Flour of Life

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海堂尊「ブラックペアン 1988」「ブレイズメス 1990」「スリジエセンター 1991」まとめ感想

2018-04-21 11:50:22 | 読書感想文(国内ミステリー)



4月期のTBS新ドラマ「ブラックペアン」が始まるのを前に、予習のつもりでこの「ブラックペアン」シリーズ3部作を買って読みました。
海堂尊さんの小説は「チームバチスタの栄光」とか数冊読んではいるのですが、コンプリートはしていません。これから感想を書こうというのになんですが、正直、海堂さんの文章のクセが私には合わないみたいで…登場人物に二つ名をやたらつけるところとか(ファンの方すみません)。

3部作のあらすじを簡単に説明すると、

東城大医学部付属病院の研修医・世良雅志が天才外科医に出会ったり学内の権力闘争とかに巻き込まれつつ、いろいろあって成長する話

です。“いろいろあって”って乱暴すぎるだろと自分でも思いますが、この3部作の中で起きるイベントはどれも“いろいろ”以外で表現しづらいものですから。どのイベントも主人公=物語の中心人物よりに描かれてなくて、どこか客観的で素っ気なさすら感じるほどでした。この物語が過去の話であるという前提で語られているからでしょうか。あと、桜宮市を舞台にした他の海堂作品を読まずにこの3部作を読むと、損した気になることは間違いないです。他の作品の登場人物たちがばんばん出てくるので、読みながら「あ、この人がこんなところに!」と驚くことが何度もありました。逆に、3部作を読み終えて物足りないと思った人が、他の作品を読んで満足するというのはあるだろうけど。でもそれもちょっと癪だよねぇ。

タイトルに西暦が入っているのを見ればわかる通り、この3部作は1988年から1991年、バブル景気の終焉前後が舞台になっています。ちょうどいま放送中の朝ドラ「半分、青い」と一緒ですね。ドラマもそうなのかなと思って公式サイトを覗いたら、内野さんがタブレット端末を持っている画像があったので、どうやら現代みたいですね。うーん。海堂さんは映像化に当たって換骨奪胎するのを拒まない人なんでしょうかね。なんせ小説ではこの3部作の主人公は研修医の世良雅志なのに、ドラマでは天才外科医の渡海征司郎になってるくらいだし…。

渡海は1作目の「ブラックペアン」では重要人物ですが、2作目以降では名前が少し出てくるだけで本人は登場しません。2作目以降、主人公世良が行動を共にするのは、モナコの天才外科医、天城雪彦です。天才外科医で強運のギャンブラーで容姿端麗という、「もうちょっと加減してやれよ」と突っ込みたくなるほどハイスペックすぎる世良は渡海に続いて天城にも振り回されるのですが、頭の中で、世良はドラマで彼を演じる竹内涼真で想像しているので、なんというかこう…世良と天城の2人の場面は読んでて「イケメンとイケメンがいちゃいちゃしている図」を想像してしまい、新手の薄い本を読んでいるような錯覚を起こしました。はたしてこれでいいのでしょうか、私。

話を「ブラックペアン」に戻すと、この小説は3部作のプロローグ的な印象が強くて、これ1冊だけでドラマ化して1クール持つんだろうかと疑問に思いました。いろいろ改変して1クール分のストーリーにするのでしょうが、正直不安です。天城雪彦を誰が演じるか、今のところ話題になってないことからして、「ブレイズメス」と「スリジエセンター」についてはドラマで触れないのだろうし。でも「ブラックペアン」だけ映像化というのも考えにくいから、天城雪彦が登場するのは続編のドラマか、あるいは映画なのかな。天城を誰が演じるのか気になりますが、海堂作品はTBSとフジテレビでいくつも映像化されてて、天城に合いそうな俳優さんは他の役で出演済なので、適任者が思いつきません。長身でハンサムでハッタリが効く人といえば、ハセヒロか斎藤工、あるいは藤原竜也か、ちょっと無理してディーン・フジオカかな?しかしなぜか小説を読みながら私が想像した天城は、滝藤賢一の姿をしていたのだった…。というか、滝藤賢一に海藤作品に出てほしいだけなんだけど。

「ブレイズメス」と「スリジエセンター」は、佐伯教授と天城雪彦の、それぞれが目指す医療の改革がメインテーマなのですが、それが意外な形で幕を下ろすのには驚いたのと同時に「そりゃそうだわな」という諦めの気持ちをこめたため息がもれました。だってこの物語は過去の話で、その後の世界を舞台にした小説は既に書かれているのですから。桜宮市を舞台にした海堂作品がすべて繋がっている限り、結末ははっきりしています。海堂さんが書きたかったのは野望が達成されたあかつきに医療がどう変わるかではなく、野望を果たさんと目論む人たちの叫びと熱意だったのでしょう。

ドラマでは小泉孝太郎が演じる高階講師は、帝華大から東城大にやってきたいわば外様で、渡海にしろ天城にしろ佐伯教授にしろ、神の手を持つ天才外科医たちとことどとく対立する役割です。そんな彼が単なる悪役ではなく、真剣に医療の未来を考え、行動する優秀な医師として描かれていたのはとても良かったです。ドラマで悪役っぽく脚色されないことを祈ります。

3部作の中で、恋愛要素として世良と看護師(当時は看護婦呼び)の花房が出会ってデートしていちゃいちゃして、というのが一応ありましたが、正直言ってこの部分だけ浮いてました。世良が渡海とか天城といった天才外科医たちに惹かれる描写はしっかりしてるのに、なぜここはこんなに適当なの?と不思議に思うほど。まあ、だからこそあの結末なのかーとも思いますが。でも、世良と花房がその後どうなるのか気になるので、2人が登場する他の海堂作品を読むしかないのかなと考え中です。うう、作者の術策にはまってるみたいでくやしい…。

3部作を読み終えた結果、桜宮市を舞台にした海堂さんの作品群の、壮大なプロローグを読んだような印象が残ったのですが、他の作品も読んで補完すれば、感想がまた違ってくるんでしょうかね。そこまでのめりこめるほどの引力を感じてないので、それも実現しがたいのですが。図書館が近くにないのがつらい…。

とりあえず、一応予習はしたので、明日からのドラマが楽しみです!以上!


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