ねもじゅんの壁面四分儀座

「雨曝しなら濡れるがいいさ だって、どうせ傘など持って無いんだ」 by イースタンユース 

市原多朗「イタリア歌曲をうたう」

2010年09月17日 10時24分47秒 | 音楽
Taro_ichihara


Italian Chamber songs
Taro Ichihara(t)
Lorenzo bavaj(pf)
(Bongiovanni GB2519)




テノールの人は世の中にたくさんいるけど、本当にすごいなぁって思える人は意外にも少ないと思う。市原の声を生で聴いたことはまだありません。NHKの毎年正月の「ニュー・イヤー・オペラ・コンサート」にたびたび出演していて、他の妖怪のような声しか出せない人の中で、唯一と言って良いほどの素晴らしい声を披露しています。

以前、友達のウチでこのCDを聴かせてもらい、こんなに素直な声を持っている人がいるんだとびっくりしました。最近、偶然に入ったCD屋で見つけたので入手。

この曲知ってる!あ、これも知ってる!
みたいな有名で素敵な曲ばかり入っています。市原は「ニコッ」っていう顔をして歌うのが癖というか(その顔がカワイイんだけど)、CDを聴いていても、その顔が浮かんで来るんですよね。

過去の嫌らしいテノール歌手じゃなくて、素直でまっすぐなテノール。


イェネー・ヤンドーの平均律

2010年09月08日 12時22分38秒 | バロック音楽
Bach_1

JOHANN SEBASTIAN BACH
Das Wohltemperirte Clavier1
Das Wohltemperirte Clavier2
Jeno Jando(pf)
(Naxos classic 8553796,8550970)

Bach_2











平均律ってものすごく重要な作品なんだろうけど、なんか聴くとなると数曲で飽きちゃう。演奏がどうこうっていうよりも、1曲1曲の中にいろんなものが詰め込まれているから、1口食べるとすぐにお腹いっぱいになるって感じ。

しかし、ある程度の曲数を続けて聴ける演奏がありました。
イェネー・ヤンドーのCDです。ピアノでバッハというとグールドのものが知られていますが、ヤンドーの様式はもっとヨーロッパ的というか、チェルニーを経て、ブゾーニを経験したバッハ。バッハの作品には、曲のそれぞれの様式、つまり、なんらかの舞曲であったり、スタイルであったりが内蔵していると思うんだけども、そういう持つ曲のスタイルだけに集中して追求するのではなく、音の動きを丁寧になぞっていくような演奏。

とくにフーガの音の処理が見事です。声部の入りをただ明確にするだけの演奏が多い中、彼はもっと伸びやかで、声部が加わると自然に全体が大きく膨らんだり、逆に縮んだりする。この「自然さ」がとても重要だと思う。

薄味な演奏と言えばそうかも知れないけど、演奏者があまりに曲に対して、いろんなものを込めすぎちゃって、音楽が破裂寸前みたいなものより、ずっと音楽としての流れがある。ただ、他の見方からすると、やっぱり物足りないものと映るのかも知れない。バッハを後期バロックのマニエリスムの作曲家だと位置づけると、ヤンドーの演奏は整い過ぎで「過多」「極端」を特徴とするマニエリスムからは、距離をとっている。

ありそうでなかった、平均律のヤンドーのこのような演奏は、とても重要だと思う。
彼にはゴールトベルク変奏曲と、半音階的幻想曲とフーガのCDもある。