おっさんノングラータ

魚は頭から腐るらしいよ。( 'ω`)

魔法にかけられて(★★★★★)

2008年03月10日 | 映画2008
むしろディズニー嫌いの人に
IMDb(7.9:投稿時)
goo映画/字幕版(90点:投稿時)
goo映画/吹替版(95点:投稿時)

今年最初の個人的五つ星作品。ディズニー・アニメはタダでも観ない主義のおっさんだが、『ニューズウィーク』誌で取り上げられた昨年末から本作が気になって仕方がなかった。

ディズニーによるセルフ・パロディではあるが、単にそれだけにとどまらず、むしろディズニー嫌いの人を喜ばせる内容。ではあるが、おとぎの国と現実の対比で笑いを取るだけではなく、きちんとディズニーのフォーマットで話をまとめている。しかもそれを押しつけではなく、さらりと描いているのが巧い。

以下、多少のネタバレを交えつつ見所などを。

●映画が始まるや、ディズニーのシンボル・マークであるシンデレラ城のシルエットが実体を帯び、そのままシームレスで物語が始まる。この「掴み」は気に入った。

●まずはアニメの世界でジゼル(エイミー・アダムス)とエドワード王子(ジェームズ・マースデン)の出会いからプロポーズまでが描かれるが、これが狙ってやっているとしか思えないベタベタな展開。退屈しのぎのトロル狩りは、『シュレック』への当てつけ

●王位を渡すまいとする継母のナレッサ女王(スーザン・サランドン)の計略で、ジゼルは「永遠の愛など存在しない国」ニュー・ヨークへ飛ばされる。ここからの実写パートは、ディズニー・アニメにおけるイノセントなキャラクターが現実の世界で引き起こすあれやこれやが普通に楽しい。野生の動物を歌声で集めて部屋の掃除をするが、集まってくるのはドブネズミや片脚を失った鳩、それにイニシャルGだったり。

●そのジゼルを保護したのが、弁護士のロバート(パトリック・デンプシー)。妻に逃げられた後、男手一つで娘(レイチェル・コヴィー)を育てているが、5年間もつき合ってきたナンシー(サマンサ・アイヴァーズ)とそろそろ再婚しようと考えている。また仕事では、離婚調停の真っ最中だった。まさに「永遠の愛など存在しない国」を体現する男である。その彼がジゼルと出会うことで、おとぎの世界と現実世界との対比で笑わせ、その両者の住人が持つ愛に対する価値観の衝突で考えさせる、二重構造の物語が展開するのだ。

●で、この「衝突」に勝敗をつけるとすればドローで、けれどディズニーが余裕で勝利。懐の深さを見せられる思いで、だからと言ってディズニー好きに転向するわけではないけれど、それはそれで笑って許容されそうで、ディズニー嫌いの俺、完全敗北な気分なのです。盲目的にディズニーを毛嫌いしている人こそ、この嬉し悔しい思いを味わえるだろう。

●期せずして二人は「デート」することになるが、セントラル・パークのミュージカル・シーン(ディズニー嫌いのおっさんにもわかるアレのパロディ)は素晴らしい。

現代でも魔法が使えるシーンは笑えるが、あれは高額所得者だからマジック・ポイントが高いのであって、そうでない人は無闇に魔法を使うべきではない。

●ジゼルを追っておとぎの国からやってきたリスも、笑わせてくれる。フルCGアニメ映画は観ない主義だったが、考えを改めよう。このリスもリアライズされるに当たって人語を話せなくなっており、ばかりか脱糞してしまう。

●スーザン・サランドンの「悪い女王」ぶりは実に堂に入っており、『イーストウィックの魔女たち』を思い出した。20年も前の映画ですよ。スーザン・サランドン、シェール、ミシェル・ファイファーが魔女を演じ、ジャック・ニコルソンと対峙するという、もの凄いキャスティング。

●ばたばたと多くの伏線を畳んでいく怒涛のエンディング。誰もが予想する結末ではあるが、誰もが納得できるもの。ご馳走様でした。

時間の関係で日本語吹き替え版を鑑賞したが、話題作につきものの下手糞な芸能人が声優を務める、などということはなく安心して観られた。歌詞を含めて翻訳も自然であり、実に満足のいく仕上がりだった。


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