イーゴリ・ストラヴィンスキー:
・バレエ「結婚」
・ミサ曲
指揮:レナード・バーンスタイン
ソプラノ:アニー・モーリー
メゾ・ソプラノ:パトリシア・パーカー
テノール:ジョン・ミチンスン
バス:ポール・ハドソン
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ、クリスティアン・ツィマーマン、シプリアン・カツァリス、オメロ・フランセシュ
合唱:イギリス・バッハ・フェスティヴァル合唱団、三位一体教会少年合唱団
イギリス・バッハ・フェスティヴァル管弦楽団
ポリドール: F28G 50485
三大バレエ(火の鳥、ペトルーシュカ、春の祭典)が素晴らしすぎるストラヴィンスキーですが、「四つ目のバレエに何を選ぶか」と言われて私が推したいのがこの「結婚」です。四つ目どころか、手塚治虫がインスピレーションを受けた「火の鳥」より上に持ってきたいところです。この「結婚」は三大バレエ同様に原始主義的な音楽ですが、編曲に手こずって長い時間がかかってしまい、完成した時にはストラヴィンスキーは次の段階の新古典主義に進んでいたという微妙な位置づけの作品です。そのおかげで、声楽の他にピアノ4台と打楽器群という前例を見ない編成になりました。
「結婚」では全編を通して泥臭く野卑な歌声で占められていますが、伴奏のピアノと打楽器が鋭く明晰に切り込んでくるため、特定の地域や時代を特定しない賑やかな結婚披露パーティーの様子がイメージされます。それでいて美しく斬新な音の響きに満ちています。このような普遍性と音響構造の新奇性の両立は、原始主義時代や新古典主義時代を通して変わらずストラヴィンスキーが目指し続けた方向だったのでしょう。
土のにおいがするようなロシア語で歌われた「結婚」の一方、カップリングされた「ミサ曲」の方では神聖な響きのラテン語で歌われます。オーケストレーションも一切の無駄を省いた静謐な響きで統一されています。これも信仰心という普遍的な心のありように沿った普遍的な音楽です。実際に教会で演奏される事を想定して作曲されたとの事ですが、全く古臭い音楽になっていないのが驚異的です。
肉体の「結婚」と精神の「ミサ曲」、ちょっと聴くととても同一の作曲家が作ったものだとは思えません。しかしいずれも音楽の普遍性と新奇性を追求したもので、同じ地平に立っていると言えるでしょう。ストラヴィンスキーは常に音楽を客観的に眺め、音楽の様式を消化し自分のスタイルとして積み上げてきました。その作風の強靭さによって20世紀最大の作曲家と言われており、私が最も傾倒する作曲家でもあるのです。
イギリス王立のロイヤルバレエ団によるバレエの様子。無表情かつ機械的に踊る様が格好良過ぎです。音楽も泥臭さと現代性が両立しています。動画が変なとこで切れていますので注意。
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