トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

認知症

2017-09-30 11:10:24 | 私的関連
 母方の伯父の葬儀が一昨日に行われた。中年世代となると物故者になる親族が増え、おじの葬儀は今回で4回目となる。伯父の享年は90歳、一般には目出度いと言われる年齢である。 だが、今年上半期ベストセラーとなったエッセイどおり、本人や家族には「九十歳。何がめでたい」と言いたくなる心境だったと思う。というのも伯父は認知症に罹り、死の数年前からは寝たきり状態、胃ろうで栄養を摂っていた有様。生きているとは名ば . . . 本文を読む

豪華客船ルシタニア沈没の真実

2017-09-23 21:10:19 | 音楽、TV、観劇
 今週のNHK BS1世界のドキュメンタリーはシリーズ「歴史のまやかし」を4回に亘って放送、中でも第2回目の「豪華客船ルシタニア沈没の真実」が私的には面白かった。番組サイトではこの回をこう紹介している。「第一次世界大戦でドイツの潜水艦が撃沈した豪華客船は、実は数多くの兵器を積んでいた。しかし、イギリスは巧みな世論工作で事実を隠し、アメリカを対独参戦に導いていく―― 1915年、ルシタニア号はニュー . . . 本文を読む

春の夢 その③

2017-09-18 21:40:06 | 漫画
その①、その②の続き 実はポーの村では、人間を動物同然に檻に閉じ込め飼っていたのだ。毎年ひとりずつ、若い男や女を騙して連れてきては順番に血を吸い、1年後には殺していた。外で狩るより飼育した方が安全だから。村人の普段の食事はバラのスープのみだが、やはり血を吸わねば生きていけぬ化け物ゆえ、新しい血を必要とするのだ。 ポーツネル男爵一家が村を出たのも、メリーベルが生贄の若い娘に助けを求められ、妹の頼みを . . . 本文を読む

春の夢 その②

2017-09-16 21:10:34 | 漫画
その①の続き 新作『春の夢』には、個性的な新キャラのバンパネラが2人登場する。スラヴ系のヴァンピール(吸血鬼)ファルカと、女バンパネラのクロエ。 前者がオネエ風という設定はユニークだが、それよりも驚くのは瞬間移動という特殊能力があること。壁も簡単にすり抜けられ、瞬時に望む場所に移動できるというのは、いかに漫画でも奇想天外なSFのようで少し興醒めさせられたが、萩尾望都氏はSF作品も多く手掛けていた。 . . . 本文を読む

春の夢 その①

2017-09-15 22:40:06 | 漫画
 40年ぶりの新作ということで話題となった、「ポーの一族」シリーズの『春の夢』を見た。発表は昨年だが、間もなく単行本化されると思い、連載雑誌の方は買わなかった。正直言って見るのに迷いがあったが、単行本のレビュー次第で買ってもイイと思った。便利なことにネットでは中古品を扱っているし、1度読んだだけという新品同様の「非常に良い」中古本を、送料込でも書店で売っている品より安い価格で入手した。 但し作品の . . . 本文を読む

ヒトラーの忘れもの 15/独・デンマーク合作

2017-09-10 21:10:23 | 映画
 映画化により初めて知られる史実がある。原題は LAND OF MINE だが、邦題はそれだけで映画の展開が想像できる。登場するのはドイツの少年兵、彼らは戦争終結後に祖国がデンマークに遺した地雷除去を命じられる。まさにヒトラーの忘れ物だが、デンマーク人の間にも忘れ去られた出来事だったという。  映画は1945年5月から始まる。デンマークはナチス・ドイツによる5年間の占領から解放され、捕虜となった . . . 本文を読む

架空請求詐欺メール

2017-09-07 21:10:24 | マスコミ、ネット
 河北新報のみやぎ版の下段では、連日のように特殊詐欺事件を報じている。被害者の殆どは高齢者であり、とりわけ女性が多い。これまでのような息子や孫を装う“オレオレ詐欺”に加え、還付金、融資保証金等の振込詐欺も増加している。この種の記事を見るにつれ、何故高齢者はこうも簡単に振込詐欺に騙されるのか…と歯がゆい思いになった人も少なくないだろう。 但し、特殊詐欺は電話やは . . . 本文を読む

停電の夜に

2017-09-03 21:10:08 | 読書/小説
『停電の夜に』(ジュンパ・ラヒリ著、新潮文庫)を先日面白く読んだ。著者はカルカッタ出身のベンガル人の両親の娘として、'67年にロンドンで生まれたが、幼少時に家族は渡米、米国のロードアイランド州で育った。つまりインド系米国人だが、著者自身は自分を米国人と考えているそうだ。尤も著者の出自もあり、作品の多くはインド系やインド人が主人公である。 ラヒリが凄いのはデビュー作である本書で、ピューリッツァー・フ . . . 本文を読む