犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>何年に1回の洪水か(その2)

2012年08月17日 | 辰巳ダム
「何年に1回の洪水か」のブログについて、長野のKさんから、メイルでいくつかのご指摘を受けましたので、当方の頭の中で理解できたものを一部、紹介します。
関心のある方はおつきあいください。
Kさんへのメイルの返事にも代えたいと思います。
まず、
【指摘1】「治水安全度(基本高水流量の流量確率)が計画規模の雨量確率とは異なることを理解いただきながら、ピーク流量群の平均値の治水安全度が雨量確率と同じであるとの理解に至らないのは残念です。
(省略)959m3/sのピーク流量を生起する314mm/2日以上の降雨の年超過確率が1/200の場合に、314mm/2日以下の降雨の年非超過確率が1/200であり、雨量にかかわりない959m3/sの年超過確率が1/100になるとの持論に賛同いただけないのは残念です。」

【当方の考え】
 前半の「ピーク流量群の平均値の治水安全度が雨量確率と同じである。」というのは、多分そうだと思います。
 ただ、理由が、後半に記載されていることだとすると、よくわからなくなります。
 「959m3/sのピーク流量を生起する314mm/2日以上の降雨の年超過確率が1/200」とあり、
(多分、314mm/2日以上の降雨ではなく、314mm/2日以上の降雨。超過という言葉にも以上の意味がありますから、以上の以上ということになる?)、
 つぎに、
「314mm/2日以下の降雨の年非超過確率が1/200」とありますが、
1/200ではなく、(99/100)×1/2のような気がするですが。
314の年非超過確率は、1-(1/100)=99/100であり、ピーク流量の非超過確率が1/2ですから。
合計すると、1/200+(99/100)×1/2=1/2となり、つまり雨量にかかわらず1/2となるのではないでしょうか。

つぎに、
年超過確率と超過確率のことですが、
【指摘2】「年超過確率の逆数が確率年で、その雨量や流量が平均して何年に1回発生するかを示します。超過確率は確率分布に関係する表現で、確率分布として正規分布を考えた場合に平均値の超過確率は0.5でこれは2回に1回発生することを意味します。年超過確率と超過確率は確率年の式で関連付けられています。たとえば雨量確率1/100の降雨において超過確率0.5の年超過確率は1/200になります。」

【当方の考え】
この考えに対する当方の意見は、以下のように2つの解釈が成り立ちますので、わかりやすさは欠けますが、紛れがないようにするため、前回のブログで記載したような言い方にした方がいいと思います。

雨量年超過確率1/100 × 超過確率1/2 = 年超過確率1/200
は、つぎの2つの解釈ができます。
雨量年超過確率1/100 × 雨量超過確率1/2 =年超過確率1/200
雨量年超過確率1/100 × 流量超過確率1/2 =年超過確率1/200
その意味を明確にするために、
 年超過確率1/200とするのではなく、「年超過確率1/100の降雨が生起した場合のピーク流量959m3/sの超過確率は1/2あるいは0.5である。」とした方がいいような気がします。

 そして、最も大きな疑問は、つぎのことです。
【指摘3】「『100年確率の雨が降ったときに959m3/s以上の流量が発生する確率は50%である』は間違いありません。治水安全度の場合には雨量にかかわらず959m3/sの流量が発生する確率が知りたいのです。観点を変えて959m3/sの流量を生起する雨量の確率分布を考えます。」

【当方の考え】
「314 → 959」方向はそのとおりだと理解できます。この逆方向「959 → 314」ですが。959の流量確率がわからないところから出発しています。そして、この流量が生起する雨量の確率分布が314を中央値に持つ雨量の確率分布と同じものかどうか、1/100かも、理解にまだ到達していません。多分、そうだろうと思うのですが。

最後に、
【指摘4】「実測流量から流量確率を求め治水安全度に見合う基本高水流量を決定する方法は流量確率手法といわれ、ヨーロッパでは広く使われています。しかし日本では信頼に値する実測流量のデータが不足で流量確率手法は使われていません。つまりないものねだりになります。現状雨量から流量を計算するいわゆる雨量確率手法を採用せざるを得ないのです。」
【当方の答え】
犀川では、昭和53年から実測流量を観測しています。今年は、昭和87年にあたり、34年のデータが集積しています。「100年確率流量を統計的にある程度の正確さを持って超過分布関数を定めるためには30~40年程度のデータ数が必要であることが国内外の水文統計学の研究によって知られています。」(京都大学防災研究所 寶教授)といわれていますので、実測流量から流量確率は求めることができます。実際には、求めていて、雨量から求めた959は、実測流量から求めた流量確率1/100に近似しています。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辰巳ダム>何年に1回の洪水か

2012年08月14日 | 辰巳ダム
長野のKさんから、またメイルをいただいて
説明を受けてわかっているつもりが、またわからなくなり、
考えると夜も眠れない、(^_^;)ということになった。
頭が旧式パソコンのようで放熱が追いつかない上、夜は蒸し暑くて寝苦しい。

治水の計画規模を1/100として対象降雨を求めてこの雨で発生する洪水(ピーク流量群うちから選択)を想定して基本高水とする。これが治水安全度1/100,つまり100年に1回の洪水ということで理解しているつもりであったが、確率のことを正確に理解しようとするといろいろな齟齬がでてきてわからなくなってしまった。

散々考えた挙げ句、いまのところ、問題を以下のように整理している。
①治水の計画規模と治水安全度と同じではない
 前者は指針で定義がはっきりしているが、後者ははっきりしていない。
 辰巳ダム計画では、計画規模は降雨で決めることになっており、1/100、つまり100年に1度の大雨に耐えられる整備の水準にすることにしている。これに対して、治水安全度は、定義が明確ではない。けれども治水の目的は大きな雨に耐えるためではなく、雨によってもたらされる大きな洪水に耐えるためである。治水安全度の評価は洪水の大きさでなされるはずである。降雨から一義的に洪水の大きさが決められるのであれば問題ないが、大雨が降っても大きい洪水になるとは限らない。辰巳ダム計画では、流域平均2日雨量314mmの雨で24個の洪水が算定されて、約500から1741立方メートル毎秒までとなっている。約500立方メートル毎秒は小さな洪水である。だから、雨から決めた計画規模が1/100としても、洪水の大きさで評価する治水安全度は一義的に1/100とはならない。
 雨から決めた計画規模が1/100であれば治水安全度も1/100と説明されることが多いが、別物である。

②治水の計画規模に対して対象降雨が決定される
治水の計画規模を1/100とするとこれに対する対象降雨が決まる。犀川の辰巳ダム計画では、対象降雨は、流域平均2日雨量314mmである。1時間雨量、3時間雨量は1/100ではない(一致することもあるが稀!)。
だから、1時間雨量、3時間雨量で治水の計画規模を説明できない。例えば、平成20年の浅野川洪水は、流域平均3時関雨量147mmと著しく大きいが(1/200?)、2日雨量は167mmであり、1/100の対象降雨260mmであるので、1/10程度の規模である。浅野川治水の計画規模を尺度で見ると、浅野川洪水は1/10,つまり10年に1度起きる雨である。

③年超過確率と超過確率とは違う
 辰巳ダム計画の対象降雨である2日雨量314mmは、観測雨量から毎年最大2日雨量を選抜した試料を統計解析し、年超過確率1/100二日雨量として求められている。年超過確率1/100の意味は、降雨量が314に等しいか、それを超える降雨量が生起する確率であり、1/100あるいは0.01を年超過確率とよぶ。年超過確率の逆数が、確率年となり、314は、100年確率二日雨量である。
単に超過確率であれば、逆数が確率年にならない。辰巳ダム計画では、1/100の雨に対してピーク流量は24個ある。これらのピーク流量は毎年の最大値というわけではない。このピーク流量の平均値は、959立方メートル毎秒であり、超過確率は、1/2となるが、逆数が2だから2年確率ピーク流量というわけではない。単に超過確率1/2つるいは0.5ということである。言い方を変えれば、非超過確率1/2でもある。ピーク流量が959に等しいか、それを超えないピーク流量が生起する確率が1/2ということである。
だから、辰巳ダム計画で1/100の雨が発生したときに、ピーク流量の平均値959が生起する非超過確率は1/2、あるいは0.5、もしくは50%となるということになり、959に等しいか、これを超えないピーク流量が生起する確率となる。別の言い方をすれば、「100年確率の雨が降ったときに959が出現する確率は50%である。」、同様に、「100年確率の雨が降ったときに1741が出現する確率は0.3%である。」。

④雨量確率と流量確率を区別して考えること
 雨量確率が1/100の雨から、貯留関数法などの流出解析手法で洪水量を求めるが、1/100といっても二日雨量の大きさを与えているだけなので、計算される洪水量という答えは無数にある。流量確率が1/100の答えを求めるのは簡単ではない。
一つの答えは、平均値959が流量確率1/100のピーク流量であるというものである。1/100の雨から求めたピーク流量群の平均値959をとれば超過確率1/2となるので、生起する確率は、(1/100)×(1/2)=1/200となる。加えて、959が生起するのは、1/100の雨ばかりではなく、1/50のときにも1/2よりも小さいが生起することが見込まれる、さらに、1/40のときもと、これらを加算すれば、1/200ほどには積み上がりそうである。結局、1/200+1/200=1/100となる。ただ、1/100以外に積み上げたものが1/200になるのかどうかよくわからない。
また、確率論で期待値という考え方がある。314mmの雨が降ったときに予想されるピーク流量はどれだけなのだろうか。確率論では、期待値は確率と確率変数を掛けた総和であらわされる。ピーク流量は24個あり、確率はそれぞれ1/24、確率変数は算出されたピーク流量であり、それぞれ掛け合わせて総和する、結局は平均値959である。314mmの雨が有ったときに予想される流量は959であるということになる。
 雨量確率1/100から流量(ピーク流量)を求めて平均値959を求めれば、多分1/100の流量確率のピーク流量だろうと推測できても、年超過確率1/100流量とは言えない。したがって、100年に1度生起する洪水とも言えない。
 100年に1度生起する洪水を統計的に求めるには、実測の流量観測から、毎年の最大流量を選抜して得られたデータ群で統計確率計算をして求めなければならない。
 
⑤流出解析流量と基本高水(想定洪水)
 貯留関数法などの流出解析手法で求めたピーク流量群から、慎重に検討して治水計画の基本となる「基本高水」を決めている。確率的には遮断がある。
 1/100の降雨から得られたピーク流量の大きさはそれぞれバラバラであり、1/100の降雨があった時という条件がついて、それぞれの生起確率がある。その内から選択をしたピーク流量をもとに、基本高水ピーク流量を決めているが、流量確率はわからない。
平成24年8月14日 中 登史紀
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辰巳ダム>浅野川放水路のゲートを開けるらしい!

2012年08月13日 | 辰巳ダム
 浅野川放水路は、昭和49年度に完成したが、ゲートは半開状態で、能力は250立方メートル毎秒でありながら、150立方メートル毎秒に抑えられてきた。辰巳ダムが7月に運用開始したがそれでも全開されなかった。辰巳ダムとは何の関係もないことは前に記述した。ところが、どうも開けるらしい、辰巳ダムができたからかというとそうでもなさそうである。
 
 辰巳ダムが出来たからということになると、無条件で開放ということになるが、条件付である。ゲートを全開すると、100立方メートル毎秒の流量が増加する。この増分を犀川下流で加えて河道を大きくするのだという。辰巳ダムができたにもかかわらず、やはり、増分の100立方メートル毎秒は別途増やさないといけないのだという。「辰巳ダムができると浅野川の洪水氾濫を防ぐことができる。」といっていたことが「嘘」であることがわかる。犀川下流の能力はつぎのように拡大される。
現在 示野橋~河口 820立方メートル毎秒(1/2あるいは1/3~1/5確率)
 ↓
改修後 示野橋~安原川合流点 1250立方メートル毎秒(1/10確率+100)
    安原川合流点~河口 1300立方メートル毎秒 (1/10確率+100)

 改修後は、犀川の10年確率流量に浅野川放水路100立方メートル毎秒を加えた流量を流すことができるようにするようである。それで、浅野川放水路のゲートを全開できるのだという。

 この説明だけを聞くとなるほどと納得してしまう、昭和50年3月に浅野川放水路が完成して以来、やっと全開して浅野川も安心だということになる。ところが、よくよく考えてみるとおかしな話である。
 現時点の820には、浅野川放水路からの150が含まれている。なぜ、150を含ませてもいいと考えたのか、わからない、なぜ、100でもなく、200でもなく、250でもないのかわからない(県へ根拠資料の公開を求めたが無いという。)。何となく、河川改修が完了していない犀川への負担を軽減しておきたいというのだけはわかる。
 本来、犀川への負担をゼロとするために、内川ダムと浅野川放水路をセットで造ったのだから、最初から250を負担させることができたはずである。

 まあ、それはいいとして、150だけを負担することを許容するとしよう。今回、改修して犀川の流下能力を1/10洪水に対応できるようにしたが、その内に浅野川放水路からの150が食い込んだままである。1/10洪水+250とするのであれば、犀川の流下能力は額面通りに1/10洪水に対応できることになるのだが。
 もし、150が食い込んだままでいいとするのであれば、なぜ250を食い込ませてはいけないのか、よくわからない。250を食い込ませてもいいのであれば、1/10洪水+100ではなく、単に1/10洪水対応で犀川を改修すればいいことになる。
 現状が150食い込んでいるのだから、そのままにして100は別途追加しようということになったのだと思われるが、「一度、嘘をつくと、嘘の上塗りをしないといけなくなる」見本である。

 伏見川合流点から河口の区間は、公称の流下能力820立方メートル毎秒は昭和36年の第二室戸台風災害の緊急対策で改修した時点の水準にとどまっていた。以前に確認した報告書では流下能力が1/2、つまり2年に1度満杯になって溢れそうになるということになっていた(となると、数年に1回は溢れるということになるが、実際には溢れていないが(-_-;)、本当は想定洪水が大きすぎるためで流下能力の確率計算上は著しく小さい数値がでる!)。とにかく、わずか4kmあまりの区間を昭和54年から、延々と30年以上工事が続いていつ終わるかと思っていたが、平成20年に浅野川洪水が起きて、浅野川と犀川の一体改修という名目で、両方の川が優先的に改修できることになった。第二室戸台風災害の後の緊急特別対策事業と同じ事業である。5年間(平成21年から平成26年)で集中的に事業ができて、国からお金がまわってくる。災害がないと河川改修がすすまないといわれるが、これを立証している。

 平成21年から始めた改修でほぼ断面確保の目処がたつことになったので、平成25年には浅野川放水路のゲートを全開することにしたとのことである。折角の切り札も痛い目にあわないと活用できないらしい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辰巳ダム>辰巳ダム計画の想定洪水は、3万年に1回の洪水ではなかった?

2012年08月06日 | 辰巳ダム
 長野のKさんからメールで懇切な説明を受けた。
 門外漢にはむずかしい。
 結論は、辰巳ダム計画の想定洪水は、3万年に1回ではなく、1.5万年に1回ということだ。ピーク流量群の2番目の昭和36年型洪水1312立方メートル毎秒は、約460年に1回ということになる。

 当方が何とか理解したのは、つぎのようである。
 1/100の2日雨量314mmという事象に対して、24のピーク流量が有ってピーク流量群の平均値959立方メートル毎秒を選択する(確率は1/2)と、この想定洪水の超過確率は、(1/100)×(1/2)=1/200となる。
 どうもこの逆の部分も加えないといけないらしい。
 つまり、1/100のピーク流量959立方メートル毎秒という事象に対して、これに対応する雨量群があってその平均値2日雨量314mm(多分?)を選択する(確率は1/2)と、この想定洪水の超過確率は、(1/100)×(1/2)=1/200となる。
 この二つ事象が同時に起きると考えて、その合計の確率は1/100となる。想定洪水959立方メートル毎秒に等しいかあるいはこれを超える確率が1/200と考えたのはあやまりでその2倍としなければならないようである。

 同様に考えて、辰巳ダム計画の想定洪水は、3万年に1回ではなく、1.5万年に1回ということになる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辰巳ダム>辰巳ダム計画の想定洪水は、3万年に1回の洪水か?

2012年08月03日 | 辰巳ダム
 「基準」にあるとおり、降雨確率と洪水確率は1対1で対応していない。降雨確率1/100の雨による洪水確率は1/100ではない。100年に1回の降雨による洪水が起きても金沢市民の生命と安全を守るためにと説明されると、100年に1回起きる大洪水に対しても大丈夫だと考えるがそうではない。

 犀川では、1/100の降雨314mm(2日雨量)に対して、ピーク流量は24例があげられ、547~1741立方メートル毎秒と計算されている。平均値は、959立方メートル毎秒である。仮にこの平均値を計画として採用すると確率はどれだけだろうか。1/100の降雨があってもピーク流量が平均値959立方メートル毎秒を超えるのは1/2であり、1/2は平均値を下回ることになる。したがって、平均値は、1/200で発生する確率の洪水ということになる。
 このことは、長野のKさんが以下のところで詳しく説明されている。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~yamayosi/public_html/memo225.htm

 辰巳ダム計画では基本高水ピーク流量1741立方メートル毎秒としているが、この確率を計算してみる。
別紙のとおり、平均値959立方メートル毎秒、標準偏差288立方メートル毎秒、(基本高水ピーク流量-平均値)/標準偏差=2.72となる。正規分布表から、生起の確率は、0.0033となる。よって、
 確率年 = 1/((1/100)× 0.0033)) = 30,300年
 辰巳ダム計画の治水安全度は1/30,300になる。

 ちなみに、2番目のS.36.7.10型1312立方メートル毎秒の場合は、
(基本高水ピーク流量-平均値)/標準偏差=1.23となる。正規分布表から、生起の確率は、0.1093となる。よって、
確率年= 1/((1/100)× 0.1093)) = 915年
 治水安全度は1/915となる。

 別紙はつぎのホームページ
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする