Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

映画「クレイジー・リッチ!」

2020-06-10 23:12:28 | 映画

先週末、久しぶりに高松のシネコンで映画を見ました。
ソーシャルディスタンスを保つため、客席はひとつずつ空けて座るようになってましたが、私が見た映画「クレイジー・リッチ!」は私以外観客がおらず、周りを気にせずに見ることが出来ました。めでたしめでたし…っておい!それでいいのか!大丈夫かイオンシネマ高松東!次の週末から新作映画がぽつぽつ公開されるとはいえ、いろいろ心配です。ここがなくなったら全国ロードショー系の映画を見る機会が減ってしまう…。

はい、心配事はとりあえず置いておいて、映画の感想です。


ニューヨーク大学で経済学の教授をつとめるレイチェル・チュウは、恋人のニック・ヤンから彼の友人の結婚式にさそわれ、ニックの故郷シンガポールに行くことになる。ニックの家族に会うことで結婚を意識したレイチェルだったが、往きの飛行機がファーストクラスだったことから、もしかしたらニックは御曹司なのではと不安になる。そしてシンガポール在住の友人ペク・リンから彼の実家ヤン家は桁外れの富豪であると知り、レイチェルはニックを狙う女性たちから羨望と嫉妬の目で見られることになり…


なんか、自分で書いたあらすじ読んだら、ふた昔くらい前の少女漫画みたいですね。実際はもっと現代的でパンチも効いてるんですが。

映画の冒頭、「中国が目覚める時、世界は震撼する― ナポレオン・ボナパルト」ってテロップが出るんですが、2018年に最初に見た時はなんとも思わなかったけど、2020年の今これを読むとちょっとぞわっとしますね。今の場合「目覚める時」というより「くしゃみをする時」とかのほうが合ってるかな?不穏すぎるか。

ニックの実家は不動産で財を成したらしく、とにかくもう王族かとつっこみたくなるほどお金持ちなんですが、ニックの友人たちの家もお金持ちです。ニックの家ほどじゃないにしても。そしてニックを狙う女の子たちも。映画の中では詳しく出てこなかったですが、そういうセレブリティの華僑が集う社交界みたいなのがあるんでしょうかね。ありそうですね。ニックの周りでまともな女性は、従姉妹で自立した女性のアストリッドくらいでした。彼女は彼女で、元軍人の夫マイケルとの格差婚の生活がぎくしゃくしていて悩んでましたが、セレブで美人で自立していて、非の打ちどころのないアストリッドと暮らすのはしんどいかもなぁと庶民の私は思ってしまいました。だからと言ってマイケルが浮気したのはあかんと思いますけど。

ちなみに、ニックの友人コリンの婚約者アラミンタを演じていたのは、日系イギリス人のソノヤ・ミズノさんでした。この映画はアメリカ製作だけど主要キャストがすべてアジア系俳優で、公開前の宣伝では画期的と言われてましたが、中国系ではない俳優が出てるのはおかしいとかなんとか、批判もあったそうです。難しいですね。映画自体、大陸の価値観に固執する華僑のセレブリティVS見た目はアジアン中身はアメリカンの中国系アメリカ人というストーリーなのに、現実もそれに倣っちゃったというか。実際、中国の富裕層の中には、中国系アメリカ人を同朋と見做さない向きもあるようですし。国境や国籍や人種にとらわれず、手を取りあわなければいけないコロナ禍の今見ると、この小競り合いは滑稽にも思えますが。

さて、映画の中ではライバルのセレブ女性やニックの実家のおばさまたちから意地悪されるレイチェルですが、経済学の教授としての知性と機転を活かし、ペク・リンの助けもあってピンチを切り抜けます。一番の難敵だったニックの母エレノアともいろいろあって和解し、最後はニックとハッピーエンド…ってちょっと待ておーい!

女同士ばかりでバチバチやりあって、男は何をしとるんじゃーい!
ニックの父親なんて、存命なのに一度も出てこずに終わってしまったやないかーい!
てかニックよ、母親があそこまでこじらせてしまってるのになんでそんなにそっけないんじゃーい!

…などなど、1回目見た時はスルーしていたことが、2回目だといろいろ気になりました。そりゃ、ニックにもいいところがいっぱいあることはわかってるんですけどね。傷心のレイチェルのために、レイチェルのお母さんをニューヨークから呼び寄せたりとかね。続編が製作されるという噂もあるので、モヤモヤしたところは続編で解決する気なのかもしれません。それか、「そんなに気になるなら原作を読め」ってことなのかしら。レイチェルとニックがその後どうやって関係を続けるのか、予想もつかないまま終わっちゃったし(まあニューヨークに帰るんでしょうけど)。

あと、1回目はスルーしたけど2回目で気になったのは、知性の有無がそのままキャラクターの善悪になっていたところ。知性と教養は大事だけど、賢いか賢くないかで人をジャッジするのは、一見正しそうだけどやり過ぎはよくないよなと思うようになったので。レイチェルに嫌がらせをした女たちに対して、アストリッドがとりあえずは寛容だったように、激昂しても怒鳴る前に一度深呼吸する必要があるのかなと。まあ深呼吸してる間に攻撃されないように、防御も必要ですけど。

映画の冒頭で、レイチェルがニックと一緒にいるところをニックの知人に盗撮され、SNSで拡散されて特定されてしまうくだりは、1回目見た時はこの描写の意味がよくわからなくて、「華僑ネットワークすごい」くらいの感想だったのですが、2回目はその後の展開を知った上で見てるので、レイチェルを1人の人間として見ていない、彼らの無神経さにゾッとしました。やっぱSNSって怖いわー。自分も使ってるけど怖いわー。

レイチェルとニック以外で、主要な登場人物だったペク・リンを演じたのは、俳優兼ラッパーのオークワフィナ。2019年の主演映画「フェアウェル」でゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞しています。ペク・リンはニックの住む世界とレイチェルの住む世界の両方を知り、レイチェルをサポートする魅力的なキャラクターです。彼女だけでなく、ペク・リンの家族も、イラッとするところは多々ある(特にお父さん)ものの、チャーミングで憎めない人たちなので、ペク・リンの家族をメインにスピンオフを作って欲しいくらいです。

ゴージャスなセレブの結婚式とパーティ、シンガポールの観光プロモーションみたいな風景がこれでもかと出てくる映像を見ているだけでも楽しかったです。また行きたいなと思うくらい。行ったところで、映画みたいに豪遊することは金銭的にも公衆衛生的にも無理だけどな!はっ!

先週末のシネコンは再上映が目立ちましたが、これから新作も公開されるので楽しみではあります。このまま順調に新作が続々公開されるといいのですが…。