伊豆修善寺の巨大な旅館に「桂川」があります。
そのすぐ隣の場所にひっそりと建つ教会があります。修善寺ハリストス教会です。
高さ18メートルの鐘楼を持つ教会堂で、漆喰塗りの木造です。
街中でよく見かける教会とは何となく印象が違うと思うのも当然で、この教会はカトリックでもプロテスタントでもありません。名前(ハリストス)が示すようにロシア正教なのです。ただし、ロシア正教というと御茶ノ水のニコライ堂のイメージとも違うと感じるかもしれません。かなり控えめにタマネギを載せているだけのようです。
これは明治45年、菊屋旅館の野田修治がニコライ主教の祝福を受けて建設されたものです。設計は建築家の河村伊蔵です。
修善寺は血塗られた源氏の歴史と弘法大師空海の法力伝説に満ちた温泉街です。こんな町にロシア正教まであるということは何だか場違いな気もしますが、ここは異教徒でも訪れる価値のある場所だと思います。
日本建築でありながら洋風に仕上げた聖堂というのも見事ですし、山下りんの聖像もあります。静岡県指定有形文化財なのも頷けます。
しかし宗教施設は信仰心があろうとなかろうと独特の空気が漂っていることを感じます。この空気に触れ、目で見て、骨で聴くことに大きな価値があるのではないでしょうか?
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空気振動だけでは得られない荘厳な音を聴きます。
東ローマ帝国以来の伝統を持つロシア正教の雰囲気が、全身を包んでくれるようです。これも巡礼の一種かもしれないと考えました。
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