Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

近藤史恵「サクリファイス」再読(ネタバレあり)

2013-02-07 01:02:32 | 読書感想文(国内ミステリー)

近藤史恵の「エデン」を読んだら、歳のせいか前作の「サクリファイス」がどんな話だったかあまり思い出せなかったので
読み返しました。

高校時代は陸上選手として名を馳せ、オリンピックも夢じゃないと言われた白石誓は、23歳の今、陸上をやめ
日本の自転車ロードレースチーム“チーム・オッジ”の一員になっていた。彼が陸上をやめたのは、何のために
勝つのかわからなくなったから。チームのエースである石尾豪のために、アシストとして走る誓。しかし、3年前に
起きたある事故の話がきっかけで、誓は勝つために手段を選ばない石尾を怖れるようになり…。


※ここから先はネタバレがあるのでご注意ください。






タイトルの「サクリファイス」が意味するものや、石尾が死んだ理由とその原因を作ったのが誰なのかは
覚えていたんですが、細かいところは結構忘れていたので、「ああ、こんなエピソードあったなぁ」とか思いながら
おさらいしつつ楽しんで読むことができました。一粒で2度おいしい、お得な私の記憶力。きっと、何年かして
また読み返したときも、「ああ、こんなエピ(以下略)」って思うことでしょう。

で、読み返して最初に思ったこと。

香乃がうぜぇ。

なんというか、高校時代に誓を振った理由とかベルギーで誓に会った時のものすごい興奮ぶりとか、ドン引きなんですけど。
惚れてしまえばアバタもなんとかなのか、誓には香乃が感受性の鋭い神秘的な女性みたいに見えてたみたいですが、私には
思い込みが激しくてひとりよがりな女にしか見えませんでした。やっかみ入ってるのは自分でもわかってますけどね。
多分、近藤史恵さんも狙って香乃のキャラクターを作ってると思います。というか、香乃が同性として共感できる人物として
描かれてたら、何も知らずに袴田を選ぶ香乃が哀れに思えて後味悪いです。なので、こういうキャラでよかったです。
そう思うことにしてます。でも、もし袴田が石尾を死なせたという罪の重さに耐えかねて、香乃にすべてを話してしまったら?
そのとき彼女がどんな行動をとるのか…知りたいような、どうでもいいような。
“世の中には知らないほうがいいこともある”って言うのは、こういうことなんでしょうかねぇ。

「エデン」と「サクリファイス」を続けて読んで思ったのは、チカこと白石誓はどちらの小説でも主人公ではあるけれども、
物語の中心にはいないんですね。その役割を担うのは、「サクリファイス」では石尾、「エデン」ではミッコとニコラと
いった、それぞれのチームのエースでした。チカの役割は、アドバイスしたり唯一の味方になったりして、彼らが物語を
動かす手助けをすること。チームのメンバーとしてだけでなく、小説の登場人物としても、チカはアシスト役にまわって
いました。最初に読んでから何年も経った今になって言うことじゃないですが、上手いなぁ、と思います。

あと、ストーリーとは直接関係ないけど、「サクリファイス」を読むとヌテラ(欧米で人気のチョコレートスプレッド)が
猛烈に食べたくなります。逆にスーパーとかでヌテラを見ると「あ、『サクリファイス』に出てきたやつだ」と思い出します。
ストーリーの詳細は忘れても、これだけは忘れたことがありません。さすが私の記憶力。

コメントを投稿