津波避難訴訟、遺族敗訴=釜石市の賠償責任認めず―防災センター犠牲めぐり盛岡地裁
時事通信 4/21(金) 13:30配信
東日本大震災の津波により避難者200人以上が犠牲になったとされる岩手県釜石市の「鵜住居地区防災センター」で、家族が死亡したのは市が正しい避難場所の周知を怠ったのが原因として、犠牲者2人の遺族が市にそれぞれ約9000万円の賠償を求めた訴訟の判決が21日、盛岡地裁であった。
小川理津子裁判長(中村恭裁判長代読)は市の賠償責任を認めず、遺族側の請求を棄却した。
原告は、同センターで死亡した市立幼稚園臨時職員の女性=当時(31)=と別の女性=同(71)=の各遺族。原告側弁護団によると、うち1遺族は控訴する意向を示している。
原告側は、釜石市が震災前、津波災害の避難場所に指定していない同センターで避難訓練を実施したため、多くの住民は津波避難場所だと誤解しており、市は津波時に避難すべきではないという周知を怠ったと主張。地震当日も市職員が同センター内への避難を誘導しており、正しい避難先を指示する義務に違反したと訴えていた。
判決で小川裁判長は、同センターでの避難訓練は町内会の要請に基づき行われたと指摘。訓練で使用させた施設に多くの住民が集まったからといって、市が住民を誤解させたとは言えず、同センターが津波避難場所ではないことまで周知する義務はなかったと判断した。
地震当日の対応についても、女性らは自らの判断で同センターに避難しており、津波到達予想時刻が迫る中、本来の避難場所へ誘導することが適切だったとは言えないとした。
釜石市が設置した有識者委員会は2014年、行政の適切な対応で被害回避は可能だったとして、市の責任を指摘する報告書をまとめていた。