学芸大学駅の「手作りパンの店 麦ばたけ」

学芸大学駅の近くで、国産の材料を主に使ってパンを焼いています。愛する人に食べてもらいたいと、おいしさと安心さがモットー。

酵母、種と、「天然酵母」の誤解

2011-04-14 00:55:08 | 材料のこと
 前回は小麦の話だったので次に来るのはやっぱり酵母ですね。
 当店では「ホシノ天然酵母種」、「あこ天然酵母」を使っています。この二つの酵母(パン種)は両方とも、日本で採れた小麦、米、麹、酵母から作られています。原材料からして日本的、日本酒的なこのパン種はいつか味わったことのあるような懐かしい風味と香りをパンにもたらしてくれます。また外麦と比較したことはありませんが、国産小麦との相性が良いといわれています。やはり近くのもの同士ひかれあうのでしょうか。
 あと一般に言われる「天然酵母」っていう名称はおかしいものです。人間は生命である酵母を人工的には作れませんし、当店で使用している上記のパン種も管理された環境で人為的に培養されたものですから、その作り方としては一般に「イースト」と呼ばれているものと変わりはありません。「天然酵母」も「イースト」も空気中や果実に存在する酵母を選抜して、どんな培養地で増やしていくかだけですから。ただ工場生産となると、その選抜方法や培地、培養方法、添加化学物質などは企業秘密で闇に包まれている部分は確かに存在しますが、そこまで危ないものではないでしょう。
 ちょっとこんがらがってしまいますが、「天然酵母」という名称が独り歩きしてしまったのは、世界的にパン作りが工業化していく中で、柔らかく膨らんだだけの風味のないパンが氾濫してしまったことに対する反動ですし、その言葉を利用する人達が広めていったものだと僕は思っています。
 伝統的な方法として小麦からや果実から種を起こしていく作り方は「自家培養種」という名称がしっくりきます。パン職人としては非常に興味がありますし手がけるべきものかもしれませんが、おうおうにして酸味が強く出やすいのです。酸味は味に欠かせない要素ですし、pHを下げて腐敗から守ってくれるものですが、僕自身は酸味の強いパンはカンパーニュなどは別にしてちょっと苦手なので作っていません。