近所のTSUTAYAで購入。
『坂の上の雲』以来、乃木希典=無能な軍人という評価が定着してしまった。と言うよりも、それ以外の評価基準が認められなくなった。いやいや、それは後知恵の基準で測るからそうなのであろうなあ。
もちろん、乃木=無能というレッテルは当時から貼られており、映画『二百三高地』でえらく印象に残っているのだが、自宅に投石もあった。が、これも投石に至る当時の社会的背景を知らないと理解しにくいこと。その辺り、著者の福田和也はわかりやすく書いてくれている。社会保障の体制が整備されていない当時、働き手を戦争で失うということは、その一家の死活問題であったのだ。なるほど。
当時先端の技術を盛り込んで防備を固めた旅順要塞=列強の象徴とすると、資源も何も持たない日本が肉弾戦でこれに挑んだというのは、何とも感慨深いものではある。旅順要塞への正面突撃は非難されるところだが、あの洗礼を受けなければ近代国家の仲間入りができなかったのかもしれない。
クリミア戦争におけるセヴァストポリ要塞攻撃に比して損害が決して多くはなかった、また第一次大戦以降の主立った攻城戦でも、結局は肉弾戦に持ち込まなければ要塞を攻略できなかったと、解説(兵藤二十八)を読んでその思いを強くした。
福田が描く乃木のような人間は、今の日本に存在しないかもしれない。が、だからこそ、乃木希典の再評価は意味のあることだと言える。懸念するのは、NHKがつくる『坂の上の雲』。司馬史観に準じるのだろうか。
『坂の上の雲』以来、乃木希典=無能な軍人という評価が定着してしまった。と言うよりも、それ以外の評価基準が認められなくなった。いやいや、それは後知恵の基準で測るからそうなのであろうなあ。
もちろん、乃木=無能というレッテルは当時から貼られており、映画『二百三高地』でえらく印象に残っているのだが、自宅に投石もあった。が、これも投石に至る当時の社会的背景を知らないと理解しにくいこと。その辺り、著者の福田和也はわかりやすく書いてくれている。社会保障の体制が整備されていない当時、働き手を戦争で失うということは、その一家の死活問題であったのだ。なるほど。
当時先端の技術を盛り込んで防備を固めた旅順要塞=列強の象徴とすると、資源も何も持たない日本が肉弾戦でこれに挑んだというのは、何とも感慨深いものではある。旅順要塞への正面突撃は非難されるところだが、あの洗礼を受けなければ近代国家の仲間入りができなかったのかもしれない。
クリミア戦争におけるセヴァストポリ要塞攻撃に比して損害が決して多くはなかった、また第一次大戦以降の主立った攻城戦でも、結局は肉弾戦に持ち込まなければ要塞を攻略できなかったと、解説(兵藤二十八)を読んでその思いを強くした。
福田が描く乃木のような人間は、今の日本に存在しないかもしれない。が、だからこそ、乃木希典の再評価は意味のあることだと言える。懸念するのは、NHKがつくる『坂の上の雲』。司馬史観に準じるのだろうか。