トーキング・マイノリティ

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そして、ひと粒のひかり 2004年【米=コロンビア】ジョシュア・マーストン監督

2006-02-01 21:05:30 | 映画
 南米コロンビアはコーヒーと美人で知られる国だが、同時に麻薬でも悪名高い。この映画は麻薬の運び屋を描いた作品だ。しかも、その運び屋を引き受ける女主人公はまだ17歳なのだ。

   コロンビアの小さな田舎町に住む主人公マリアは17歳ながらも、母や幼児を抱えた姉たちの一家を養うためバラ農園で働いていた。バラの棘や葉を落とし箱 詰めにするものだが、単調だけでなくろくに小用にも行けぬきつい作業なのだ。しかし、職場主任とのトラブルで仕事を失い、さらに愛してもいないボーイフレ ンドの子を妊娠してしまう。そんなマリアに若い男が“ミュール(麻薬を胃の中に飲み込んで密輸する運び屋)”の仕事を持ちかける。彼女は危険だと知りなが らも5000ドルという報酬に心を動かされ仕事を引き受ける。

 飲み込む麻薬だが、避妊具のようなゴム袋に詰めるので、まるで白いソー セージそっくりだった。マリアは若い女性ミュールから飲み込むコツを教えてもらうが、まずブドウを噛まずに飲み込む訓練を行う。“先輩”は咽喉を開くよう に助言するが、巨峰の様な大きなブドウを丸呑みするのを想像すれば、その苦痛が知れよう。体の大きな男だと百粒、女では60~70粒くらい飲ませるそう だ。
 麻薬を入れたゴム袋は、体内で破れれば運ぶ人間の命を奪う。その袋を62粒も飲み込んでマリアは麻薬組織の指示通りアメリカに向かう。飛行機内にはこの仕事に加わった彼女の親友、麻薬の飲み込み方を教えてくれた女性も同乗していた。

 “先 輩”ミュールの女性には姉がおり、姉はアメリカで暮らしていた。マリアと仲間はアメリカに着いたもののトラブルが起き、“先輩”は命を落とす。姉は妹が麻 薬の運び屋をしてるのを知らないが、行く当てもないマリアは仕方なく“先輩”の姉を訪ね世話になる。姉はマリアにアメリカに住み着いた動機を子育てのためと語る。コロンビアは子育て出来る環境ではないと。彼女は貴女もそうなるだろうと予言するが、主人公は親友と違い結局コロンビアには帰らない結末だった。

  麻薬問題は複雑で難しい。需要があるから成り立つ商売だが、麻薬に手を染める人間が激減しない限りこの種の仕事はなくならないだろう。移民問題もより豊か な生活を目指す者がいる限り、解決は極めて困難だろう。子育てによい環境なので移民してきても、その2世、3世は現地に馴染むどころか、彼らの精神上の祖 国より恵まれた環境下でも周囲と対立しトラブルを引き起こす者も珍しくない。


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2 コメント

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こんばんは! (伽羅)
2006-04-14 00:12:34
TB返し&コメント、ありがとうございました。

南米における麻薬、深刻な社会問題について、

いろいろ考えさせられました。

私がマリアの立場だったら・・・

まったく想像もつきませんね。

やっぱり追い込まれたら、ミュールになってしまうのかなぁ。

でも、まして妊娠してたら、

やる勇気、湧かないかもな、なんて考えてしまいました。
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コメント、ありがとうございます (mugi)
2006-04-14 21:45:19
こんばんは、伽羅さん。

TB&コメント、ありがとうございました。



麻薬の入ったゴムボールを数十個も飲むと想像するだけで、私ならビビリます。

いかに妊娠してなくとも一緒に来た親友は帰国したので、マリアは生来の気丈さもあったのでしょう。

麻薬組織でもミュールは一番割に合わない役目ですね。
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