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マリ・トンブクトゥでスイス人誘拐~事件の背景は?

2016-01-11 07:30:23 | アフリカ情勢
映画'Timbukutu'(邦題『禁じられた歌声』)で話題のマリ、トンブクトゥ。

すでにツイッター、Facebookでは8日(金)に速報をお流ししたが、ここを舞台に欧米人の誘拐事件が発生した。

AFP通信の報道によれば、事件は7日(木)の夜間に発生。誘拐されたのはスイス人のベアトリス・ストクリィさん。その夜、武装勢力と見られるグループに連れ去られた。

(ニュースを伝えるフランス国際ラジオ放送(RFI)ウェブサイト)


実はこの女性、2012年にもイスラム武装勢力に誘拐されている。長年トンブクトゥに暮らし、プロテスタント系のキリスト教徒。教義の精神に基づく慈善社会活動を継続してきた。

前回の誘拐時には、ブルキナファソの仲裁も機能し、無事解放された。スイス政府や解放に関与したイスラーム武装勢力のアンサール・デイーンは、身代金の支払いはなかったとしている。当時のイスラーム武装勢力の報道官によれば、解放に課した条件は「もうここには戻ってこないという一点。彼女は貧困を利用していただけだ。われわれの子供たちのことなど考えていなかったのだ。」

その後、スイス政府はマリ北部への自国民の渡航を行わないよう、強く勧奨していた。しかし彼女は2013年初頭の仏軍による主要都市奪還作戦終了後、トンブクトゥに帰還していた。

彼女に対する誘拐リスクについては、現地においてもしばしば心配する声があり、しばしば周囲が忠告していたという。


外国人の誘拐は2013年11月、フランス国際ラジオ放送(RFI)のジャーナリスト2名が誘拐直後殺害されて以来の事件だ。

この事件、いろいろ示唆深いところがある。

第一は、まだあまり情報が流れていないという、その事実。当局が掴んでいないのか、今言えないということなのか。

第二は、誘拐事件の再発ということ。サヘルのイスラム武装勢力は、2007年頃からの活動活発化の流れの中で、人質誘拐を主な犯行手段とし、また資金源としてきたことが伝えられるが、近年その影を潜めてきた。今後も誘拐事件は続いていくのか。

第三に、犯行グループ像。2015年より、南北境界の南側で外国人を巻き込んだ襲撃事件が3件相次いだが、このこととマリ北部へのイスラーム武装勢力の帰還傾向には相関性があるとみられている。

ではこの事件の首謀は?犯行声明は出ていない。

最近、マリにおいて特にプロファイルが高いのはアル・ムラビトゥーンだ。もしそうなら、他の襲撃事件と同様、南部や首都バマコまで触手は伸びるのか?また北部ではアンサール・デイーンの影響が強い。またマグレブのアルカイダ(AQMI)も活発化がみられ、これらグループの間で協力関係が強化されつつあるとの報道も見かけられる。さらに、昨年11月のバマコ・ラディソンホテル襲撃事件ではソマリ人の関与もあった、とする情報も漏れ聞く。


最後に、ベアトリスさんはたまたま狙われたのか?それともターゲットとして照準が絞られ誘拐されたのか?誘拐の目的は何か?前回、身代金は本当に払われなかったのか?今度は誰が交渉相手となり、仲介者となりうるのか?これらの状況次第で、事件の解釈が異なってくる。


余談だが、上記の通りこのスイス人女性が前回解放された裏にはブルキナファソの仲裁があった、と報じられている。当時のブルキナファソ、大統領は今は国を逃れたコンパオレ。右腕で活躍したのが、先のクーデター騒動で囚われの身となったバソレ外相。どちらももう政界にはいない。わずか3年で地域環境が大きく変わったことに改めて気づかされる。


引き続きの情報に注目である。

(おわり)

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