日々、思うことをサラサラと。

日頃、イイな、とかおかしいゾ、とかキレイだなと思うことをサラサラと書き出してみたい。

旧い部屋に豊かに住む

2019年06月01日 | 美術展・本
「TOKYO STYLE」 都築響一 2003年発行


都築さんは一時代を牽引した男性向け情報誌(ファッションなど)「POPEYE」「BRUTUS」の編集を経て、
今も美術・デザインの分野で力のある執筆活動をしている。

この本は東京のおシャレな部屋ではなく、旧い造りの部屋にスポットを当てている。
そこにあるのは”豊穣”な空間であった。
各住人が生き方に趣味に拘りをもって暮らしている様が伺える。自分の思うがままに。
 
広尾の高級住宅地にも木造住宅が密集している一角がある(2003年発行当時)家賃3万円(隣に銭湯がある)
この部屋主若いデザイナーは高い家賃をあくせくして支払うより、自作の帽子やアクセサリーをコツコツ作っては売り、
趣味に日舞と長唄を習ってストレスゼロで暮らしているという。
都心の小さな宝箱、と紹介されている (画像をクリックすると拡大)
一見、雑然としているように見えるが、とても豊かな素敵な空間です


この方は風呂場とトイレに貼られた昔風のタイルが気に行っているという。
トイレは木製の水槽(上部に見える)がついた和式のもの。禅的な静寂に満ちている、というコメントが好きです。


アクセサリーアーティストの仕事部屋。
とにかく仕事に関わるモノが溢れているのだけど、整理にかける情熱が伝わる、とコメントされているとおり
整理術が素晴らしいです。


写真集を文庫化した本だが中身はかなり充実している。
木村伊兵衛賞の受賞履歴があるだけに部屋を切り取るカメラセンスがいいな、と感じる。添えられるコメントも秀逸。
量もたっぷり紹介されていて満足の愉しい一冊です。

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奇しくも似た作品3作が重なった日

2019年05月19日 | 美術展・本
書籍ミステリー小説「湖の男」アーナルディル・インドリダソン 2017年発行(東京創元社)

アイスランド近郊の干上がった湖底で骸骨となった遺体が発見された。複雑に入り組んだ行程を辿っていくと
1950年代にアイスランドから東ドイツに留学した学生たちの過酷だった事情が浮かんでくる。
当時の東西冷戦下、国内外にスパイが暗躍し、学生間の密告を促していた。友人同士の裏切り、誰を信じたらいいのか・・・。
正直、読み始めは敬遠しそうになった。この手の政治的な背景は今はパスしたいなと。
ところがそこをちょっと我慢して読み進めると、どんどんのめり込んでしまう。
当時の社会主義国・東ドイツの政治的な思想・背景が丁寧に描かれ、愛した人を連行され一途にずっと待ち続けた青年が辿った年月、
捜査する刑事たちの私的な事情も絡めながら見事な筆力で一気に読ませる。



と、読み終わったところで夕刊を開いたら映画紹介欄にて
「僕たちは希望という名の列車に乗った」(公開中)が載っていた。

舞台はやはり東西冷戦下の東ドイツ。”国家を敵に回してしまった若者たちの実話を基にした青春映画。社会主義国家・東ドイツでは
当局の厳しい調査が始まり、仲間を密告してエリートコースを歩むか良心を貫いて将来を棒に振るか”と紹介文にある。

  

もう一つ、近くのミニシアターの公開予定作品を閲覧していたら、
「希望の灯り」5/25公開~を発見。

舞台は東ドイツのライプツィヒ近郊 そこの巨大スーパーで働く従業員たちの普通の日常を描いていると
コメントされている(上記で読んだ本の留学生たちが住んでいた街だ)
これは観たい。


この同じ日に3作の似た作品の巡り合わせに本当に驚いた。

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刑事マルティン・ベックシリーズ他

2019年05月11日 | 美術展・本
笑う警官」 マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー

かなり旧作だが全く旧さを感じない(スェーデンが舞台)
刑事マルティン・ベックの人柄が好み。家族に思いやりがありながら、一人の時間も大事に使う。
捜査上の人との接しかたにも節度がある。人々の感情の動きに聡く、温情がある中に適度に冷めたところのある刑事像が好きだ。
同僚に読破した書類、映像として取りこんだ記憶は全て覚えているという驚異の能力を持つメランダー、他個性的な面子が揃っている。

シリーズは10巻あり、新訳は5巻までとなる。
「笑う警官」④ 「消えた消防車」⑤ 「ロセアンナ」①・・と時系列を違えて読んでしまったが、違和感はほぼない。
「笑う警官」は一気読みできる面白さだった。
②、③は今後手を出そうかどうか迷っている。訳が合わないというか・・




おまじない」 西加奈子
短編が8編。どこかの作品に自分が(あなたも?)いる。
気付けなかった情感を覚ましてくれる。「あぁ、そうだったかもな」と。
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大丈夫か私・・・カテゴリ不明

2019年04月09日 | 美術展・本
テーブルの上に、積まれたいくつかの本がある。


「北京から来た男」 ヘニング・マンケル
「ビロウな話で恐縮です日記」 三浦しをん
「ローカル・カラー/観察記録」トルーマン・カポーティ
「忠臣蔵の決算書」 山本博文
「純喫茶」 姫野カオルコ
「ピアノ・レッスン」 アリス・マンロー
 
読了済みは本棚へ、途中のものはそのままテーブルの上。。という過程を経て本は廻る。
かなり旧い作品から新作までいろいろ。
こうして書き並べてみると、さ迷ってる感がありありだ。
のめりこめる作品がないときはこうなる。

「北京から来た男」は上下最後まで行けそうだが、ずっとミステリ漬けで頭がタイムを要求している。
冒頭あたりから死体が酷くて。。(「緑衣の女」の後ではここで休憩が欲しい)

「ビロウな・・」の三浦で笑わせてもらい、カポーティの口コミ評価で乗せられ、姫野でなにやら落ち着く。
(姫野カオルコはピタっと自分に合う)
だが、どれも読み続ける意欲に向かっていかない。


そして「ピアノ・レッスン」は来た---っ!!とう手応えが。
2ページを読んだところでこの先にすでに満足している自分を予感できる
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2011年東電総会・・・偶然、意外なところから見えた実態

2019年03月10日 | 美術展・本
「ザ・万字固め」万城目学著 2016年発行

マキメマナブのユーモア溢れるエッセイです。
読み進めていくと、中盤あたりにちょっと異色の
”やけどのあと 東京電力株主総会リポート”という項目がある。
(初出「文芸春秋」2011年9月号掲載)
あの大地震の直前にマキメさんは東電株を購入していたという。
そんな経緯で株主総会へ出向くことになるのだが・・・・・そこで見た情景を書いている。
マキメさんの言葉で表現するとこんなふうに”事実”が見えてくるんだという驚きがある。
ありのままのリポートである。こんな正直に常人では描けるものではない、と思う。
”書く”ではなく”描いた”という印象が強い。
会長・社長・役員諸々・株主の総会での様子がよくわかる。
マキメさん独特のユーモアに混じって一番知りたかったことがなんの偽りもなく鮮やかに見えた気がした。
当時の勝俣会長、あなたへの印象が変わりました
奇しくも明日3月11日だった。

本・DVDとここ数か月ミステリー(イギリス)詰めの日々で、趣向を一時変更のつもりで
万城目学のエッセイで笑うつもりでこの本を入手。
この人の笑いのセンスが実にツボ。とても相性が良い。

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