ホルモン屋徒然草~珍しホルブロだ

新米ホルモン屋の親爺の日々。ホルモンのこと、店の出来事、周辺の自然や話題。

今日の豚さんの調子は

2007-04-07 09:57:27 | ホルモン・肉
ここのところ、毎日数頭の豚内蔵を仕入れている。
セット納品であるから、洗いからすべて店でやる。
一般には、最近は焼肉屋さんでも、お肉屋さんに、洗いからカットまで、中には一人分ずつの小分けまで任せているところが多いと聴く。
一頭仕入は手間がかかる。結構、重労働だ。水も冷たい。低くかがみ込み、なかなかに重い内蔵を揉んだりあげたりしながら洗うのは、足腰に相当の負担がかかる。もちろん、洗う前の内蔵の匂いはきつく、手指につきなかなかとれない。

内臓一頭仕入は、鮮度維持、メニューの品質を守る事、原価を安くすることの前提となる。
しかし、もっとも大事なのは、お客様に提供するホルモンの「調子」を確認する事にある。
豚さんも一頭一頭、違うのである。
きれいで、白とピンクの混じり合ったつやつやした肌色、しとっと手にまじわりつく生き生きしさのある豚さんに出会うと、うれしい。
袋に入っているときから黄色く、へたっとした感じの豚さん。ゴミ(糞とか糞になる前の黒い粒ですね、時には藁も)が多く、全体が黄色かったり、特に腸に着いている脂が黄色く染まったりしている豚さん。いくら洗っても洗っても、色も匂いもとれない部分があります。しかたなく、捨てますけど。
血管が赤黒かったり、青黒かったりしたり、腸間膜が薄かったり、ポリープがあったり、腰がなくやわやわだったり、大丈夫かなと思う豚さんも。
レバーも、艶がなくどす黒かったり、身がさぱさぱだったり、異様に大きかったりする豚も。弾力の違いと、肌の輝きが判定所です。(レバーの場合は、大きいですけど、ばさっと捨てます。大きいだけ大きくて、弾力がなく、色浅く、細胞間の小さい隙間が多いレバー。ばっさり捨てます。ナミアムダブツと捨てます。捨てたくないんだ、本当は・・と捨てます。(豚さんが悪いんじゃないんです。たまたま、あなたのレバーが雑食動物の人間にあわなかっただけなのだ。))
ガツもね。黄色い液が付着したり、内容物が残っていたり、薄くぺらぺらだったりする豚さんもいますね。

要因は
1.豚さんの個性(種類とか、血統とか、たまたまとか)
2.豚さんの育てられ方(肥育環境とか、飼料とか、水とか、豚舎とか)
3.と畜(生体搬入の情況とか、と畜前のストレスとか、と畜の情況とか)
4.内蔵処理(処理環境・温度管理・時間管理とか、技術レベルとか)
5.他の何か
ですね。季節的にも豚さんの調子は違うようですし、もちろん冬場などのと畜頭数が多いときは処理も大変でしょうし。

しかし、やはり豚さんの飼育環境が多くを作用しているような気がします。
生産者側にとって「いい豚」とは、やはり生産コストが安い豚という事になりますね。
同じ飼料の量で、体重の増えかたが多い(増体率といいます)と、コストが下がりますよね。
病気をしないと、死んだりする率が低下し、歩留りコストが良くなりますね。
締まりがよく、肉色もよく、脂身も適度で、高く売れる豚がコンスタントに出荷されると、コストパフォーマンスが良くなりますね。生産農場の評価も高まりますし。なお、豚肉は基準により「上・中・並」に分けられ、大きい市場の平均価格によって仕入価格が決まります。品川や仙台などの屠場では、一頭ごとのセリで価格が決まります。
こんなあんなで、豚さんは安定的に高品質(高く売れる)に出荷できるように考えられて生産されるわけです。中でも、コストパフォーマンスを良くするのは増体率ですから、これにあう血統の開発と、飼料および飼料の与え方が大きな要素になります。
そして、これが結構な負担を豚さんに与える事になります。この負担が一番現れるのが、内蔵になるわけです。
屠場では検査員が(いわちくの場合は、紫波食肉検査所が)一頭一頭調べます。食肉の基準、内蔵の基準があって、基準外は廃棄、または一部廃棄(牛の場合は特にレバー廃棄が多いですね)になります。これで、食肉・内蔵の安全性が確認されるわけです。

という事で(私のうんちくはところどころ不正確であったり、説明不足があるかもしれません)、このような肥育環境で豚さんの内蔵には相当の負担がかかっているのではないかと、私、ホルモン屋主人としては気にかけているわけであります。

世の中の豚さん、全てが、健康で明るい生活を送り、いい内蔵を提供していただく事を切に願う次第であります。

PS:いい豚さんの内蔵は、洗いの時の肌触りで伝わってきます。やはり、洗わないと。
PS2:昨日の豚さんの二頭目。厚くて筋目のはっきりした極上の小腸の部分。おいしそうだったけど、黄色くて。網目に何回もこすってみたけど、だめ。捨てました、・・私のまかない用ボールに。

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