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チャドの独裁者イセーヌ・アブレ元大統領、特別法廷で判決~アフリカの犯罪をアフリカで裁けるか?(6)

2016-06-06 07:30:48 | アフリカ情勢
これまで、ンボテブログでも「アフリカの犯罪をアフリカできちんと裁けるのか?」~アフリカの法治と不処罰について、たびたび話題にしてきた。

アフリカの犯罪をアフリカで裁けるか?
第一話 不処罰とアフリカ
第二話 あすはわが身?
第三話 イセーヌ・アブレ元チャド大統領特別法廷(前編)
第四話 イセーヌ・アブレ元チャド大統領特別法廷(後編)
第五話 勝者の理論

繰り返される人道に反する行為、不法行為、暴力。それに対する不処罰と悪の再生産。一方で法や手続きに基づかない恣意的な逮捕や冤罪。そして制裁、リンチ。

2002年に国際刑事裁判所(Cours Pénal International: CPI)が機能を始めると、ショっぴかれるのはアフリカ人ばかりという事態が生じてきた。

これに対し「なぜアフリカの犯罪をヨーロッパで裁くのか。アフリカの問題はアフリカで解決すべきではないのか。」との声がアフリカで高まる。


そういった中、CPIがまだ管轄権を有しなかった2000年、チャドの独裁者、イセーヌ・アブレ元大統領の刑事手続きが開始。その後、紆余曲折を経るが、最終的にはAUの付託によりセネガル・ダカールに「アフリカ特別法廷」を設け、これを裁くこととなった。

(特別法廷が開廷されたダカール裁判所、RFIウェブサイトより)


アフリカの犯罪をアフリカで本当に裁くことができるのか。その動静が注目されていた。その後、残念ながら一向に裁判が開かれる兆しもなく、10年が経過。政治的意思の欠如が批判された。

ところが2012年にマッキー・サル大統領が就任するや、この裁判を進めていく決意を表明。そして2015年7月20日、特別法邸は開廷した。公判の行方には大変な注目が注がれた。

ここまでのところは、上記引用記事でも詳しく述べてきたので、ご関心の方はご参照いただきたい。


さて、前置きが長くなったが、その法廷で5月30日、イセーヌ・アブレ元大統領への判決が言い渡された。裁判長はブルキナファソ人のベルラド・グスタブ・カム判事。前文で「8年にもわたる継続的拷問が、また人権蹂躙も組織的に行われてきた」と述べた。戦争に対する罪については一部を棄却したが、強姦、隷奴的強制労働などを含む人道に対する罪を認定。「終身禁固」('à la prison à perpétuité')の刑を言い渡した。


判決の宣告は、犠牲者やその家族にとって、実に25年にわたる闘争であった。判決が言い渡されると、犠牲者家族の弁護人や支援団体の一団は喜びをあらわにした。涙を見せる人もいた。

他方、アブレ被告は、「アフリカの独立と自由に祝福を。フランサフリック(françafrique )を、打倒せよ!」と叫びながら退廷したという。


そしてこの裁判は、一国の元国家元首を第三国で裁く、前例のないテストケースとして注目を集めた。そしてアフリカにとっても、アフリカ人が、アフリカ人を、アフリカで裁くという、歴史的な出来事でもあった。

いま、アフリカの戦争に対する罪、人道に対する罪に問われた被告人がハーグの法廷で裁かれている。この裁判事例が、アフリカに新たな刑事管轄権の道を開くのか。またアフリカにおける刑事犯罪やバッドガバナンスの大きな抑止力たりうるのか。今後のアフリカ側での議論を注目していきたい。

(おわり)

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