交通事故の損害賠償では、中間利息控除というものが行われます。
中間利息控除とは、将来発生する損害を一時金で払う場合に、加害者側が運用利益分について得をするので、その分を損害額から差し引くというものです。
例えば、今10万円をもらえば、その10万円を運用して10年後にはより大きなお金にすることができます。ですから、10年後に10万円もらうよりも今10万円をもらう方が得になります。交通事故の損害賠償については、将来発生する損害を一括で払わせる場合もあります(今後10年間発生する介護費用や逸失利益を、現時点で一括で払わせる場合など)。そのような場合には、被害者は、本来であれば将来もらうべきものを現時点でもらうことになりますから、その分運用利益について得をすることになります。その得をする分を損害額から控除するのを中間利息控除というのです。判例上、年5パーセントの割合で中間利息を控除すべきとされています。
問題は、中間利息控除をいつからするかです。
考え方は3つあります。事故時説、症状固定時説、紛争解決時説(判決等の時点から中間利息控除をする)です。
大阪地裁田中俊行判事「判例の立場を前提とした損害論と中間利息控除の基準時 上」が挙げる例によると、ある特定の条件で考えた場合、事故時説では1464~1496万円、症状固定時説では1869万円、紛争解決時説では2307万円が支払われるべき金額となります。事故時説と紛争解決時説とでは倍近く違ってくることになります。
現状では症状固定時説が趨勢だと考えられています。
しかし、中間利息控除が、被害者側が運用利益分について得をし、その分加害者が損をするのを防ぐためにあるのであれば、紛争解決時説が正しいと思います。2005年に事故に遭い、2010年に症状固定し、2014年に解決し、2030年までの逸失利益が賠償されるケースを考えてみましょう。2014年に解決し、2030年までの逸失利益が支払われる場合、被害者は2014年にやっとお金をもらえるのです。ですから、2014年以前には運用利益というものはありません。そうだとすると、2014年以前について中間利息控除をする根拠は全くないと思われます。
紛争解決時説については、紛争解決が遅れれば遅れるほど被害者が有利となり解決が遅れる結果となる、訴訟提起時だけではなく終結時にも計算しなおさないといけないので面倒という批判もなされています。
しかし、通常、ゴネて解決を遅らすのは保険会社です。紛争解決時説を取ったからといって被害者が紛争解決を遅らすと考える根拠はありません。
面倒という点については、2回計算するだけですから、それほど大変だとは思いません。
私自身は最近は紛争解決時説で主張していますし、何とかそのような実務が定着すれば良いと思います。
交通事故でお悩みの方は当新潟合同法律事務所の弁護士(新潟県弁護士会所属)にご相談下さい。交通事故の相談料は無料です。まずはお電話(025-245-0123)かメールをなさって下さい。
弁護士 齋 藤 裕(新潟県弁護士会所属)
新潟の弁護士による交通事故ブログトップ