エレベーターに乗って誰もが宇宙へ――こんな空想が現実になるかも知れない。あらゆる宇宙開発計画が依存してきたロケットを使用しない、新たな宇宙へのアクセスの手段「軌道エレベーター」(または宇宙エレベーター)への関心が高まっている。約40年後の実現を想定した構想を大手ゼネコンが発表したほか、来月1日から「宇宙エレベーター協会」が昇降機械の実験を実施する。かつての夢物語が、日本の技術によって実現に手が届こうとしている。
赤道付近に浮かぶ人工島から、空の果てへ伸びたケーブルカーのような乗り物に乗り、宇宙へ向かう。15分で地球の丸みが一望でき、次第に体が軽くなってゆく。途中のステーションには様々な研究施設が設けられ、高度約3万6000kmの「静止軌道」では、完全な無重力を体験できる。東京スカイツリー(R)を手がけた大手建設会社大林組(東京都港区)は、このような「宇宙エレベーター建設構想」を、2050年に実現可能として同社のPR誌に掲載した。
軌道エレベーターは、地球の自転と同じ速さで周回する静止衛星からケーブルなどを吊り下げ、地上と宇宙をつないで昇降機を付けたもの。訓練を受けた宇宙飛行士でなくとも宇宙へ行けるほか、ロケットのように大気汚染や爆発の危険がなく、輸送コストはロケットの200分の1程度になるという試算もある。
発想は19世紀にまでさかのぼるが、1991年に発見されたカーボンナノチューブが、実現に必要な強度を持つ素材として注目を浴び、長い間空想に過ぎなかった構想に現実味が増した。米航空宇宙局(NASA)では、軌道エレベーターを今世紀中に実現する建造物と位置づけて具体的な建造プランを提案。欧米で国際会議が毎年開催され、多くの研究者が「もうSFの話ではない」と唱える。昨年米国のスペースシャトルが退役して宇宙開発に空白感が漂う中、にわかに脚光を浴びてきた。
こうした中、日本では2008年に「日本宇宙エレベーター協会」(翌年、一般社団法人宇宙エレベーター協会に移行)が発足。同年日本で最初の学会を開いた。学会と並び同協会が力を入れるのが、関連技術の蓄積を視野に入れたレース形式の競技会。「宇宙エレベーター技術競技会」(JSETEC)と名付けられた大会では、風船から吊るされたひもを宇宙へ届くエレベーターに見立て、取り付けた機械の昇降性能を競う。昨年は静岡県富士宮市で、高度600mで実施し、大学の研究室や個人が自作の機械でしのぎを削り合った。
大会では、参加者たちがそれぞれ自作の機械をベルトに装着。操作を始めると機械音を上げて上昇し、参加者たちは、あっという間に点のようになったクライマーを見上げ、宇宙への夢を託して歓声を上げた。昨年の大会は個人出場の女性が優勝、「思った以上の性能を見せてくれた」と笑顔を見せた。
競技は年々高度を上げ、8月1~5日に開く予定の今年の大会では1200mに拡大する。「年々高度を倍にしていくことに挑戦していて、いつかは宇宙に届くものを目指す」と語るのは、同協会の大野修一会長。競技と同時に、上空からの観測や通信の実験も行い、災害時の通信網確立など、応用技術の拡がりも期待されている。
同協会元副会長で日本大学理工学部の青木義男教授は「毎年貴重な実証データが得られている。技術以外にも様々な課題があるが、多くの技術や知識を集めて将来の実現に貢献したい」と話し、競技会を通じて技術向上と認知を高めようと意気込んでいる。(軌道エレベーター派 2012/7/29)
(軌道エレベーター派よりお知らせ) 間もなく始まる今年のJSETECのルポ原稿の執筆、無料で承ります。(1)まとめ記事の場合は、競技会終了後から出稿までに4~5日くらい必要(12字×50行程度までのストレートニュース記事の場合は即日出稿も可) (2)記事のどこかに執筆者の名を明記──であれば、当方売り出し中なので原稿料不要。撮影した写真とともに原稿を提供します。取材経験豊富です。お問い合わせは画面左のアドレスへお寄せください。ご連絡いただければ、過去の記事実績などもお送りします。
赤道付近に浮かぶ人工島から、空の果てへ伸びたケーブルカーのような乗り物に乗り、宇宙へ向かう。15分で地球の丸みが一望でき、次第に体が軽くなってゆく。途中のステーションには様々な研究施設が設けられ、高度約3万6000kmの「静止軌道」では、完全な無重力を体験できる。東京スカイツリー(R)を手がけた大手建設会社大林組(東京都港区)は、このような「宇宙エレベーター建設構想」を、2050年に実現可能として同社のPR誌に掲載した。
軌道エレベーターは、地球の自転と同じ速さで周回する静止衛星からケーブルなどを吊り下げ、地上と宇宙をつないで昇降機を付けたもの。訓練を受けた宇宙飛行士でなくとも宇宙へ行けるほか、ロケットのように大気汚染や爆発の危険がなく、輸送コストはロケットの200分の1程度になるという試算もある。
発想は19世紀にまでさかのぼるが、1991年に発見されたカーボンナノチューブが、実現に必要な強度を持つ素材として注目を浴び、長い間空想に過ぎなかった構想に現実味が増した。米航空宇宙局(NASA)では、軌道エレベーターを今世紀中に実現する建造物と位置づけて具体的な建造プランを提案。欧米で国際会議が毎年開催され、多くの研究者が「もうSFの話ではない」と唱える。昨年米国のスペースシャトルが退役して宇宙開発に空白感が漂う中、にわかに脚光を浴びてきた。
こうした中、日本では2008年に「日本宇宙エレベーター協会」(翌年、一般社団法人宇宙エレベーター協会に移行)が発足。同年日本で最初の学会を開いた。学会と並び同協会が力を入れるのが、関連技術の蓄積を視野に入れたレース形式の競技会。「宇宙エレベーター技術競技会」(JSETEC)と名付けられた大会では、風船から吊るされたひもを宇宙へ届くエレベーターに見立て、取り付けた機械の昇降性能を競う。昨年は静岡県富士宮市で、高度600mで実施し、大学の研究室や個人が自作の機械でしのぎを削り合った。
大会では、参加者たちがそれぞれ自作の機械をベルトに装着。操作を始めると機械音を上げて上昇し、参加者たちは、あっという間に点のようになったクライマーを見上げ、宇宙への夢を託して歓声を上げた。昨年の大会は個人出場の女性が優勝、「思った以上の性能を見せてくれた」と笑顔を見せた。
競技は年々高度を上げ、8月1~5日に開く予定の今年の大会では1200mに拡大する。「年々高度を倍にしていくことに挑戦していて、いつかは宇宙に届くものを目指す」と語るのは、同協会の大野修一会長。競技と同時に、上空からの観測や通信の実験も行い、災害時の通信網確立など、応用技術の拡がりも期待されている。
同協会元副会長で日本大学理工学部の青木義男教授は「毎年貴重な実証データが得られている。技術以外にも様々な課題があるが、多くの技術や知識を集めて将来の実現に貢献したい」と話し、競技会を通じて技術向上と認知を高めようと意気込んでいる。(軌道エレベーター派 2012/7/29)
(軌道エレベーター派よりお知らせ) 間もなく始まる今年のJSETECのルポ原稿の執筆、無料で承ります。(1)まとめ記事の場合は、競技会終了後から出稿までに4~5日くらい必要(12字×50行程度までのストレートニュース記事の場合は即日出稿も可) (2)記事のどこかに執筆者の名を明記──であれば、当方売り出し中なので原稿料不要。撮影した写真とともに原稿を提供します。取材経験豊富です。お問い合わせは画面左のアドレスへお寄せください。ご連絡いただければ、過去の記事実績などもお送りします。