長谷川きよしサンは、ギター弾きながら歌うので、フォーク歌手と言われることが多いが、ホントはシャンソン歌手なのだ、とライブのCDで喋っておられます。
この人の歌を初めて聴いたのは高校の頃。
既にフォークソングが流行り出していて、C、Am、F、G7のコードをジャ~ンと弾けば、誰でもフォークシンガー。ワタクシも単純なコードをジャ~ンとやって、フォークのマネしてました、恥ずかしながら。
しかし、長谷川きよしサンは歌いながら、複雑そうなコードをジャ~ンと弾いていて、更に複雑そうなメロディも聴こえて来るので、もう一人か二人、別にギターリストが伴奏しているのかと思った。
曲名は「別れのサンバ」。ブラジルにサンバとかボサノバというフォークとは別の音楽がある、と言う事は高校生でも知っていた。
そしてTVの深夜番組で、ただ一人、あの複雑そうなコードとメロディを弾きながら歌っているのを見て、ズゴイ!、と思った。
長髪にサングラス。これはフォークシンガーのよくある風貌だか、この人はフォークとは別モノなのだと判った。ナンセ、フォークよりカッコイイ。
また、我が高校の先輩に当たるらしい野坂昭如センセイは、深夜でも黒メガネでTVに出ておられたので、夜にサングラスはファッションだとも思っていた。
長谷川きよしサンが、幼い頃から眼が不自由だった事をあとで知った。サングラスはファッションだけではなかったンですね。
その後、ワタクシはジャズファンになったので、強いて長谷川きよしサンのLPを聴くことはなかった。
長谷川きよしサンのCDを初めて買ったのは、20年程経って、毎週、中・四国地方へ出張する営業マンの時だった。
当時、出張の帰り、毎回新神戸駅そばのショッピングセンターをブラつき、浮かした出張費で時々CDなどを買っていた。
ショッピングセンターにあったレコード屋サンは、本社が東京の全国展開の大企業、スイングジャーナルとの共同でLP再販の企画をやったりしていて、学生の頃、ジャズ喫茶で聴いただけのLPも何枚か買った。
ジャズに少し飽きた頃、その店で長谷川きよしサンのCDジャケットが眼についた。
青みがかかった黒い背景に、赤いシャツが鮮やかな長谷川きよしサン。相変わらず長髪にサングラス。早速買って帰った。
作品は当然、フォークではない。
ピアノとペースとパーカッション、そして妖しく、エロチックな吉行和子サンとのダイアローグ。
「エエやン、粋やン」、しかし、CDはそれだけ。その前はLPらしい。
数年前、それらLPの一部、70年代後半のモノがCD化され、全て通販でGet出来たが、加藤登紀子サンとの「LIVE」がナゼか抜けている。フォルクローレの作品なとが含まれている様だが、ナゼCD化されないンだろう。
そうなると、どうしてもGetしたい愚かなサガ。
先日、フト思いついてネットで探して見ると、中古レコード屋サンのサイトにあった、送料込¥2,080.-。これ1枚だけだった。
で、早速ゆうちょ銀行の指定口座へ振り込み。
そして、フト思い出した。レコードプレーヤーのベルトが伸びてる。何年も前からだ。
ロクに聴きもしないノもあるが、いつの間にかLPレコードが300枚弱、貯まっていた。その約8割はModernJazz。
同居人はいないので、ガンガンかけても文句は言われないが、度を過ぎると近所に迷惑かける。ひとりジャズ喫茶は遠慮気味にやらないといけない。
しかしベルトが伸びればどうしようもない。
ホーンの入った早いリズムの曲なら気にならない事もあるが、例えばBill EvansのMy Foolish Heartの出だし、ポン、ポンと来てScott LaFaroがドンと入って来るこのマが、まさに伸びて情けない。杏里チャンの声もダラしなく伸びて、カラダの調子が悪いのか、と心配しそうになる。
エライこっちゃ、ナントカしないと。
メーカーのTRIOは名前まで変わって、当然レコードプレーヤーなど作っていないし、ベルトもズッと前から製造中止だし、自作しようにも正規の寸法判らんし。
しかし、これもネットで調べると、ナント、レコード針のナガオカでやっている事が判った。
伸びた現物の長さを測って、それに近いモノを選べばいい様になっていた。送料込¥2,220.-を早速振り込み。
先週、メデタク、LPとベルトが届いて、まずベルトの交換。
左が新品、右との伸び具合がよく判る。幅と厚みが少し大きい。これでキチンとしたスピードで廻るのだろうか。
魔法使いのオバアサン(?)の様になる前の加藤登紀子サンと、スティビー・ワンダーに近い禿あがり(?)になる前の長谷川きよしサンが並んでます。
プレーヤーはチャンと廻った。長谷川きよしサンの声は伸びていない。久しぶりのLP、バチバチ音が気になるが懐かしい。
LPの最初の曲はサンバ・プレリュード。
この曲、吉田慶子サンの1枚目のCDにも入っていた。
吉田慶子サンはボサノバやサンバ・カンソンを全てポルトガル語で歌いはるが、この長谷川きよしサンとのデュオだけは日本語。
慶子サマの柔かい、かぼそい声が「あなたがいなければ、私はどこにもいない」と歌っている、エエやン。
歌詞カードをよく見ると、訳詞:加藤登紀子、長谷川きよしで、書いたのはVinicius De Moraesと言う人らしい。この人、確かTom Jobimと一緒に沢山のボサノバを作った人だ。
「フィリシダージ」と言う曲で、幸せには終りがあるが、悲しみには終わりがない、と詠った人だ。
映画「黒いオルフェ」の最初のシーンでこの曲が流れて来て、「幸せは儚く、悲しみは果てしない」と字幕が出て来て、サウダーデちゅうのはこう言うコトか、と思った。
このサンバ・プレリュードでも「悲しみが過ぎゆき、悲しみがやってくる」と来て、「あなたがいなければ、私はどこにもいない」と続く。
しかし、長谷川きよしサンは、フツーにCDとかで聴くことが出来ない曲を沢山教えて下さいます。この曲もそうだし、ジルベール・ベコーなどの曲もそうだった。
そう言えば、金子由香利サンの日本語のシャンソンからも、シャルル・アズナブールを知った。
~あなたがいなければ、私はどこにもいない~