金沢地方裁判所仮庁舎会議室において、13時半から3時間にわたり、説明と質疑がなされた。被告の国から、約1時間半説明があり、休憩の後、原告から約1時間の説明があった。その後で約1時間の裁判所からの質問があった。
今回の裁判所からの質問は、①基本高水ピーク流量の算定過程、②基本高水ピーク流量の検証、③カバー率50% をテーマとしたものであった。
①は、対象降雨量の算定と対象降雨波形の選定(棄却基準)の求め方が、原告被告で違いがあること、対象降雨量の算定については極値3分布だけを優先して求めるべきか、12分布すべてを用いて判断すべきかということ、棄却基準については適合度ばかりではなく、安定性評価を介入させるべきかどうかということ、②は、比流量が検証となるかならないかということ、③は、カバー率50%の定めをどう理解するのか、旧基準のカバー率の規定を削除して、新基準では最大値(カバー率で言えば100%)を採用しているがどう考えるのか、などについて双方から、説明した。
上記の説明の後、裁判官からさらに双方に説明を求められた。旧基準と新基準の違いについて、中小河川計画の手引き(案)の位置づけや意味について、ジャックナイフ推定計算と推定誤差の概念について、比流量の幅とカバー率50%値との関係について、データ年数とデータの合算について、基本高水ピーク流量となった1741m3/秒以下で棄却されたピーク流量値についてなどについてなどである。
①の棄却基準について、原告は、適合度評価に加えて、安定性評価をして誤差の最も小さいものを選ぶべきと説明したが、被告は適合度評価だけで、安定性評価はせず、各分布モデルの推定値に誤差を加えたもののうちの最大値を上限とするという説明、可能性のあるものを落とさないための従来からの説明をした。つぎのように表現した。「起こりうる可能性のある降雨波形を棄却することなく、異常な降雨波形だけを棄却して、相当程度の確度で発生する上限値」(スライド29)とした。相当程度というのはまぎらわしいが、100年確率ということか、断定しがたいのでここを誤魔化したということか。ここが問題のところで、適合度をクリアーしたものを全部あわせると、下限は81mmから上限の141.9mmまでの範囲となる。中央値から見ると上限の値は27%の誤差があることになる。誤差の最も大きいものを使って棄却基準を決めていることになる。劣等生も落ちこぼれないようにするという点で民主的であるが、科学に民主的な視点が必要であるわけはない。双方の主張を説明しただけである。
②については、原告から、(スライド11)に示す図を使って、内川ダム計画時点(辰巳ダムなし)の比流量が妥当な範囲にあり、辰巳ダムは要らないということになる、つまり、検証になっていないことを説明した。被告は、スライド36で、従来の図に新たに、流域面積に占める山地割合の要素(犀川90%、手取川92%)を入れてもっともらしく説明した。(追加注:浅野川は計画規模が1/100で、流域面積80km2,比流量8.9、山地農耕地の割合は90%だ、全くはずれ!)
②の検証についてさらに、原告は、スライド13,14を示して、石川県がデータ数不足のため流量確率評価ができなかったと主張していることに対して、「ある程度の正確さ」に近い10%程度の推定誤差で評価することができたはずを指摘した。
③のカバー率について、原告はスライド20で、引き伸ばし降雨の数だけ、ピーク流量がもとまる、このうちのどれが100年確率流量かわからない、その解決方法の一つが「カバー率50%」であると説明、そして、スライド17を示して、旧基準では、カバー率50%を目安にして決めていたが、新基準では、ピーク流量値の最大値を採用して、流量確率評価で検証することによって100年確率であるかどうかを確認する方法になったことを説明した。被告は、従来通り、カバー率の定義ははっきりしていない、単に実績を示した結果に過ぎないとの主張を繰り返した。ただ、スライド46,47を示して、棄却する前のカバー率は、88%である、5番目のピーク流量値であると説明した。
被告のスライド50「50%値をもってピーク流量とすることの合理性」について、「カバー率50%で基本高水ピーク流量を決定すると、統計上、起こりうる降雨(計画規模100分の1)の半数程度しか対応できないことから、危険な計画となる」(スライドの下の説明書き)と説明されているが、これは誤りと中が指摘した。24個のピーク流量値はすべて100年確率と評価していることになるから間違いだという指摘である。各24のピーク流量値は、引き伸ばした降雨から求められている、引き伸ばす前の実績降雨を100年確率の対象降雨量314mmに引き伸ばした結果、その降雨は降雨の3要素のうちの降雨量は確かに100年確率であるが、ほかの2要素の時間分布と地域分布の確率はわからなくなる、このわからない各降雨から求めた各ピーク流量値はやはり生起確率はわからない。24個のそれぞれの生起確率はわからないので、全部の流量が100年確率のように見るのは、間違いだということである。
スライドの説明書きの字面だけを確認すると、その説明は論理的に間違っていない。計画規模100確率の雨(ここでもまぎらわしい、降雨量314はあっているが、時間分布と地域分布は100年確率かどうかわからない)から求められた24個のうちの半分、カバー率50%では半分しか対応できないというわけである。わからないのを逆手にとってすべて100年確率としたもので、素人だましのテクニックではないか。
スライド31と55:3時間雨量140mmについての豪雨についての説明があり、大きな雨があってもおかしくないと主張するようである。
スライド31では、平成16年福井豪雨で3時間雨量140mm以上の面積366km2あった、大橋地点の犀川の流域面積は150km2だ、すっぽりこの中におさまる、流域平均で140mmという数値はおかしくはないとする。あるいは、スライド55では、平成20年浅野川豪雨で3時間雨量140mm以上の面積235km2あった、だから、辰巳ダム計画の基本高水ピーク流量の根拠となった3時間雨量流域平均雨量138.6mmはおかしくない数値であるというものである。
犀川では、過去のデータから相当程度の確度で発生する上限値を求めた→ H.7.8.30型で3時間雨量流域平均雨量138.6mm→ 福井でも、浅野川でも起きている→ おかしくない数値だ→ 適合度評価でクリアーしたすべての分布で誤差を加えた最大値を棄却基準とした決め方がおかしくはない、と主張したいようである。
福井、浅野川であったといっても、おかしくはないかどうかはわからない。浅野川の雨は3時間で終わっている雨であり、福井の雨は規模も大きく、3時間約180mmも記録されている全く異なる雨である。気象条件や地形条件などの自然条件の違うものを単純に比較できない。
最大の誤差を加えて上限値を設定した→H.7.8.30型で3時間雨量流域平均雨量138.6mm→ 福井でも浅野川でも似たような豪雨は起きている→全く異なる性質の雨だから比較してもおかしくないか、おかしいかわからない→ 適合度評価でクリアーしたすべての分布で誤差を加えた最大値を棄却基準とした決め方が妥当かわからない
ともいうことができる。しかし、これも素人だましの議論で、反論は悩ましいところだ。
被告の国から、スライド51以降:「第4 近年の自然災害の状況について」との付け足しがあった。温暖化や都市廃熱によるヒートアイランド現象などにより、近年、全国的に大きな雨、短時間豪雨が多くなっている、起きるかもしれないという手掛かりがあればできるだけ幅をひろげてつかまえて、これを計画に反映させようというわけである。
感覚的ではなく、科学的、合理的に判断しなければならない。
犀川では、短時間のゲリラ的豪雨で大洪水にならない。大洪水になるのは、台風性の豪雨で洪水になる。平成20年7月28日の 豪雨の際、犀川流域でも時間100mm以上の猛烈な降雨があった地点はあるが、犀川大橋地点の最大流量は、400m3/秒を超えたにすぎなかった。とはいっても、住民の不安を高めて過大な流量を糊塗する国の作戦だが、これは個別に科学技術的な議論をぶつけていくより仕方がないだろう。
双方の説明に使用したプレゼンテーション用のスライドは、以下のところでファイルをダウンロードできる。
原告のプレゼンテーションファイル
被告のプレゼンテーションファイル(430メガバイトと大きいファイル)
http://www.nakaco.com/tatumiDAM-sosho/tatumidam-saiban-bunsyo.htm
今回の裁判所からの質問は、①基本高水ピーク流量の算定過程、②基本高水ピーク流量の検証、③カバー率50% をテーマとしたものであった。
①は、対象降雨量の算定と対象降雨波形の選定(棄却基準)の求め方が、原告被告で違いがあること、対象降雨量の算定については極値3分布だけを優先して求めるべきか、12分布すべてを用いて判断すべきかということ、棄却基準については適合度ばかりではなく、安定性評価を介入させるべきかどうかということ、②は、比流量が検証となるかならないかということ、③は、カバー率50%の定めをどう理解するのか、旧基準のカバー率の規定を削除して、新基準では最大値(カバー率で言えば100%)を採用しているがどう考えるのか、などについて双方から、説明した。
上記の説明の後、裁判官からさらに双方に説明を求められた。旧基準と新基準の違いについて、中小河川計画の手引き(案)の位置づけや意味について、ジャックナイフ推定計算と推定誤差の概念について、比流量の幅とカバー率50%値との関係について、データ年数とデータの合算について、基本高水ピーク流量となった1741m3/秒以下で棄却されたピーク流量値についてなどについてなどである。
①の棄却基準について、原告は、適合度評価に加えて、安定性評価をして誤差の最も小さいものを選ぶべきと説明したが、被告は適合度評価だけで、安定性評価はせず、各分布モデルの推定値に誤差を加えたもののうちの最大値を上限とするという説明、可能性のあるものを落とさないための従来からの説明をした。つぎのように表現した。「起こりうる可能性のある降雨波形を棄却することなく、異常な降雨波形だけを棄却して、相当程度の確度で発生する上限値」(スライド29)とした。相当程度というのはまぎらわしいが、100年確率ということか、断定しがたいのでここを誤魔化したということか。ここが問題のところで、適合度をクリアーしたものを全部あわせると、下限は81mmから上限の141.9mmまでの範囲となる。中央値から見ると上限の値は27%の誤差があることになる。誤差の最も大きいものを使って棄却基準を決めていることになる。劣等生も落ちこぼれないようにするという点で民主的であるが、科学に民主的な視点が必要であるわけはない。双方の主張を説明しただけである。
②については、原告から、(スライド11)に示す図を使って、内川ダム計画時点(辰巳ダムなし)の比流量が妥当な範囲にあり、辰巳ダムは要らないということになる、つまり、検証になっていないことを説明した。被告は、スライド36で、従来の図に新たに、流域面積に占める山地割合の要素(犀川90%、手取川92%)を入れてもっともらしく説明した。(追加注:浅野川は計画規模が1/100で、流域面積80km2,比流量8.9、山地農耕地の割合は90%だ、全くはずれ!)
②の検証についてさらに、原告は、スライド13,14を示して、石川県がデータ数不足のため流量確率評価ができなかったと主張していることに対して、「ある程度の正確さ」に近い10%程度の推定誤差で評価することができたはずを指摘した。
③のカバー率について、原告はスライド20で、引き伸ばし降雨の数だけ、ピーク流量がもとまる、このうちのどれが100年確率流量かわからない、その解決方法の一つが「カバー率50%」であると説明、そして、スライド17を示して、旧基準では、カバー率50%を目安にして決めていたが、新基準では、ピーク流量値の最大値を採用して、流量確率評価で検証することによって100年確率であるかどうかを確認する方法になったことを説明した。被告は、従来通り、カバー率の定義ははっきりしていない、単に実績を示した結果に過ぎないとの主張を繰り返した。ただ、スライド46,47を示して、棄却する前のカバー率は、88%である、5番目のピーク流量値であると説明した。
被告のスライド50「50%値をもってピーク流量とすることの合理性」について、「カバー率50%で基本高水ピーク流量を決定すると、統計上、起こりうる降雨(計画規模100分の1)の半数程度しか対応できないことから、危険な計画となる」(スライドの下の説明書き)と説明されているが、これは誤りと中が指摘した。24個のピーク流量値はすべて100年確率と評価していることになるから間違いだという指摘である。各24のピーク流量値は、引き伸ばした降雨から求められている、引き伸ばす前の実績降雨を100年確率の対象降雨量314mmに引き伸ばした結果、その降雨は降雨の3要素のうちの降雨量は確かに100年確率であるが、ほかの2要素の時間分布と地域分布の確率はわからなくなる、このわからない各降雨から求めた各ピーク流量値はやはり生起確率はわからない。24個のそれぞれの生起確率はわからないので、全部の流量が100年確率のように見るのは、間違いだということである。
スライドの説明書きの字面だけを確認すると、その説明は論理的に間違っていない。計画規模100確率の雨(ここでもまぎらわしい、降雨量314はあっているが、時間分布と地域分布は100年確率かどうかわからない)から求められた24個のうちの半分、カバー率50%では半分しか対応できないというわけである。わからないのを逆手にとってすべて100年確率としたもので、素人だましのテクニックではないか。
スライド31と55:3時間雨量140mmについての豪雨についての説明があり、大きな雨があってもおかしくないと主張するようである。
スライド31では、平成16年福井豪雨で3時間雨量140mm以上の面積366km2あった、大橋地点の犀川の流域面積は150km2だ、すっぽりこの中におさまる、流域平均で140mmという数値はおかしくはないとする。あるいは、スライド55では、平成20年浅野川豪雨で3時間雨量140mm以上の面積235km2あった、だから、辰巳ダム計画の基本高水ピーク流量の根拠となった3時間雨量流域平均雨量138.6mmはおかしくない数値であるというものである。
犀川では、過去のデータから相当程度の確度で発生する上限値を求めた→ H.7.8.30型で3時間雨量流域平均雨量138.6mm→ 福井でも、浅野川でも起きている→ おかしくない数値だ→ 適合度評価でクリアーしたすべての分布で誤差を加えた最大値を棄却基準とした決め方がおかしくはない、と主張したいようである。
福井、浅野川であったといっても、おかしくはないかどうかはわからない。浅野川の雨は3時間で終わっている雨であり、福井の雨は規模も大きく、3時間約180mmも記録されている全く異なる雨である。気象条件や地形条件などの自然条件の違うものを単純に比較できない。
最大の誤差を加えて上限値を設定した→H.7.8.30型で3時間雨量流域平均雨量138.6mm→ 福井でも浅野川でも似たような豪雨は起きている→全く異なる性質の雨だから比較してもおかしくないか、おかしいかわからない→ 適合度評価でクリアーしたすべての分布で誤差を加えた最大値を棄却基準とした決め方が妥当かわからない
ともいうことができる。しかし、これも素人だましの議論で、反論は悩ましいところだ。
被告の国から、スライド51以降:「第4 近年の自然災害の状況について」との付け足しがあった。温暖化や都市廃熱によるヒートアイランド現象などにより、近年、全国的に大きな雨、短時間豪雨が多くなっている、起きるかもしれないという手掛かりがあればできるだけ幅をひろげてつかまえて、これを計画に反映させようというわけである。
感覚的ではなく、科学的、合理的に判断しなければならない。
犀川では、短時間のゲリラ的豪雨で大洪水にならない。大洪水になるのは、台風性の豪雨で洪水になる。平成20年7月28日の 豪雨の際、犀川流域でも時間100mm以上の猛烈な降雨があった地点はあるが、犀川大橋地点の最大流量は、400m3/秒を超えたにすぎなかった。とはいっても、住民の不安を高めて過大な流量を糊塗する国の作戦だが、これは個別に科学技術的な議論をぶつけていくより仕方がないだろう。
双方の説明に使用したプレゼンテーション用のスライドは、以下のところでファイルをダウンロードできる。
原告のプレゼンテーションファイル
被告のプレゼンテーションファイル(430メガバイトと大きいファイル)
http://www.nakaco.com/tatumiDAM-sosho/tatumidam-saiban-bunsyo.htm