猫のやぶにらみ

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勉強を選んだ若者は、社会とどう向き合うか

2007-02-09 | 経済・社会
「ハンカチ王子」こと斉藤祐樹君、卓球の福原愛ちゃん、アイススケートの浅田真央さん・・・。全国に名をとどろかせ、多くの人々の賞賛の声を一身に受けるスーパー高校生。

スポーツや、音楽などの世界ではこういうことは珍しくはない。いつの時代でもその時のヒーローやヒロインとなる、若きスポーツ選手や音楽家はいる。

高校生くらいの年回りで全国的に有名になる、そうした傑出した選手や音楽家たちは、生まれながらの才能に加え、幼少の頃からかなりストイックに、厳しい修練を積んできたに違いなく、そのことがまた、惜しみない賞賛の的になる。

それらスーパー高校生の地元でも、彼らの存在とその成功が、地元の誇りであり、皆で応援しようという機運が盛り上がる。甲子園への出場権を得た野球部員たちは学校の誇りであり、郷土の誇りだ。校長はもちろん、市長や県知事が激励し、学校関係者のみならず、市民や県民の熱い声援を背に、勇躍、甲子園に向けて旅立つのだ。

スポーツなどでは、このようなことが普通に行われているのに、「勉強」の世界ではこういうことがないのはなぜだろうか?

たとえば、
学校で一番の成績を修めた生徒が全校生徒の前で校長先生から誉められたり、全県模試でトップの成績を修めた生徒が、県庁に招かれて知事から祝福されたり。全国模試でトップレベルの成績を修めた地元期待の俊英が、最難関といわれる大学受験に臨む時は、駅頭で母校の同級生・先生らはもちろん、地元テレビ・新聞記者などにもみくちゃにされながら声援を受けて、大勢の人々に見送られ・・・!

勉強の方面で、天賦の才に恵まれ、しかも人並み外れた努力を続けて、最高得点を叩き出した若者も、学校の誇り、地元・郷土の誉れという賞賛に値するのではないだろうか。

ところが、実際はそうではない。上記のような発想は、受験競争をあおり、学歴差別を助長し、子供たちへの負担を一層増やすことになる、ということで、否定されているからだ。

このような環境のもとで大人になっていく、勉強の世界で頑張った優秀な若者は、どのような気持ちでその後の人生を歩んでいくのだろうか。

わき目も振らずに勉強一筋に頑張ることは「かっこ悪い」という価値観が浸透している。もっと踏み込んで、そんなことは「好ましくない」とさえ断じる教育関係者は少なくない。

練習一筋と勉強一筋。同じように努力して人並みはずれた結果を叩き出しても、世間的には、前者は賞賛され、後者は賞賛されない(というか誰がトップだったかすらよく分からない)。これは一体なぜだろうか?

社会や世間の注目を浴び、賞賛され、期待されることによって、人は初めて、世間や社会に恩返しをしようと思うのではないだろうか。

若き秀才たちの多くが、長じて、手に入れた資格や権力を、世のため人のためというよりは、金儲けや利己的な栄達のために使うことに汲々とするようになるのは、これが原因と言ってもよいのではないか。

優秀な人間は社会において枢要な地位を手に入れる確率が高い。そうであるならば、若いうちから、蝶よ花よとおだてあげた方がいい。郷土の誇り、国の誉れと、大きな期待を背負わせるのだ。本人にとっては大きなお世話かも知れないが、世間や社会として、素直に、そのような扱いをすることが大事だと言いたい。

そうすることによって、初めて、若き秀才たちの心のうちに、何か、優秀であるがゆえの社会に対する責任感、らしきものが芽生えてくるのではないだろうか。

「すべて多く与えられた者は、多く求められ、多く任された者は、更に多く要求される」(ルカによる福音書)



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2 コメント

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Unknown (Ravioli)
2007-02-09 18:09:27
学校、学年のトップというのは結局ある一定の層に限られてますよね。しかも範囲が広すぎて比較が難しい。結局ターゲットを絞った究極の研究結果がノーベル物理学賞や化学賞ではないかと思うんですけど。
でも(高校野球は野球好きの日本だから別として)スポーツの世界だとオリンピックや世界大会で全世代のトップを争うものなので非常に明確です。

最後の方を読むとやぶ猫さんがおっしゃりたいのはこういうことじゃないですよね。
社会に出て、勉強をして何になったのか?と考えると結局のところ記憶力や応用力の訓練だったんだと思います。成績がよければ仕事の選択肢も増え、したい仕事ができる可能性が高くなる。学生時代には他人とのコミュニケーション能力を鍛えることも同じくらい重要だと思います。どうも理数系の人は下手なようですから。
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おはようございます (やぶ猫)
2007-02-11 08:31:15
>学生時代には他人とのコミュニケーション能力を鍛えることも同じくらい重要だと思います。どうも理数系の人は下手なようですから。

おっしゃるとおり、コミュニケーション能力というのは本当に大切ですね。何十年も連れ添った夫婦が熟年離婚とか、出会っていきなりプロポーズとか、アイコンタクト一つで絶妙のスルーパスとか、まあ、常に一方的勘違いのリスクをはらみつつも、まずは、とにかく、自分からコミュニケートしてみようと発信してみる姿勢が大事だと思います。
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