トーキング・マイノリティ

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反原発主義の胡散臭さ

2009-04-05 20:58:16 | マスコミ、ネット
 今から十年前の東海村JCO臨界事故を記憶されておられる方も多いだろう。被爆により作業員2人が死亡、事故から83日後に亡くなられた人の東大病院での集中治療の様子はNHK特集でも報道され、あまりにも惨い最期だったので私も憶えている。これは最悪の事故の例だが、原子力発電反対運動が起きるのは当然の結果である。だが反核平和団体同様原発反対派にも、胡散臭い意見や連中も見受けられる。中にはいかがわしさを通り越し、非現実的な空論を述べる者もいる。

 原発問題を扱ったブログ記事「こういうご批判を頂きそうです」は興味深い。「原子力発電が好きですか?嫌いですか?(3)女性に読んで貰いたい原子力発電の安全性」の続きであり、管理人・藤山杜人氏は女性読者を想定して書かれている。氏は「多くの女性の方々も同じような疑問をお持ちではないかと想像します」と明記しているところから、これは藤山氏自身がそうであってほしいと望む願望的要素が多分に含まれていて、苦笑させられた。もちろん日本女性はイメージに弱く物事を感覚的に捉え、論理的思考が苦手な傾向があるのは確かだが。特に私が笑えたのがアーミッシュを持ち出したこと。

 映画『刑事ジョン・ブック 目撃者』はアーミッシュの村が舞台となっており、私を含め一般の日本人はこの映画で彼らを初めて知った方が多いだろう。世界の最先端を行く超大国アメリカで、頑なに前世紀の暮らしを守り続けている人々がいるのは驚いたが、映画にはその描き方に批判もある。そしてアーミッシュの村も桃源郷などではなく、伝統文化と現代文明の折り合いをどうつけるのか、深刻な問題を抱えているのだ。特に好奇心の強い若者は村の外に出たがり、他の町に住んだところで適応できず村に戻るケースも少なくないという。
 いずれにせよ、自給自足の生活を守るアーミッシュの人々に私は敬意を払うが、彼らと同じく「みんなで電力を使わない生活に切り替える」ことなど不可能事の弄び。特に女はケチで利に敏いのでコスト面を聞けば大抵引く。昭和一桁生まれの私の母さえ、1度贅沢すれば後に戻れないと話していた。

 肝心の藤山氏自身が前世紀式の素朴な生活を送っているどころか、別荘とヨットを所有するという羽振りのよさ。ネットという文明の利器をしっかり活用しているので、当然PCを捨て去ることなど出来ない。昨年12月の記事「担保無しでお金を借りる方法」でもアメリカの抵当物件なしで金を貸すシステムを讃えていた。既にアメリカ発の世界的金融恐慌が吹き荒れるご時世にも係らずの能天気さで、禁欲にほど遠い金持ち老人のピント外れの戯言にしか思えない。

 類は友をよぶので藤山氏と馬の合う女性達は、一般庶民から極めて乖離した考えの持ち主と想像が付く。特に(4)原子力発電は核兵器へ転用される恐れがありませんか?の質問設定と、それへの氏の回答は注目に値する。「原子爆弾を作る技術は易しいと言います。そうだからこそ核爆弾を製造しないように監視を厳しくする必要があるのです。いつもその可能性が有るからこそ女性も原子力発電へ強い関心を持ち、間違っても原爆製造をしないように監視したほうが抑止効果が上がると思います」に、このブロガーの真意を見た思いだ。

 つまり、反原発運動は反核と連動していることを強く臭わせる。反核運動に所謂プロ市民がいて女性を利用するのが巧みなのは、少なからぬネットユーザーの間では知られている。まず「原子力発電が好きですか?嫌いですか?」と二者選択を迫る質問自体、設定ものものが不当である。女に限らず誰も原子力発電を好む者などいない。自分の住む地域に原発が建設されるとなれば、賛成者など至って少ないものなのだ。いくら安全性を強化しても人間ゆえミスも犯す。

 反核団体が「間違っても原爆製造をしないように監視」するのは日本のみであり、他の国、殊に隣国には監視など絶対行わない。イスラエルが既に核保有しているのは国際社会で承知の事実だが、日本人とアウシュヴィッツの関り(こじ付け)は考える藤山氏は、当然イスラエルの原爆製造はパレスチナ問題と同じく見ざる、聞かざる、言わざるを貫く。昨年10月の記事にも書いたが、ローマ教皇ピウス12世は「原爆戦争そのものは不道徳的ではありません…我々人間は世の終わりには責任はない…神の摂理でそういう結果に導かれてしまいました」等と述べていたので、カトリック信者の氏はこの言葉に従うがよろしい。

 海外生活の長いブロガー「ブルガリア研究室」氏は昨年7月の記事「晩婚と温暖化」で、NGO組織の裏事情を暴かれている。環境問題を世界最初に発言し始めたのはアメリカのヒッピー達。米国でのNGOへの寄付は教会への寄付同様、税額控除措置の得点があることを利用し、「環境宣教師」に豹変する。欧米の環境NPOは反捕鯨運動後、巨大産業となり失業対策に貢献しているそうだが、原発反対運動にも手を広げたという。奇しくも藤山氏もNGOを讃える記事を書いていたが、キリスト教会もNGOを利用しているのは確かだろう。原発反対運動を行う組織を日本人も監視を厳しくする必要がある。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
前エントリーとも関連します (のらくろ)
2009-04-06 00:03:29
>まず「原子力発電が好きですか?嫌いですか?」と二者選択を迫る

二者択一なら、その前に「あなたは電気を使わずに生活できますかできませんか」と迫るべきであろう。

原子力発電が危険性を持っていることは分かった。では、現在の電力需要をどうしようというのか。自然エネルギーだけで全てを賄えるかといったら、絶対にそれは不可能なのだ。

しかも、日本の原発は、電力総需要の3割を担っているだけでなく、「立ち上げにくく止めにくい」という性質上、昼夜問わず稼働し、基幹電力をまかなっている状態。昼間の需要が大きい時間帯こそ、天然ガス火力、石油火力といった「立ち上げやすく止めやすい」発電所の出番となる。

だが、電力の深夜と昼間のピークとの落差は大きすぎる一方で、ピークの需要を賄うための火力発電設備が限られているため、実は深夜には大幅な「電気余り」状態が続いている。だからこそ、各電力会社は、23~翌朝7時の「深夜電力」をディスカウント販売しているのだ。

この深夜電力を、「電気自動車」への充電に回せば、深夜の電気余りは解消され、電力の日較差も縮小する一方で、石油需要が大幅に削減されるのは自明の理。しかも

>ガソリン車はエンジン内部が汚れやすいことを知らされたが、それが電気自動車の普及を阻む原因でもあった。今の自動車産業はガソリンで汚れる車を基盤に成立しており、汚れない車なら産業界全体の影響は計り知れない。諸部品やエンジン清掃も産業として確立している。これらを必要としない車の出現は歓迎されないだろう。

にあるような自動車自体の汚染も、それ以外の汚染(当然主体となる汚染は「大気汚染」)も減少する。

>ユーザーにとって電気自動車の致命的な欠点は走行距離が短く、充電のための時間がかかる点である。市内を運転するだけなら問題ないが、長い距離を走るのは難しかった(※航続距離160km程度)。

この問題は確かに今でも電気自動車の悩ましいところだが、私があえて鍵括弧つきとしたのは、年内にも企業向けにトヨタが発売するとされる「プラグイン・ハイブリッド車」によってほぼ全面的な解決をみるからである。同車は一般の給油口のほかに、「給電」口、すなわち充電コネクタを備え、電気自動車としての航続距離を20~50㎞程度とするもの。給電せずにそれ以上の距離を走ればエンジンが始動し、あとは初代プリウス以来12年の蓄積があるハイブリッド車として走行する。ハイブリッド状態の燃費をかりに15㎞/ℓとすれば、燃料タンクは30ℓあればほぼ500㎞の航続距離を得ることができ、従来型ガソリン車に比肩しうるものとなる。これでも現行プリウスの燃料タンク容量45ℓに対して3割減なのである。

こういう「現実的」な対応を何一つ考えず「反原発-反核」運動に邁進する輩は、要は「カルト教団」の信者であると言わざるを得ない。
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Re:前エントリーとも関連します (mugi)
2009-04-06 22:19:44
>のらくろさん

 さすがの藤山氏も原発全廃とは言っておらず、「太陽光発電、風力発電、地熱発電は現在の技術レベルでは大電力を得ようとすると莫大なコストがかかりすぎて現実的な解決になりません」と書いています。しかし、女性に「原子力発電が好きですか?嫌いですか?」と迫る設問自体、実に狡猾な脅迫です。

 ただ、「女性の方から想像される質問」の6項目の内容は了見が狭いというか、氏のファンの女性は別にしても、このような発想をする女性はむしろ少数でしょう。年配者ゆえか女性はこう考えるだろうとの軽視も含まれていますが、好き嫌いだけで人間社会は成り立つものではありません。氏は国立大で27年間教官をしていたと自称されてますから(※その割に教養を感じさせず)、まるで世間知らずの田舎学生(※出身は仙台)みたいな面があります。女性との付き合いに乏しいのやら…

 エコを訴える者ほど実際はリッチな生活を送り、庶民よりいい生活をしているのではありませんか。誰でも贅沢な暮らしをしたがるものですが、別荘やヨットなどエコからすれば無用の長物に過ぎません。信者に清貧を説きながら、己自身は物欲にまみれていた聖職者と同じです。氏の本音は女性に「間違っても原爆製造をしないように監視」させる腹積もりなのです。原発問題をリンクさせ、「ほら、原発は危険でしょう」との意識を植え付ける目的と見ています。

 カトリック自体、史上最大最強の「カルト教団」そのものではないですか(笑)。しかも日本のキリスト教団の多くはウリスト狂日本支部、信者はニダヤの下僕と化しているでしょ。藤山氏もイスラエルはもちろん中韓は絶対批判しない。彼の「最後に一言」が振るっていますが、それを一番怠っているのが当人。
「私は他人を説得しようとは思いません。ただお互いに虚心坦懐に相手の書いたことを何度も読み返して、ゆっくり考えることが重要だと信じています」
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Unknown (ひかるの)
2009-04-08 11:33:11
1ヶ月半前は 1ヶ月にわたり ネパールのカトマンズで 停電時間 1日16時間の生活をしていました。
冷蔵庫が使えない、コンピューターが使えない、インターネットを使う時間が制限されるなど 不便な生活でしたが、それでもどうにか生活できるものです。

そんな生活をしていて、バンコク、そして東京へと帰ってくると、消費、消費を謳う社会、
どこにエコー、地球温暖化の危機があるのか、
疑ってしまいます。

人間のための生活という発想はどこにもなく、
ただただ、どうやって 国民に物を買わせるか、それしか感じられません。

見せるべき内容もないテレビ、いくら新製品が
出来ようが、中身のない番組など見る気にもなれない。

巷には飽食を促すような食料の山、日本の衣食住は一体どうなっているのか、こんな中で
エコー、温暖化防止など、どう考えても
効果的に進んでいくはずもない。

経済対策など、消費を促し、如何に企業の
活性化を図るか、そのことばかりで、
人間に眼を向けた政策など、皆無です。

どうにも歯止めのかからなくなった日本を感じるばかりです。
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偽善者 (mugi)
2009-04-08 21:16:36
ひかるのさん、初めまして。

 私も日本を含む現代先進国の物質万能生活を決していいとは思っておりません。株価至上主義に振り回され、何事も経済優勢の社会が健全とは言えないでしょう。
 しかし、それへの対策方はありますか?あなた自身どうお考えでしょうか?出切れば具体的解決法を提示願いたいものです。

 あなたは1ヶ月半前、1ヶ月間に亘りカトマンズで生活されたということですが、この先一生現地で生活するおつもりですか?私はあなたと違い、ネパールに一ヶ月間も滞在するほどゆとりのある暮らしをしていませんので、現地の詳細はよく知りません。
 しかし、桃源郷には程遠い程度のことは知っています。ネパールは少し前まで共産ゲリラにより長く内戦状態が続いていましたね。このゲリラを支援していたのは何処の国かはご存知のはず。内戦により国内は荒廃、貧しいネパールの少女がインドの売春宿に売られ、男はインドやイギリスで兵士をする始末。それでもどうにか生活できるものですが。

 あなたはネパール並みの生活を一生やれる覚悟はありますか?帰国後早々元の消費生活に戻り、平日11:33という時間帯にネットをするという優雅さ。私から言わせれば、エコロジスト気取りの偽善者に過ぎません。あなた自身こそ一般の人間に眼を向けていない。そんなに日本の暮らしに不満なら、是非ネパールにでも永住されたら?日本で贅沢しながら、己の海外体験をもとに訓示を垂れるのは尊大というものです。日本の不平不満家より、ネパールの娼婦や傭兵の方が人間のための生活をしていますね(笑)。

 あなたのブログに軽く目を通しましたが、25年間、ネパール、インド、タイを旅行されていたとか。ならば、現地事情は私よりご存知のはずですね。持参金が少ないため焼殺される花嫁のいる国が、日本以上に「人間のための生活」を保証されているとでも?甘ったれるのもいい加減にしなさい。
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