NOSUMOOの犬死日記

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第585話 お父さんも一緒♪(ブンバ・ボーン編)6

2014年05月29日 22時43分14秒 | 童話検証
世の中には不思議がある。

僕ら大人は、いろんな人生経験を経て、いろんな知識を得て、
いつの間にか、不思議からだんだんと遠ざかっている。

知っているようで知らないくせに、
あたかも知っているというふうに日常を過ごす。



だって、私たちって大人だもの。
大人は何でも知っている。



そんな幻想にとりつかれた僕らの決まり文句は、



「そういうことになっている」



なのだ。
こんな気持ちでは、ブンバ・ボーンも違って見えるはずだ。



この間、家に帰ると、リビングに敷かれた真っ白なシートがあった。
シートの周りにはたくさんのかわいらしい動物や昆虫、それに植物がプリントされている。

お絵描きシートなるもので、インクが不要の水で描けるすぐれものだ。

我が子は、まだ1歳とそこらで、ペンこそ握れど、
まだ絵を描くには少しだけ早い。

そこで、僕がちょいちょいと絵を描く。



「ほら、ドラえもんだ」
「よし、アンパンマン」



喜ぶ我が子をよそに、僕はふと気になるものを見つけ、妻を呼ぶ。



僕「大変だ。この絵、少し間違っている」
妻「えっ、どこが?」
僕「このアリだよ」
妻「アリがどうしたの?」
僕「アリは昆虫だから、足は胸から出ていなきゃだめじゃないの?」



この後、妻があきれ返ったことは言うまでもない。
確かに、こうした線引きは大変大事なのだ。



いつだったか、保育園児が

「先生、動物はしゃべらないんだよ」

と、現実的なことを言った。

それに対して、先生が

「あなた、もっと子どもらしくしなさいよ」

と、注意を促す。



子どもに正しい知識を身につけさせることも大切だが、
豊かな想像力を育ませることも同様に大事なのだ。

テレビの世界では、犬や猫が当たり前のように会話をする。
それを見て、犬や猫は言語を持たないと現実論を振りかざす一方で、
どこかにはしゃべる犬や猫がいるかもしれぬと想像を膨らませてやることも大切だ。



それでは、このブンバ・ボーンは一体どうなのだ?



これまでお話ししたとおり、
現実的には全くあり得ぬ支離滅裂の世界観だ。

大音量に耳をそばだて、
この世界には存在しない新種のパンダが宙を舞い、
音速を超えた超特急列車が滑走する。

アルパカは時を超えてオカピに、
ミーアキャットはフラミンゴへと変化する。



僕ら大人には理解不能な世界であり、
こんなばかげたものが一体どこに存在するのだと首をかしげる。



「さあ、見つけに行こう僕らの宝物 この地球のどこかにきっとあるはずさ」



世界は広い。

地球儀を買ってもらい、世界の中では日本がこんなに小さいと知ったときの衝撃。
近所の公園のベンチから見るあのビルの向こうにどんな世界が広がっているかと空想した日々。

あのころの僕らはまだ小さくて、
体一つで行けるところが自分の世界だったのだ。

たとえ文明が進化して、簡単に遠くへ行ける時代になっても、
幼い我が子には、多くの夢と希望がその向こうに隠されている。



ブンバ・ボーンって走っていこう
ブンバ・ボーンって元気に行こう
ブンバ・ボーンって空に歌えば
心がわくわくしてくるよ



ブンバ・ボーンという存在は、
結局、僕ら大人にはわからないものなのだろう。
それは、いつかのあの日に置いてきた子ども心のせいなのかもしれない。



「お父さん、ブンバ・ボーンなんだよ」



我が子がいつかこう言ったら、僕はそうだねと言ってあげよう。



「お父さん、ブンバ・ボーンって何なの?」



我が子がいつかこう言ったら、僕もわからないから一緒に考えようと言ってあげよう。



ブンバ・ボーンが支離滅裂なのは、
きっと僕ら大人への投げかけなのかもしれぬ。
そう思えば、僕はまたあしたから違った目でこの歌を歌えるはずだ。






  ……あの、そろそろいいですかね?



えっ、何でしょか。



  ちょっと、イメージしてた最後と違うんですけど。
  何、感動的に終わらそうとしてんですかね、そういうの間に合ってるんですよね。
  大体、ここのページって、そうじゃないでしょ?



うむ。まあ、確かにそのとおりだ。

しかしだ、
皆さんもお気づきのとおり、大したオチがなくてさ……。



  ここまで引っ張って、そんなことあるかいっ!!



はあ。
いいじゃないか、たまにはこういう締め方をしてもさ。



だめですかね?



じゃ、強いて言うならさ、



ちょっととまってみたり
ゆっくり歩いてみたり
急いで走ってみたり
もう一度とまってみたり



のフレーズが速過ぎて、
子どもらは何をやっていいのかわからなくなっているってのはどう?



  ……はいはい。



じゃあさ、



トンネルのぞいてみたり



「のぞく」とは、狭いところに目を凝らすわけで、
そのトンネルどれだけ小さいのよっ!とかは?



  ……。



じゃあじゃあ、
ブンバボンボンボって……



ワーオ。

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