながらも こころあたたまる作品でもあります。井上ひさしさんが読者に伝えたいヒロシマのこころや 、黒木監督の戦争で生き残ってしまったうしろめたさという思いがたった3人の登場人物で表現され、また観るものを それぞれ登場人物の誰か一人の気持ちにさせてくれるのです・・・。広島の方言もこころにやさしくしみていきます・・。

また キューバにヒロシマ・ナガサキを伝えた“チェ・ゲバラ”ことエルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナについて勉強したくなりました。

(写真は数年前広島を訪れた時のもの :世界の恒久平和の願いを込めてつくられた平和記念公園にある原爆ドームです。1945年(昭和20年)8月6日午前8時15分、原爆の投下によって天井から火を吹いて全焼しましたが、建物の壁の一部は倒壊を免れ、ドームの鉄枠とともに象徴的な姿をさらしました。1996年(平成8年)12月ユネスコの世界遺産に登録されました。)

    * おとったん、 ありがと ありました *
    * わしの分まで 生きてちょんだいよぉー *

Kurokikazuo 美津江が 手紙の封筒の受取人の名前の左下に 「みもとに」 「みまえに」 と 脇付けを書くことも・・・すてきだなあと思いました。

←映画のパンフレット

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数日前 TVで 桃井かおり さん主演の「TOMORROW 明日」も放送されていたようですが気づかずこの映画はまだ観ていません。黒木監督の遺作となった原田知世さん主演の「紙屋悦子の青春」とともに 是非観てみたいです。
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戦争体験者が少なくなってくる時代だからこそ 戦争関連の映画や本やドキュメンタリーを子供たちとともに見て一緒に話し合うことも 夏休みだからこそ出来ることであると思います。反戦意識を養うというよりも、戦争の事実を知り、平和であることの幸せ 些細な日常に感謝する気持ち、人が亡くなることの悲しみなど・・・受け止め方はいろいろでいいと思うのです。 

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