超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

空が灰色だから 1巻/阿部共実

2012-03-08 21:19:02 | 漫画(新作)





阿部共実「空が灰色だから」1巻読了。





これは、本当の意味で残念な方々のお話ですね(笑)。
正直めっちゃ面白い、っていうか自分が大好きなタイプの作品です。
全体的に根暗だけど、きちんと笑えて、シンパシーもあったりして、時に泣けたりして。
所謂美少女中心のショートコメディなんですけど
一般的というか今現在売れて人気博してる作品群とは一線を画す出来になってます。
この漫画は、なんていうか、ドス黒いですね。明るい要素殆どないし
はみ出し者の話ばっかなんですけど
でもそれが妙に泣けたり切ない気持ちになったりするんですよね。
それが一番グッと来るって言うか・・・・。とにかく完成度の高いお話ばかり。
これが新人の初コミックスっていうんだから正直今後の活躍に期待せざるを得ないですね。

単純に、美少女漫画ならではの賑やかさもあるにはあるんですけど
この漫画の登場人物達は全員報われないっていうか
残酷な最後を迎える人間ばっかりで
そのいたたまれなさ、痛さ、ペーソスを楽しむ漫画といえば漫画なんですけど
あまりにも冴えないオチを迎えてる人が多すぎるので
必然的に「頑張れ!」とか「幸せになって欲しい」とかそんな気持ちが生まれてる、っていう。
こんな感覚になる漫画ってそんなにないですよね。
楽しいし笑えるけど、
切なさも存分に散りばめられてるっていう。
そんな毒とペーソスが沢山詰まってる一筋縄ではいかないショートコメディ
オムニバス形式なので気軽に読めて哀愁に浸かるにはピッタリの作品だと思います。
「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」とセットで読んで欲しいですね。個人的には(笑)。

なんでこういう漫画が大好きなんだろう、って考えたら
私自身もはみ出し者っていうか
残念で幸せではない人間なんだからだろうな、って思いました。
ひねくれ者だったり根暗人間の為の漫画っていうか、いや、そんなイメージ付けは良くないけれど
でもこの漫画にシンパシーを感じる人って多分大勢いるんじゃないかなっていうか
そんな共鳴を引き起こす作品としてはかなりのポテンシャルあるんじゃないかと。
調子に乗り過ぎて起こしたあの日の失敗、
大好きな人間に裏切られて募る恨み辛み・・・
ってこう書くと暗い話ばっかなの?って思われそうですけど(笑)。
いやいやベタに幽霊との感動話だったり普通に美少女同士の絡みでニヤニヤさせるネタもあったり
共鳴せんでも普通に読んでても面白いお話ばっかりなので
興味があれば是非、って所で。
ゆるゆる系を読み漁る合間に読んでも毒って観点で新鮮に読めそうな作品です。
個人的に第10話のストーカー話はオチひねりすぎ!って少し思いました(笑)。
そんなひねくれたネタの数々を是非どうぞ、って感じで。


以下、特に好きな話を何本かレビュー。



第2話「お前は私を大嫌いなお前が大嫌いな私が大嫌い」

完璧にストーカーじゃねえか・・・って思ったんですけど
最後に泣きながら叫んでる女の子の横で楽しそうに笑ってる女の子の顔が一番残酷。
とても悪趣味なオチですがある意味ゾクッと来てしまうのも本音。


第3話「空が灰色だから手をつなごう」

なんていいお子さんなんだろう。
敢えて最後に母親の涙を描かない演出も素晴らしい。
逆に泣きそうになった。
そして少年誌なのに人間の醜さ容赦なく描きすぎ!(笑)。
何にせよ幸せになって欲しいなあ・・・。


第7話「ひとりぐらし」

珍しく男しか出てこない話。
最初はリアル系の作品なのに幽霊ネタかー・・・ってテンション低めに読んでたら
最後の最後で涙腺くすぐられたでござる、っていう。
扇風機で消火活動とか、健気過ぎて目から汗出そうになった。
これもまた敢えて幽霊の姿をちゃんと描いてない所が安易じゃなくて良い。
畏怖の対象に優しくなれた男の純粋さも伝わって来るから。


第9話「夏がはじまる」

これは痛いお話でもあるけど、その反面切なくもあって。
豪快なあの子の繊細な心。
読んでて悲しくなったけど、でもその涙はちょっと美しくもありますよね。
人間は退廃的なものに惹かれるって言葉はこの漫画を読んでると確かにな~って思います。





ちょっと人を選びそうな作品でもあると思うけど、
個人的には大ヒットでした。
「私がモテないの~」といい今年はペーソス作品に恵まれてるなあ。なんか嬉しいです。




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