のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『ブロークバック・マウンテン』2

2006-04-07 | 映画
3/30の続きでございます。

「カウボーイ同士の同性愛を描いた」というフレーズで紹介されることの多い本作。
しかしこの映画をご覧になった方は、この文句に何か納得ゆかぬ思いを抱かれるのではないでしょうか。
「カウボーイ」「同性愛」というシチュエーションは、 困難な愛 を表現するための舞台装置にすぎません。
描かれているのは、「愛し合っているのに許されない、許されないけれども愛さずにいられない」
という、古典的にして普遍的なテーマです。

*以下、若干のストーリー紹介と私見を述べさせていただきます。ネタバレにならぬよう心がけてはおりますが、先入観無しで観に行かれたい方は、お読みにならない方がよろしうございましょう。*


イニス・デルマーとジャック・ツイスト。
20歳の2人は、山で羊の放牧をする季節労働者として雇われ
緑したたるブロークバック・マウンテンの山麓で、ひと夏を過ごします。
我慢強く、ひたすら寡黙で、愛想のかけらも無いイニス。
不平をたれ、軽口を叩き、へたくそなハーモニカを吹き鳴らす、子供っぽいジャック。
全く正反対に見える2人はしかし、共に心の内に 深い孤独 を抱えていました。
孤独な2人は次第に心を通わせ、愛し合うようになります。それから20年に渡ってーーーいや、永遠にーーー変わることのない愛で。

そう、20年に渡るお話なのです。
その間に彼らの生活も変わり、周りの人たちとの関係もまた変わって行きます。
それぞれ結婚して家庭を持ち、生活や事業に追われ、つまるところ、仕事と家庭に縛られて行く2人。
以前のように身軽ではいられず、かといって(ああ よくある悲劇ではございませんか、)孤独感や疎外感から逃れられもしない。

2人は、まだ自由だった頃に過ごした、あのブロークバック・マウンテンの峰々に 想いを馳せます。
そして唯一、心底から孤独を分かち合えた人、一夏きりの友であり恋人であった互いの存在を 想います。

ブロークバック・マウンテン。
きつい仕事、ボロいテント、ケチで横柄な雇い主。食事といえば、カンヅメの豆ばかり。
それでも。
何の気兼ねもなく、子供のようにふざけあい、たき火のそばでウイスキーを回し飲みしながら、胸の内を語り合えた日々。
厳しくも美しいあの峰々は、2人の 楽園 だったのです。

それぞれ家庭を持ってからも、2人は「失われた楽園」を求めて逢瀬を重ねますが
人目を忍んで会わねばならないことに、ジャックは苛立ちをつのらせます。
「俺たちにはブロークバック・マウンテンの思い出しか無いじゃないか!」

現実的なイニスは(少年時代のトラウマも手伝って)2人の関係をひた隠しにして生きるしかない、と考えます。
夢見がちなジャックは、イニスと2人で牧場を持ち、一緒に暮らすことを切望します。

非日常の楽園、青春の残滓、ブロークバック・マウンテン。
隠れ処のようなこの山だけではなく、現実の世界/社会の中で2人が一緒にいられる場所が、ジャックは欲しかったのでしょう。
しかし、時代も、場所も、ジャックの切実な願いを、そしてイニスの押し殺した想いを、認めはしなかったのです。

はい、これ以上語ったら 浜村淳 でございます。

どうも主人公の2人のことばかり語ってしまいましたが
他の登場人物や人間関係の描き方も、大変説得力がありました。
セリフはかなり少ないにもかかわらず、登場人物たちの微妙な感情は、見る側に明確に伝わって参ります。
全体としては決して「暗い・重い」という印象ではなく、むしろ非常に美しく
所々微笑ましく、ユーモラスでさえありながらも、見ごたえのある作品となっておりますのは
演出の妙でもあり、監督の職人技でもあり、また俳優陣の素晴らしい演技ゆえ でもありましょう。
主演の2人はまあー 本当に大変だった ということでございますが。

長くなりましたので、一旦切ります。続きはまた明日。





また 腕っぷし強そうなんですよ、ヒース・レジャー(イニス)が。
山中の乗馬姿がやけにサマになっているなあと思ったら、実際かなりのアウトドア派で乗馬も好きなのだそうです。
殴られたら痛いだろうなあ。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは! (ゆう)
2006-04-08 14:46:22
はじめましてです~

「ブロークバック~」私も観ました!観た後は切ないような温かい余韻が残りましたよ・・。

イラストおもしろいですね

また遊びに来さしてもらいます
とろろ (まり)
2006-04-08 19:12:37
芸能人のヒミツ教えちゃいます♪

いらっさいませ。 (のろ)
2006-04-09 00:08:33
ゆう様、はじめまして。

『ブロークバック~』、本当に切ない作品でございましたね。エンドロールに流れる『He was a friend of mine』を聴きながら、のろは涙と鼻水がバァバァ流れて止まりませんでしたとも。

ややコアな話題も多うございますが、よろしかったらまた遊びに来てやってくださいまし。

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