記日きつい思れぐま気 from バンクーバー

2012年4月から妻の海外赴任に伴い主夫業と育児に励む30代男性の日常。バンクーバー関係ないことも多々あります。

乙武さん事件で思ったこと

2013-05-21 22:10:05 | Weblog
五体不満足などの著書で有名な乙武さん入店拒否事件論争が一部でえらいことになってます。詳細は下記まとめなどをお読みください。

乙武洋匡さん、銀座の「TRATTORIA GANZO」に「車椅子だから」と入店拒否される(追記あり)

事情はよく知らないけどまとめを読むのもめんどくさい人のために簡単にまとめると、

1)乙武さんがイタリアンレストランを予約し友人女性と訪れる
2)ところがそのレストランは車いす利用者は事前承諾が必要で(ホームページに明記)、乙武さんはしていなかった(のちに食べログで見ただけだったことが本人ブログより判明)
3)さらにレストランはエレベーターが使えない2階にあり、自力で入店することは困難
4)友人女性が入店の協力を店員にお願い
5)しばらく待った後店員が協力しようとしたところ、店長がそれを引き止め、2を理由に協力できないことを申し出る
6)そこをなんとか、とお願いするも冷たくあしらわれる
7)あまりの冷たい対応に怒りの乙武さん、Twitterにて店名を晒して非難
8)「障碍者差別!」「事前連絡しない乙武は何様」などの双方入り乱れた論争に発展
9)レストランが謝罪文をホームページに掲載、また乙武さんが自身のブログにて詳細な事情説明、事前連絡をしなかったことや店名晒しを詫び、事態の収束を図る ←いまここ

まあこの件についてはあちこちで色々書かれてるんで今更僕がえらそうに書くこともないんですが、バンクーバーにいるから見えることもあるかなと思いましてちょっと書いてみる次第です。

色々なところを眺めていて挙がっている意見としてはざっくり下記に大別される気がします。
乙武さん擁護派
・乙武さん本人のみ運べば済んだんだから周囲に協力を仰ぐなどして対応するべき
・車いすであることを理由に入店拒否するのは差別(実際は事前相談していれば可)
・断り方が悪い(店長の過去のツイートなどからも人格攻撃に発展)

お店擁護派
・車いすの人が事前に電話確認するのは常識
・運んでもらうことを頼むのは図々しい(運んで怪我させた場合の責任論も)
・店名を晒すのは本人の影響力から考えてもやり過ぎ
・有名人だからと図に乗っている

僕個人の意見としては、「お店が入店を断るのは仕方ないにしても断り方は良くなかった、だからといって乙武さんも店名を晒すのは大人げなかった」といったところでしょうか。まあ本件については双方謝ってシャンシャンになってるのでどっちが良い悪いというのは置いといていいのかな、と思ってます。

で、書きたいのはここから。
この件についての意見を色々と眺めていると「乙武さん側も配慮があってしかるべき」という意見が目立ちます。「車いすの人は特殊なんだから、それを前提に行動すればお互いスムーズに事が運ぶでしょ」ということです。お互いのことを慮る習慣がある日本人ならでは、という感じでありましてとても良い習慣ではあるんですが、この考えに基づくと「車いすの方は常に周囲に配慮を求められる」ことになります。迷惑をかけるんだから当たり前、というところでしょうか。でもこれって「障碍者であることを理由に配慮を求めている=障碍者差別である」という発想が欠けてるんじゃないかな、と思うんですよね。

このあたり、障碍者(を含む社会的弱者)に対する考え方がカナダやアメリカ(ヨーロッパは知らないけど多分似たようなもんだと思う)と比べると驚くほど違う(というか遅れてる)なと感じさせられます。となんだか知ったようなことを書きますが、僕自身バンクーバーに住むまで多分これらの意見とそんなに大差なかっただろうなと思うんですけどね。

カナダやアメリカの人達(少なくともバンクーバーの人達)は彼らを手助けするのは義務、と認識していますし、日常習慣としてそれが根付いています。だから車いすの人がバスに乗ろうとしたらみんな当たり前に手伝います。「誰か手伝ってくれる人いませんかー」なんてことは誰も言いません。当たり前だからです。

これは妊婦やベビーカーなどの子連れ、お年寄りに対しても同じです。みんなものすごく当たり前に席を譲ります。寝たふりをした人も気付かずにスマホをいじってる人もいません。全身タトゥーでピアスいっぱい開いてる怖そうなお兄さんも含め我先にという感じで席を譲るんです。(いくら当たり前といっても、もちろん譲ってもらった側はお礼を言いますよ。)

1年くらい前に日本で「満員電車におけるベビーカー論争」が起こっていましたが、これもこちらだったら論争になることすらありえないことだと思います。「なんでベビーカーの人は満員電車で遠慮をしないといけないの?」って疑問に思われることでしょう。別にそのお母さんだって好き好んで満員電車に乗ってるわけじゃないでしょうから、何人かが降りて乗れるスペースを空けてあげればいいだけの話です。東京なんて次から次にバンバン電車が来るわけですから、降りたところで到着時間に大差はないでしょう。まあ、こっちの人達の場合、それで遅刻したところで「仕方ないじゃん」という開き直りとそれを許容する余裕(ルーズさとも言う)も相まって行われている可能性は大でありますが。少なくとも自分がそういう場面に居合わせたら降りて次を待つ(あるいは隣の車両に乗り換える)くらいの余裕を持ちたいところです。

日本という国は街はキレイだし食べ物は美味しいしサービスも良くてすごく暮らしやすい素晴らしい国だと思うけど、それは健常者としての視点であって、そうでない人達からすると案外暮らしよくない国なのかなあと思ってしまいました。今回の議論をきっかけにもっと社会的弱者に対するスタンスが改められて日本がもっと住み良い国になったら嬉しいな、となんか綺麗事を書いて本エントリーのまとめといたします。

おまけ)
本件に関する意見で個人的に興味深かったもの
@tyk97さん連続Tweet:乙武さん入店拒否の件から考察する「グローバルいんちき」というプロトコル
車椅子ユーザーあゆさんの『車椅子での入店拒否について』

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2013-05-23 23:44:50
イギリスで車椅子に乗ってる人の意見

車いす団体ホイール・パワーのマーティン・マクエルハトンさんは
「子供たちが車いすの人たちと同じ場所でスポーツを楽しめるようにしています。何の垣根も存在しない心のバリアフリーが子供のころから自然に育まれるようにという願いを込めています」と話してくれた。

「ディスエーブルの人は助けを必要とするときがありますが、それは健常者でも同じでしょう」というマクエルハトンさんに、今回のレストラン入店拒否事件について電話で尋ねてみた。

「状況が詳細にわからないのではっきりしたことは言えないが」と前置きした上で、マクエルハトンさんは「障害者が利用できるようにビルが設計されておらず、介助の訓練を受けたスタッフがいない場合、車いすの障害者への対応は極めて難しいでしょう」と指摘する。

「ロンドンでも古いビルや小さなビルは障害者用のアクセスが確保されているわけではありません。事情は東京でも同じでしょう。
私がロンドンに行く場合、事前にスロープや障害者用トイレの有無を調べて、アクセスが十分に確保されていなければ別のレストランを予約するようにしています」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20130521-00025090/
So what? (おがた)
2013-05-24 02:47:25

僕もこの記事は読みました。
貼った方がなにをおっしゃりたいのかわかりませんが、
「ほら、お前が進んでると言うイギリスだって車いすの人は自分で調べたりしてレストランを選んでいるじゃないか」
ということなら、それはこの人が自分のためにしていることで、健常者がそれを求めることではないでしょ、というのが僕の意見です。

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