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自書●「改訂 日本海時代の首都実現に燃えて」<40> --それでも私はなぜ出馬するのか--   西川攻著

2012-04-03 23:22:56 | ● 改訂 日本海時代の首都実現に燃えて

哲学教授とわたりあった二時間余の激論

  (講義独占)

 

 

   章 (回想記 ロ )

       大学で得たもの失ったもの

 

関東学生法律討論大会で見事入賞 (最前列椅子席、左から二人目)

 

自書●「改訂 日本海時代の首都実現に燃えて」

          <40> 

--それでも私はなぜ出馬するのか--   西川攻著

 

 

   七章 (回想記 ロ)

      大第学で得たもの失ったもの

 

 

 

1・法哲学教授とわたりあった二時間余の激論

 

  (講義独占)

 

 

 

  昭和39年。私学の中で学費が一番安く、 

司法試験の合格率が比較的高く(受験者がごく数人なので1人でも合格すればその合格率は大変なものでした)、

 創設者が郷土出身の井上円了であるとの理由もあり東洋大学法学部に入学しました。

 

 入学当初裏口入学に輩もいることを身近に知って失望し、

他大学への編入試験を真剣に考えたこともありました。

 しかしそれは別として少なくとも司法試験(以下司試と言う)合格に燃えて

勉強する意欲は高まりおよそ今まで経験ないくらい書物を読み、

その時間も多くなりました。

 

 法律の持つ論理的な面に強く興味を持ち、

司試を目指す同士を見るとやたらと法律論を戦わしたものです。

 

 "うちの大学の講義に出る時間があったら、司試の為の基本書を読め"

というのが司試を目指す先輩たちの口癖でした。

 事実、

大学の講義はあくまでも一般学生に対しての表層的レベル程度に留まり、

判例やあらゆる学説を論理的に分析し、

どれが有力説でありどういう理由で云々という、

なぜかなぜかという面白味と感動を与えるものではありませんでした。

 

 まして司試に向けて46時中勉強してるのに、

いまさらこんな初歩的な講義を聴いてなんになる、

時間の浪費だ・・・と腹立たしく思ったことも何度となくありました。

 しかし別の側面から見ると、

全国のいろいろな地方から参集してくる友達との出会いは高校時代には味わ得難い貴重なものを発見することができました。

 

 加えて、

最小限の単位習得の必要もあって講義には極力出席することにしておりました。

 

 法哲学の講義を受講していた時の事です。

 

 そのO老教授は熱っぽく訴え、

学生も他の講義の際とは異なり、

いつになく全員が真剣に聞き入っている様子でした。

 

 かなり大きな教室でありながら、

教授その張りのある声と迫力溢れる口調は室内の隅々まで浸透していました。

 

 そのとき初めて大学の本来あるべき

”真の講義とは、将に、これだ、”と

感銘したものです。

 憲法76条の司法権の独立を論拠に一部の例外を除いては、

全て司法権に委ねられるとの話をしておりました。

 

然し、

その例外の中に明らかに見落としている部分があるのではないかと気付いたのです。

 それは性質上裁判所の審査に適しないと認められる所謂、

統治行為と呼ばれている行為です。

 

私はそのとき

「わが憲法上の国会の召集・

衆議院の解散

・国務大臣の任免

恩赦の決定など、

これらの行為は広い意味では行政に属しますが

その高度の政治性のゆえに、

裁判所による法的価値判断の対象とするには適しないものであり、

またたとえ裁判所が判断を下しても、

それを執行することは困難であって、

寧ろそれを行う機関の政治責任とそれに対する一般の政治的批判に委ねるほうが合理的であるから裁判所の審査から除かれるべきものであるとせられる」(憲法54・68・72条他)

を論拠に

 

「先生、質問があります!」

 

とすぐさま立ち上がりました。

 

 そしてO教授と私との二人の徹底的な激論の応酬が展開されることとなりました。

 

 その瞬間から講義時間が終了までの延々2時間余の中で、

O教授は法哲学の視点から

私は法論理の視点からあらゆる法律の知識を駆使しての丁々発止のやり取りを行いました。

 

その間、

他の学生は甲乙就けがたい両者の主張を

声を潜めて熱心に聞き入っていたということでしたが、

私は無我夢中でO教授の法哲学とわたりあうことで精一杯でした。

 ほかの事は眼中に入る余裕はありませんでした。

 

 最後に私は、

「観念論だけで生きた現実の三権分立の具体的運営をもそれに当てはめようとすることに無理があり

 、逆に国民主権主義にある立法権の侵害の恐れがある」

の趣旨を述べ結びました。

 

 そしてO教授は

「君の考えは高柳賢三(成城大学学長・憲法調査会会長を歴任)君にそっくりだ!

若いのにもっと柔軟な考えを持つべきだ」

の意味の言葉でこの激論は幕を閉じました。

 

 司試勉強の同士からは、

「西川、よくやった」

「すごいな-!君は」

の賛辞が私の周囲を取り巻いてしまいました。

 

 結局お互いが自らの側面から論じ合っており、

決して妥協しないからこうゆうことになったと思います。

 

 ひょとしたらO教授はこのことを知っていて敢えて法哲学の立場から無視したかったのかもしれません。

 

 いずれにしてもO教授のすごい知識と学問に向けての熱血漢ぶりに私は感動しました。

 

 私も法哲学の教授の立場なそう言い切ったかも知れません。

 このとき大学に来てよかったとつくづく感じました。

 

 爾来、

延々2時間に及んだ激論の場面が好印象を与えたらしく

当日、聴講していた他学部の女子大生が司法研究室に差し入れしてくれるようになりました。

 

 さらに、学校代表として法律討論会に出場するたびに応援に来てくれる女子大生も増えてまいりました。

 

 勢い、私も勉強に励みが増したものでありました。

 

 

 

平成24年4月3日

西川攻(さいかわおさむ)でした。

 

 

 

 


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