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落花 情 あれども 流水 意 無し

観能記録など。備忘録として。

萬狂言新春特別公演 ~野村萬米寿記念~

2018年01月08日 | 能公演

2018年1月8日(月祝)14時  国立能楽堂

「三番叟 式一番之伝」 太夫 野村萬  千歳 野村万之丞
 笛・松田弘之  小鼓・大倉源次郎、鵜澤洋太郎、田邊恭資  大鼓・亀井広忠

ご挨拶  野村万蔵

語「元日の語」 野村拳之介 野村眞之介

狂言「蝸牛 替之型」 野村又三郎 野村信朗 奥津健一郎

新作狂言「信長占い 一管」 野村万蔵 野村万禄 河野佑紀 小笠原匡
 笛・一噌幸弘

狂言「若菜 立合小舞・新作下リ端」 野村萬 野村万蔵
能村晶人 小笠原匡 三宅近成 野村万禄 三宅右矩 野村又三郎 野口隆行 井之松次郎 髙澤祐介
 笛・一噌幸弘  小鼓・住駒充彦  大鼓・佃良太郎  太鼓・小寺真佐人




まずは能楽界現役最年長、野村萬師米寿おめでとうございます。
誠におめでたい。

こういう満ち足りた舞台だけを拝見していられたら、と思う。

萬師の三番叟は、農耕の神様や歳神様というのはこのようなお姿をされているのではなかろうかと思えるお姿でありました。


万蔵さんのお話。
現役最年長、めでたいのやら、悲しいのやら、という言葉に、えっ?と思ったが、長生きをするということは、それだけ多くの人を見送ってきたということに他ならず。
長生きで尚且つお元気でいらっしゃるのは何にもましてめでたいと思う。
舞台も相変わらず素晴らしい。
国立能楽堂の〈家・世代を越えて〉という企画などは野村萬師がいなかったらかなり寂しい。
アイ語りも素晴らしいのだけど。





元日の語。
元日の語りは万之丞さんの弟さんお二人。拳之介さんはときどき拝見の機会もあるが、眞之介さんは昨年一月の万之丞襲名記念以来かもしれない。
居語りなので所作としては切戸から出て座って語って戻るだけだが、やっぱり綺麗。
語りも良かった。これまためでたい。



蝸牛 替之型。
絶品。おーもしろかったーー!
又三郎さん大好きだが、少年二人が素晴らしく。
なんだろう。奥津くんも大人っぽくなったなぁ。
にやにやしながら観てしまった。
びっくりしたんだけど、奥津くんと信朗くんが主と太郎冠者じゃなくて兄弟という設定なのね。

舎弟!

と確か言ったと思う。
又三郎さんの少年時代はこんなだったのかしらー?と想像してしまう信朗さんの姿。長裃も意外にしっくり。

そして山伏はちょっと良く観る蝸牛の山伏より金にがめついというか、ただなぶってやろう、ではなくて金になるか考える。
そして山伏が、ではなく弟役の奥津くんが疲れたと言って山伏に負われる。
そしてそのままお馴染みの囃子で浮きに浮いた調子で兄の元へ。


替之型ということだけれど、どの辺りが替えなのか。
これまでの代々の又三郎さんも強靭な足腰でこれができたのか。
そして又三郎さんは常日頃どのような訓練(稽古)をなさってあのような足腰を維持していらっしゃるのか。

感嘆も興味も尽きぬ又三郎家。

嗚呼おもしろかった。
おもしろくて、幸せな気持ちになれる。
しかも明るい未来まで見える気にさせてくれる。
なんて素晴らしい。



信長占い。
ちょっと長い。
万蔵さんは信長役でつけ髭。
万禄さんは家康。
長いなぁ、と思ったのは信長に家康が堺見物の他に何か所望はないか、と聞かれて言いよどんで、なんだ、言わない、言え、というやりとりと、その希望が噂の美少年・蘭丸を一目見たいというもので、いざ出てきて見てみたら、さほどでもない、というところ。
河野さんの蘭丸は振りきれてて良かったと思う。
このあと蘭丸は家康の機嫌を取るために家康の手相を観、そこから信長と同じ生年月日の男を捜し出すということになるので省略は出来ないのだけど、どうも冗長さは否めない。
それなのにいざ信長と同じ生年月日の男(小笠原さん)が現れたら、その男は先を見通す、予見がある程度できるということだったが、そこはやや足早というか、実際に少し先のことが分かるというストーリーがあれば分かりやすかったのに、男が自分でそういうばかりで、本能寺には行きたくない、というのもそこはハッキリ聞き取れるようにしたら良いのにと思った。ちょっと早口気味で、え?!いま本能寺って言った?言ったよね?と思う間に終わりになってしまった感。
一瞬でも間があれば、
そりゃあ行きたくないよねえ~(笑)
となると思うけど、あ、あー?終わりかぁ、という感じ。
囃子はおもしろかった。



若菜 立合小舞・新作下リ端。
若菜摘みの乙女らがずらり。
皆さん和泉流だけれど、家は様々。
そうなると美男鬘ひとつとっても微妙な違いがあっておもしろい。

乙女らに目を奪われているうちに気がつけば萬師が舞台の上で何やら。
おっと、少し見逃してしまったわ。くー。勿体なや。

舞を所望されても最初は恥ずかしがって断っていた乙女らだけど、舞ったり謡ったりということになって、数人ずつ出てきては謡い、舞い。

舞台の上はすっかり早春の和らいだ空気。乙女らの蕾がほころぶような華やぎ。
萬師の笑顔がこれまた極上。

謡も舞も堪能。

若菜のように瑞々しい舞台でした。