蒼ざめた馬の “一人ブラブラ、儚く、はてしなく”

山とスキー、車と旅、そして一人の生活

スキーは儲からない

2011-01-25 22:07:52 | 山とスキーでブラブラ

3年前からお世話になっている栂池の民宿、先週は貸し切りだった。5時から広い風呂に入り、6時から広い食堂で夕食、「たった一人の為にスイマセンねぇ」
宿のオカミサン、「イエイエ、ゆっくりしていって下さい」

しかし、今週は泊れない、保育園児に占領されるからだ。毎年、恒例のスキー保育。一度遭遇した事があったが、風呂も食堂も廊下も、もういたる所、幼児が走りまわっていた。
この民宿はウィークディに一人/一室で泊ると、二食付いてたったの6千円。 ワタクシが貸し切っていては長続きません、たまには満室で繁盛してもらわないと。

宿のご主人、「申し訳ないですねぇ、この後はまたしばらく空いてますので」
「とんでもない、また翌週からお願いします」

今年から各室のTVは地デジに替っていて、トイレの一部にウォッシュレットが追加されていたが、料金据え置き。
「その分、値段、上げたらエエですやン」
オカミサン、「いや、建物古いし、汚いし上げられませんよ」

確かに、古くて汚い、と言われればそうかも知れない。しかし、こっちは一日雪と遊び呆けた後、風呂に入れて、酒呑みながらゆっくり夕食とれて、温かい部屋で寝れれば充分。

3年前、会社辞めて信州スキー場通いをしよう、と早速以前宿泊したことがあるロッジに予約を入れた。
しかし、ナント週末中心の営業なのウィークディはダメ。  次に連絡したのはオーナーの趣味が写真とかの洒落た和風の宿。 しかし一人はダメ。
その後手当たり次第に何軒かに問い合わせたが、どこも同じような状況でオコトワリ。
最近スキー客は減っている。 宿も客の少ないウィークディは閉める、効率の悪い一人客は断る、当然の成り行きだ。

しかしこの宿、「あのぅ、一人で火曜から木曜まで3泊、イイですか?」
「はい、いいですよ、食事はどうします?」
「当然、要りますッ」
「最近はコンビニで買ってきたり、隣のラーメン屋で済ましたりする人多いンですよ」
「そうですか。いや他の宿、何軒かあたったンですが、ウィークディはダメ、一人はダメと言われ困ってました、毎週でも通いたいンですが、いいですか」
「エエいいですよ、ただでさえお客、少ないのに、断るなんてどう言う気なンだろう」

と言う事で3年間、二十日以上泊めてもらっている。 古くで汚い、と宿の女将さんは言うが、この人の料理は美味い。 色々工夫もされていて、量も充分。 時々娘さんが作られるケーキも美味い。 栂池のメイン通りに面していて、ゴンドラにも直ぐ乗れる。スキー宿としては申し分ない。

今年4年目、我が定宿は今まで通り、ワタクシの雪遊びを支えて頂いている。

しかし、向かいの宿はズッとカーテンが閉まったまま。 その宿は、北アルプス北部に何軒かの山小屋を経営している有名な会社がやっていたはず、以前から “ 山渓 ” の付録、山の便利手帳の宿泊宿リストにも載っている。
「お向かいはもうヤメたンですかぁ」
「そうなのよぅ、お客サン少なくて。ウチ見たいに家族でやっていないから、やるとなるとコックさんも何人か雇わないとダメだし、全館暖房もしないといけないし。儲からないンで、東京で経営見てる人達が判断したらしいよぅ」
「しかし、ここ、栂池のメイン通りですよぅ」
「ホントに寂しくなったねぇ、ウチの裏もヤメたし」

確かに、ゲレンデはガラガラだ。 リフトにはズッ~と前まで誰も乗っていない、後ろを振り返っても誰もいない、そんな事も度々ある。 これはウィークディだからと思っていた。
しかし、スキー客は全盛期の1/3に減ったらしい。もう何年も前からその低値安定しているとか。
土日祝日しかリフトを動かさないスキー場もあるそうだ。それどころか、御嶽山のスキー場は今年から営業停止。
「この辺りも外人客が来なければ既に終わっていたかも知れない」、昨春、小日向の湯から栂池駐車場まで戻るタクシーの中で、都会を出て岩岳の村に住みついた運転手さんはそう言っていた。

今年はこの国にスキーが伝来して100年になるらしい。
そして今、ある統計によると休眠スキーヤーは400万人以上いるらしい。
スキー発祥100周年委員会なるモノが出来て、この400万人をどうやってゲレンデに戻って来させるか、スキー文化の再興を目指すらしい。

しかし、もうイイでしょ。 そんなに沢山の人がスキーしなくても。 そもそも人がいなくてイイ場所に大ぜいでやって来て遊んでいるだけだし。
1/3に減ったと言っても、その分母の数値はバブルの頃の客数だったはず。 大体、何も生産しない業界なのだから、そんなに儲かるはずがない。

いつも帰り寄るお酒やサンには、今年もありました、この時期だけの “ 小谷錦 ”。
「いつもあちこちで立ってル、『小谷錦あります』のノボリ、今年見なかったンでどうなっているか、と思ってたンですよ」
「あッ、いつもありがとうございます」
ここのオバサン(と、言ってもワタクシより若い?)、冬しか来ないのにワタクシを憶えている。
「お客さん減って、土産モン屋さんも大分、店仕舞いした様なんですよぅ、落倉のお酒屋サンも閉めた様だし」
「しかし、お宅はやってますヤン」
「ウチも儲からないけど、ガンバってるだけですよぅ、偶ぁにでも白馬へ来たら必ず寄ってくれるお客サンいるし、アハハ、」
ハイ、ワタクシもその一人です。

その酒屋の駐車場から五竜岳が綺麗に見えた。Imgp2413