トーキング・マイノリティ

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クイーン・ライブ・イン・ブダペスト'86:ハンガリアン・ラプソディ

2012-12-19 21:10:14 | 映画

 昨年末頃に東京で「QUEEN FOREVER展」が開催されたが、今年末にもクイーンのライブ映画が公開されるとは予想もしていなかった。フレディ・マーキュリーの死後ファンになった私としては、大画面でライブ映像を見られただけで大満足。行きつけの映画館のHPではこの作品を次のように紹介している。

ヨーロッパで100万人ものファンを魅了して大成功を収めた「マジック・ツアー(Magic Tour)」の一部として開催された、初のハンガリー公演。そして、悲しむべきことに、フレディ・マーキュリーの最後のクイーンコンサートツアーでもある。ベルリンの壁崩壊の3年も前に「鉄のカーテン」の向こう側で初めて開催された史上最大のロックコンサートには8万人もの観衆がつめかけ、その模様はハンガリーを代表する映画製作スタッフによって後世へと伝えられることになった。

 さらに今回、シネマ上映のために特別に制作された25分間のドキュメンタリーも初公開。「マジック・ツアー」中のメンバーの様子やリハーサル風景、本人たちへのインタビューなど、未公開のものを含む貴重な映像資料で構成された特別映像はファン必見。26年もの時を超え、フレディたちクイーンのメンバーに会えるファンタスティックなシネマイベントだ!伝説のロックバンド・クイーンの貴重で素晴らしいライブを、ぜひお近くの劇場でご堪能ください!(デジタルリマスター上映)

 ツアーでのリハーサル風景やハンガリー公演の映像は既に見ていたが、今回初めて見たものもあったし、何といっても映画館では音声や画面の迫力が違いすぎる。ハンガリーを初めて訪れた時のバンドメンバーの様子も面白かった。フレディは絵画やガラス工芸品に関心を示し、気球に乗って喜ぶブライアン・メイ、現地でゴーカートに興じるロジャー・テイラーはいかにもだが、ジョン・ディーコンもまた彼らしいというか。
 ジョンはブダペストの町中をぶらつき、現地人と話していた。ハンガリーでは英語が通じていたのか?十歳未満らしい少女に声をかけ、名前を聞いている。現代なら小児性愛者の怪しいおっさんに間違えられかねないが、当時はまだ大らかだったのだ。ジョンは既に4人の子持ちだったし、フレディの死後、さらに2人子供を儲けている。

 インタビューでフレディが、「観客の心をとらえて喜ばせること、それが僕の義務」と答えていたところに、改めてエンターテイナーとしてのプロ意識を感じさせられた。また、パンクについても次のように語っている。
数年前パンクが流行っていた頃、彼らは会場が小さい方が観客との親近感がわく、と言っていたが、よく言うよ。誰でも大勢の観客の前でやりたいのさ
 プロのミュージシャンとなった以上、どんなバンドもその心意気を持つはず。パンクやそれを支持する音楽ライター達から、とかくクイーンは「旧態」「商業主義」「体制側のバンド」果ては「右翼」とまで呼ばれたが、今ではどちらが“旧態”だったのか分かっている。

 フレディがハンガリーの民謡 Tavaszi szél vizet áraszt を歌うシーンは前にも見ている。手のひらに歌詞を書き、これまで話したこともないハンガリー語で歌う姿に観客は大喜び。この歌は日本では「春風」と訳されているが、残念なことに字幕がないため、歌詞が分からない。「春風」に相応しいメロディーの曲だった。



 ライブの最後近くでの国旗パフォーマンスはここでも行われていた。ユニオンジャックの裏にはハンガリー国旗。日本と同じくハンガリーの観客もこれで盛り上がる。全く心憎い演出だし、欧米でもここまでプロフェッショナルに徹するバンドも珍しいのかもしれない。メッセージをがなり立てる大御所バンドもあり、総じて彼らはマスコミ受けが良い。それを好むリスナーも大勢いるが、案外その類のミュージシャンこそ「体制側のバンド」かもしれない。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ロックやポップスといった概念やカテゴリーを超えた音楽 (Unknown)
2013-05-16 22:03:20
一部の評論家たちやマスコミによって作られたイメージに諸に影響を受け、当時スルーしてしまっていた代表的音楽家たちです。音楽は先入観を捨て、自分の耳で聴いて判断しなければいけないと思い知らされたバンドです。それとこの年になってようやく素晴らしさがわかったというか。特に彼らのライブは、人の心を動かす音楽の力の凄さ(恐ろしさ)を本当の意味で教えてくれているように思います。
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RE:ロックやポップスといった概念やカテゴリーを超えた音楽 (mugi)
2013-05-17 21:51:51
>名無し氏、

 仰る通り、日本で彼らははじめアイドル扱いだったし、ルックス面が強調されていました。ネットのない時代、一部評論家たちやマスコミの作るイメージは絶大だったし、際物扱いされ敬遠した人も少なくなかったはず。記事にも書いたように私自身、リアルタイムで聴けた世代でしたが、好きになったのはフレディの死後。

 大変皮肉なことですが、ボーカルの若すぎる死がバンドの伝説化に繋がりました。バンドはフレディの生前よりもビックになり、もうこのようなバンドは生まれないでしょう。
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