移ろいゆく日々

移ろいゆく日々
気にとめたことを忘れぬうちに

日本が戦争した理由

2016-07-09 10:08:34 | Weblog
司馬遼太郎さんの文章の中に、作家になった理由の一つに、何故日本が日中戦争から第二次世界大戦に、太平洋戦争に突入していったのか、理解したいということをあげられていた。終戦時、栃木かどこかで、戦車兵として出征に備えていた司馬さんが自身の青春時代を振り返っての率直な思いだろう。その文章の中では、軍部の統帥権の掌握、シビリアンコントロールの不備が述べられていたように思う。
当時、世界恐慌後の長引く不況といった経済的側面、貧富の差といった社会的側面、欧米列強の中で相変わらず後進国の扱いで、強制的軍縮を飲まされていた世界情勢もあったろう。その中での日独伊三国同盟は対等に列強と渡り合う手段だったかもしれない。戦争に至る世論形成にはマスコミの責任も重大であった。とても述べるに足る能力も紙幅もない。
がしかし、思想的な流れとしてどうだったのだろうか。鈴木貞美「日本人の生命観」に今まで知らなかった分析が述べられていた。本書は万葉集の時代から江戸時代までの概観が前半の三分の一に割かれていて、本分は明治時代以降にあった。大正デモクラシーから関東大震災、経済恐慌を経て台頭した皇国史観と狂信的国家神道、それに理論的根拠を与えた学者、思想家を多面的に述べられており、日本が戦争に向かう思想的背景の理解ができた。今の科学や社会的理解、倫理観からすると、噴飯物の思想を大まじめに論じ、それを支柱にした国家運営がなされたのだ。ほんの80年ほどの前のことである。
今イスラム国のテロや、某国の横暴など一見理解しがたいことも、ほんの80年ほど前にこの国で起こったことを思えば、実は不思議ではないように思えた。
明日は参議院選挙、18歳からの選挙が行われる。その投票行動にこの国の未来がかかっている。
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