旅限無(りょげむ)

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五輪前のお祝い 其の弐

2007-10-22 16:16:53 | チベットもの
■デプン寺は、15世紀に現われたチベット仏教中興の祖ツォンカパ大師の直弟子でジャムヤン・チュジェという高僧が建立した僧院都市です。広大な境内には四つの学堂・大集会堂・瞑想堂・文殊堂などが並んでいる由緒有る立派な御寺さんです。チベット仏教の学問的最高権威とされていた長い歴史のある御寺でもあります。ダライ・ラマ3世と4世の霊塔が有りまして、「偉大なる5世」がポタラ宮殿を建てるまでは歴代ダライ・ラマがお住まいになっていたのでした。合掌

21日付の香港紙・明報の報道によると、中国チベット自治区ラサ郊外にあるチベット仏教寺院で17日、チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世が米議会から勲章を授与されたことを祝おうとした僧侶約900人と、これを制止しようとした警官隊とが衝突した。死傷者の有無は不明。警察当局は、僧侶がラサ中心部で抗議行動を起こすことを警戒し、約3000人の警官を投入、寺院の包囲を続けているという。同紙によると、受勲を祝う文言を寺院外壁にペンキで書こうとした僧侶の頭を、警官が殴ったことが引き金となって衝突に発展した。衝突を受け、警察当局はラサ全域で僧侶の監視を強化。別のチベット寺院では監視カメラが設置されたほか、多数の警察車両が付近に待機しているという。
2007年10月21日 読売新聞

■ミャンマー暴動に関して、山口元大使の説明によりますと、何処かで買った袈裟を着た「無頼漢や与太者、失業者など」が政党のNLDからお小遣を貰って暴れ回ったとか、治安部隊に投石したり銃器を略奪しようとしたから「銃殺」されたのだそうですが……。逆に軍人が袈裟を着けて暴漢を演じていたという説も有りますぞ。それはともかく。少なくともラサでは「お祝いの言葉」をペンキで書こうとしただけのお坊さんが殴られたのが発端なら、これは絵に描いたような人権問題ですから、世界中の耳目を集めそうです。せっかく党大会も無事に終わってほっと一息の胡錦濤さんなのに、大出世の原因がラサ市内での「戒厳令発令」という業績だったという物騒な思い出が蘇るのは困るでしょうなあ。


香港紙・明報(21日付)によると、中国チベット自治区ラサ郊外の名刹デプン寺で17日、僧侶らが亡命中のチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世が米国から議会名誉黄金章を受章したことを祝う儀式を行おうとしたところ、これを阻止しようとした武装警察らと衝突。寺院内に約1100人の僧侶と十数人の参拝客のチベット人が閉じこめられた。報道によると、寺を包囲している武装警察は約3000人以上で、完全武装しているという
2007年10月21日 産経ニュース

■どんどん人数が増えていくのが気になりますが、騒ぎを聞きつけて他のお寺から助っ人?に駆けつけたお坊さんと、続々と動員された公安警察とが競走して騒ぎが大きくなったのかも知れません。まあ1000人前後のお坊さんを3000人以上の武装警官が包囲しているのなら、そのまた周囲を遠巻きにぐるりとチベット人が取り巻くことになりますから、結局はラサ市全域を監視体制下に置いて威圧しないと、漢族の人口がどんどん増えているとはいえ「人数」で競うと非常に危険なことになりますからなあ。


21日付の香港紙明報によると、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が米連邦議会から栄誉をたたえるメダルを受けた17日、地元で祝おうとした僧侶らを武装警察が殴ったのをきっかけに、僧侶900人と治安当局者300人余りが衝突した。けが人の有無は不明。警察や軍から約300人が出動、緊張が続いている。衝突があったのはチベット仏教ゲルク派の三大寺院の一つ、デプン寺。17世紀にダライ・ラマ5世がポタラ宮に移るまで、歴代ダライ・ラマが居住していた。当局は寺を包囲し、寺のあるラサ市西部地区に通じる主要道路を封鎖したという。近くの別の寺でも住民と治安当局が衝突したとの情報もある。
2007年10月21日 朝日新聞

■誤記ではなくて、朝日新聞の記事では「警察や軍から約300人」と書かれているようです。間も無く「訂正」が行われるかも知れませんが……。NHKの宣伝努力の甲斐があって、日本からも多数の観光客が自慢の「青蔵鉄道」を利用してラサ見物に訪れているようですが、市街地からは少しばかり離れているとは言っても迂闊な行動をすると、あらぬ嫌疑を掛けられて災難に遭いますから、野次馬になどならずに大人しく「当局」の指示に従って早々に退去した方が良いでしょう。北京五輪前だから、血生臭い事件には発展しないだろう、などと呑気なことを考えるのはラサを遠く離れてからの方が良いでしょうなあ。

■さてさて、双方とも引くに引かれず睨み合いを続けているのなら、「謝らない」政府の態度が問題になるでしょうが、もしかすると、既にダライ・ラマ法王から直々に「暴力や流血は避けるように」との指示が来ているかも知れませんので、世界中に「事件」が配信されたという事を以って、双方が引いてくれるのを期待するばかりです。来年はラサ市内を通ってチョモランマに聖火が上ることになっているのですから、血生臭い思い出を作ってしまうと北京政府は大きな打撃を受けることになります。でも、やる時はやる!のも北京政府なので、心配は尽きません。

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