トーキング・マイノリティ

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海外援助について

2009-06-08 21:26:04 | マスコミ、ネット
 日本のマスコミにおける海外援助の報道ほど、きれい事を並べ立てた偽善と見え透いた欺瞞に満ちたものも珍しいのではないか?私が見るのは地元紙・河北新報だけで、全国紙での扱いは不明だが、他のブログ記事からも横並び志向の強い新聞業界らしく大同小異のようだ。ODAは腐敗の温床としてバッシングする一方、マスコミが望ましい新たな海外援助のあり方としてNGO(非政府組織)やNPOを持ち上げるのが、このところの主流となっている。

 先週、河北新報の読者蘭「声の交差点」で、日本の政府要人が海外の行く先々で援助を約束する姿勢を批判する女性の投稿が載った。私も含めこのような意見の持ち主は少なくないだろう。失業者が増大する不況下、巨額の財政赤字を抱えながら何故援助の大盤振る舞いをする必要があるのか、と支援のニュースを不快に思う庶民は多いはずだ。
 しかし、河北は3~4年ほど前の日本政府による国連分担金を減らす方針を、「大人気ない」「各国の理解も必要」等と書いていたのを、私は忘れていない。そして記者名もない社説でも日本は率先して海外協力や支援をするべきだ、と書くのもしばしばである。宮城県の大企業でもある河北新報社こそ積極的に独自で支援するべきだが、地元にもろくな還元をしない新聞社が海外支援を煽っても、実行することはまず考えられない。

 マスコミによるODA非難は大体次のパターン。現地政権と日本企業の癒着腐敗の温床、独裁制の助長貧しい人々に行き渡っていない不必要なハコモノを建設現地から歓迎されていない…日本のODAはひも付きに対し欧米は違う、との印象操作もしっかり行う。
 全く下らない。そもそも、第三国への援助など無償の善意で行う国が何処にある?所謂“ひも付き”援助なら欧米も変わりないのは、他ならぬ河北新報のベタ記事にも出ている。かつて日本の南洋庁のあったパラオ島は戦後アメリカ統治下に置かれ、1963年にハーバード大教授が提出した報告書にはこう書かれていた。「わが国への従属を望むよう、多額の資金を惜しまず投入すべき」。こうして(援助漬け)政策を開始、産業振興や経済開発に手をつけずじまいだった実態を報じたのは4年前の河北だった。

 ズバリ言えば、海外援助は自国の益になるための戦略の布石であり、それが国際政治の冷徹な現実なのだ。第三世界の貧しい子供たちのため、女性の地位向上など美辞麗句に過ぎず、何よりも自国の国益が優先される。日本人はナイーブなタイプが多いから、ODA汚職報道に後ろめたい思いをする者が少なくないだろうが、それを報じる報道機関もクリーンなのか?カラ出張で4億円近くも所得隠しをしていたのは、確か朝日新聞社だったが、他の新聞社も五十歩百歩だろう。所得隠しの表現も何とも姑息さを感じさせる。脱税と書くべきなのだ。

 近年飛躍的にアフリカ諸国への援助を増大している中国となれば臆面もない。お体裁など歯牙にもかけず、国益への追求を隠そうともしない。昨年のチベット騒動でもネット掲示板には、「チベット人は恩知らず」と、元からの中華思想でチベットへの罵詈雑言が飛び交ったとか。欧米諸国は偽善と欺瞞に長けているが、植民地で飢餓と飢饉を慢性化させた過去から、決してスローガンを信用できない。援助というと助け合いの気分にさせられるかもしれないが、「タダくらい、怖いものはない」という昔からの諺もある。

 ODAを批判、NGOやNPOを持ち上げるブロガーもいる。そう考えるのは自由だが、当人は海外支援活動をするどころか、友人に誘われてもボランティア活動もしない人物だったのは笑える。さらにNGOやNPOへの支援を呼びかけていたが、当人は別荘やヨット遊びに興じる金持ちであり、自らは資金提供などしないタイプだと私は見ている。マスコミで海外援助を訴える者で、自らカネを捻出した者など聞いたことがないように。非営利団体を称するNPOには胡散臭い組織も少なくないと私は見ている。

 金持ちほどしみったれな傾向が強いのかもしれない。私の父の友人に町内会役員をしている人がいたが、赤十字寄付金を断わった者がいたそうだ。判事をしていた者で、裁判所でも高い地位にあったという。この元判事殿は町内会役員に寄付について、くどくど屁理屈を並べ立て、結局赤十字への寄付をしなかったとか。寄付金は5百円だったが、それすら出し渋った根性には言葉もない。

◆関連記事:「日本人医者によるガザ報告
 「反原発主義の胡散臭さ
 「エコロジスト、その偽善と独善

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4 コメント

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前のもまとめて…… (のらくろ)
2009-06-09 00:40:35
またまた寄生させていただきます。

>マスコミで海外援助を訴える者で、自らカネを捻出した者など聞いたことがないように。非営利団体を称するNPOには胡散臭い組織も少なくないと私は見ている。

全くその通りなのです。私も他のブログでブチあげさせていただきました↓
http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/62d32ebcfe1d6cd11986c9ff86e1c49c#comment-list

ですが、前回の小野先生(原題は訓導ですが、この方が親近感が持てると思うので)のような話は、特に先の大戦以前にあちこちであったものですから、ナイーブな日本人は、「世界中にもそういう人は綺羅星のようにいるに違いない」と美しい誤解をするのでしょう。私がちょっと探しただけでも、これこのとおり↓
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h11_2/jog108.html
http://www.youtube.com/watch?v=EXaPHwy1oCs&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=rJNn2jcC01E
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h12/jog165.html

ここまで目を見張らせるものではないとしても、こういう「報われなくてもめげない」日本人もいました↓
http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/e4aa9161f5884a32c8722a082b529d12#comment-list

mugiさんが小野先生について、多分就学前のご両親か小学校の「郷土の偉人」物語で知ったのだろうと思われますが、日本人の大部分はこの段階で、「本当に偉い人、尊敬される人とはそういう人で、この狭くて小さな日本にも少なからずいるから、世界にはもっともっといるんだ」という「刷り込み」のせいで、騙されやすくなっているんだろう(特にネットにアクセスしない連中は)と思えるのです。

新聞・テレビのケシからなさはもちろんmugi
さんのおっしゃる通り。だからこう非難されても仕方がない↓
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2009/04/138-9953.html

ただし、あの恐ろしいスマトラ沖地震津波からモルディブの首都マレを守ったのは、日本のODAによる防波堤だということを、国内メディアで最初に報じたのがあの毎日新聞だったことも、覚えておくべきでありましょう↓
http://www.ecfa.or.jp/japanese/sumatra/maleisland.html

我々は、自分に都合のいい事実だけを書き連ね、都合の悪い事実は捨象するマスゴミとは違うのです。
返信する
援助慣れ (室長)
2009-06-09 00:42:43
海外在住者の眼から見ると、日本の援助が無駄金、或いは日本の業者から現地政府への賄賂と連結しているとか、そういう裏ばかり報道しようというマスコミの姿勢は少しおかしいと思う。確かに、日本の無償援助は、日本の業者が受注できるし、日本の会社にとってはありがたいことだが、それは他方で、日本人の職場を作るし、日本企業がそれなりの利益を確保するのは、日本国にも金が環流してくるという意味で、当然のやり方。無償援助だから、相手国は一切返済義務もないのだから、日本の業者に請け負わさせるのは、正しいやり方と思う。それに、道路を造ったり、空港を作ったり、送電線を整備してやったり、学校を支援したりと、日本の援助は、それなりにどこでも感謝されている。
 少し疑問を感じるのは、東南アジアなど、既にかなり経済開発が軌道に乗っており、もはや援助から卒業すべき国(タイなど)も、なかなか来年からはゼロで結構です、これまでありがとうございました、などと言わないこと。中国も、そろそろ援助は不要でしょう、といったらむくれて、まだまだと日本援助を継続させようとする。かなり前では、シンガポールが、「卒業拒否」してごねた事例がある。
 要するに、日本からの援助は、土木・建築工事の最新技術、環境技術の最先端であったり、色々産業面での新技術もただで導入(真似)できるし、担当の日本企業は低姿勢で、親切に教えてくれるし、後進国にとってはいいことばかりで、しかもただで、または超低利で援助をくれる。更に日本政府は必ずしも、押しつけがましく、外交政策面で現地政府が日本の利益に反する立場をとっても、すぐ怒鳴り込んではこない!
 まあ、ある意味なめられきって、卒業すべき国もなかなか卒業しない。もっとも、卒業できる国は、やはり見所があるし、将来は日本の厳しい競争相手となるだろう(タイ、ベトナムなど)。他方、絶対永遠に卒業できないと思われる太平洋諸国(自助努力精神、勤勉性がほぼゼロ)などは、ともかくいつまでも、もっともっととおねだりばかり。それでも、小さな太平洋の国々が、国連では1票を日本のために必ず投じてくれることが多いので、援助ゼロとは行かないだろう。日本の国益への義理は果たしている、とも言えるのだ。
 アフリカなどは、ある意味一番難しい。現地政府側は、事務能力が無く、怠け者で、日本の援助につきものの文書をきちんと作成してくれなかったり、有償援助でも初めから返済の意志がなかったり!しかし、戦争、飢え死に、非衛生、教育体制の不備など、一番援助しなければならない国が多いのも、アフリカだ。日本の援助は、実は中国などが自国の利益のためのみの「ひも付きの援助」をするのに比べて、同じようなものが少なすぎるとも思う。資源確保とか、日本企業のための利益になるとか、はっきりした利益にそって援助する方が、よほどすっきりする。偽善的な側面が、未だに強すぎると思う。これはマスコミが、日本の企業は悪、故に日本企業の利益は良くないと言う、不思議な感覚を持っているからかも知れない。欧米諸国でも、そんなことでイチャモン付けるマスコミは見たことがない。自国、自国企業の利益は、どこでも喜ぶのだ。
 NGO、NPOの中には、日本でも本当に怪しいものが結構多いようだ。これらも会社と同じで、幹部とか社員の給与をたっぷり確保して、儲けている場合が多いのだ。また欧米のNGOは、雇用を見つけられない人々が、自分のための職場作りとしてやっており、寄付金をうまく稼ぐために、日本人を悪者にしたり(反捕鯨団体)、老婦人キラーのハンサム・ボーイを使ったり、マスコミをうまく利用したりして、それなりの工夫により作り上げた慈善団体が多い。平均給与水準は、日本同様に低くとも、欧米の巨大NGOの幹部は、相当の高額給与を得ているらしい。第一、彼らは、日本と違い「反政府系」を自称するNGOというのが多く、自国政府からの援助は嫌う場合が多いらしい。その分、やはり社会の主流からはずれた連中が社員なのだ。他方で、自国政府からの資金はもらはないが、EUからは資金をもらうというのもある。マケドニアで見たあるNGOは、マケドニア人に言わせると、「EUからの資金を我々に直接くれた方がよほど嬉しい。NGOの連中が、事務所費用とか、自分たちの給与として抜き取るから、実質彼らが我が国に落とすのは、名目援助額の中のほんのわずかな部分となる。実際の援助品は、毛布ばかりだ。毛布など、マケドニア人誰もが自宅に持っているし、寄付されても置き場所に困るだけだ。」と言う話。現実に彼ら先進国のNGO職員は、冷房の効いたこぎれいな、山の中腹の家を事務所として、快適なオフィス生活を楽しみ、夜になると毎晩、中心街のレストラン(地元民は滅多に行けない価格、日本人の感覚では安いが)で、美食を楽しんでいた。
 小生の見るところ、教会系は別として、新興NGOは、どこの国も怪しい?しかし、先進国としては、寄付を上手に集めて、無職者に職場・雇用を確保するNGOは、それなりに正しい存在なのだ!
 海外援助も、単純に「良心の問題」と考えないで、多角的な国益の視点から、偽善抜きで、しっかり見直していく方がよいと思う。マスコミも、そういう大人の視点で取材、報道すべきだろう。
返信する
Re:前のもまとめて…… (mugi)
2009-06-09 22:19:37
>のらくろさん

 私は賀川豊彦なるクリスチャンの名を初めて知りましたが、やはり日本人キリスト教徒は戦時に敵に通じていたのですね。私はクリスチャンを基本的に信用しませんが、これは間違っていなかった。クリスチャンはかつてのキリシタンと全く変わりない。キリシタンが寺院仏閣、仏像を破壊、日本人を奴隷として売り飛ばしたことを知る人は意外に少ない。「左翼は同じ日本人と思わない方がよい」と言った人がいますが、クリスチャンも同様でしょう。植民地でキリスト教に改宗した現地人が、いかに欧米列強の犬と化したのか、書くまでもない。私の家にも日本ユニセフ(シナ女のニセ組織)の郵便物が来ましたよ。

 以前、貴方が「モサド野郎」と評したカトリックブロガー殿、「「日本は中国の一つの地方」-心を豊かにする考え方」など説いています。ウイグル、チベット人にこの考え方を伝授したら、と言いたくなりますね。おだずな!(仙台弁で“ふざけるな”)
http://yamanasi-satoyama.blog.ocn.ne.jp/blog/2009/06/post_5cad.html

 人間誰しも自分がそうだから他人も同じ、と思う傾向がありますが、日本と他国は決して同じではないという事実は、海外生活でもしない限り、実感が湧かないのでしょうね。
『ムルデカ』なら、私は映画館で見て感動しました。インドネシアの華僑について、以前「バタヴィアの狂暴-華僑への虐殺」という記事を書いています。有難いことに私の記事を方々に紹介してくれたブロガーさんもいました。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/aa8ff54cfe9a93644fc1e0b5272abc45

「報われなくてもめげない日本人」のご紹介、有難うございました!「憲兵物語」、私は初耳でしたが、森本憲兵の意見が採用されなかったのは、残念で堪りません。このような人物こそ報われるべきなのに…

 あの毎日新聞もマトモな報道をしたことがあったとは、予想外でした。それにしても、モルディブはスンナ派が国教とされているイスラム国家なのに、中東の産油国で何処も援助する国がなかったのか不可解です。どーせ日本がやるだろう、と当てにされているようで。

 海外特派員記者には酷い者もいるそうです。「ブルガリア研究室」さんがアイルランド滞在中の体験を書かれていますが、在英記者は「何も自分では勉強せず、しかも現地人に英語でインタビューもせず、日本語のみで取材をすまそうとしていた」とか。在留邦人にインタビューして済まそうとする。この類に限って、海外通面したがるのかも。
http://79909040.at.webry.info/200904/article_7.html
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Re:援助慣れ (mugi)
2009-06-09 22:22:37
>室長さん

 東南アジア諸国に限らず、一般に第三世界はカネのある者が布施(援助)するのが当り前、という考えが基本なので、「これまでありがとうございました」などの感謝の念もあるのか、私は疑問に思っています。インド、中東社会ならカネを貰っても、物乞いは礼を言う必要もない。逆に礼を言うのは出した方。タイも仏教国だし、布施するのは当然と見ているはずです。
 それでも、表面上は礼を言うならまだマシでしょう。元から中華思想の中国、シンガポールは反日感情の権化だし、いくらでも取るつもりなのは確実です。金美麗氏によれば、中国人は日本を「柔らかい土」、つまりいくらでも掘れると表現していたとか。だから何時までも卒業するつもりは、端からないのです。李氏朝鮮を徹底的に搾取した中国王朝を見れば、あれこそ中国人の本性だと思いますね。

 私はアフリカにはまるで無知ですが、かなり厄介なようです。『マオ』(ユン・チアン著)にも、毛沢東が国際世界で見栄を張ろうとして、アフリカ諸国に援助するのですが、さほど中国を支持せず、結局食い逃げされたことが描かれていました。中共さえ翻弄されるなら、ましてお人よし外交官ぞろいの国は書くまでもない。
 民放ドラマシリーズ「家政婦は見た」の最終回で、「日本の企業(外務省)は悪」のような描き方で興ざめ、早々TVチャンネルを変えました。このドラマに出たアフリカ青年は独裁制のために戦う真摯な活動家との設定になっており、これもキレイ事過ぎて、見られたものではなかった。ただ、このドラマの視聴者は中高年女性が多いので、鵜呑みにする主婦も多いのでしょうね。

 4年前、アフリカの惨状を救おうとしたロックの祭典「ライブ8」の実態を描いたブログ記事があります。欧米人が引き起こしたアフリカの貧困のツケを、そっくり日本に負担させようとする画策だったことが記されていました。ネットをしていなければ、私も分らなかったでしょう。まったく欧米人の狡猾さには舌を巻きます。
http://plaza.rakuten.co.jp/kawamurakent/diary/200506200000/

 貴方のブログで初めて環境保護活動家が元麻薬中毒のヒッピーだったことを知って、愕然とさせられました。こんな事はマスコミでは絶対報じない。ただ、貴方は「教会系は別として、新興NGOはどこの国も怪しい」と仰いますが、教会系こそ曲者です。ボスニア紛争でテレビ伝道師などを通じ、欧米の新興教会系のNGOが雨後の筍の如く誕生しましたが、これも相当怪しい団体が多かったそうです。メディアの宣伝により多くの寄付が集まりましたが、実際はどのように使われたのか。カトリックのような大御所もマフィアとの繋がりを疑われている。

 日本のマスコミが日本の援助のネガティブ・キャンペーンを繰り広げるのは、他国の国益に奉仕しているからではないでしょうか?連中に「大人の視点」での取材、報道を求めるのは、無理かもしれません。
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