誠茅庵という名の小さな小さな美術館

絵や写真、そして雑感日記。。
六十の手習い(水彩画、スケッチ等)帖。

21展ー家族シリーズの3ー完

2009年01月27日 | Weblog
  〔父の絵コーナー 戦地から帰ったスケッチブックから〕
     生活編  スケッチ NO,16ーー第一次最終展示。

 何冊かの手元に残った古びた汚れた、やや大きめのスケッチブックから
 あまり戦争臭のないものを抜粋して、今回は展示しました。
 ちゃんとした作品は軍へ提出してしまった筈なので、手元にあるのは皆
 半端なものや汚れていたり描きかけだったりが勢い多くなります。
 このスケッチは、下絵であってこれを元に、時間あればじっくり描き直す、
 又は日本内地に帰っては大きな油彩画に仕上げたのでしょう。
 いずれにしても、筆とペンとこのスケッチブックを抱えて、家族のために
 お国のために戦地を駆けめぐったのでしょう。

 こんな手元に残った薄いスケッチブックにさえ、全てに海軍省の検閲印がはっき りと残っています。
 厭戦や反戦や敗戦の色彩の濃い絵は許可にならなかった筈ですから、どうしても のどかなアジアの田園風景や素朴な、くつろぐ兵隊さんの様子といったもの が多いのは、この検閲印の勢なのかも知れません。

 もっと戦争色の強いもの、インドネシア、バリ島やシンガラジャの風物、景色、
 現地の人々を描いたものもいろいろあります。
 良く整理してその内、パリやロンドンでの修業時代のスケッチ画などと合わせて
 何時か又改めて展示したいと思っております。   ーー完ーー

 本シリーズをご高覧有難う御座いました。
 お帰りにはティールームの方へお寄り頂いて、どうぞ温かい香り立つ珈琲なぞを 一杯召し上がってからお帰り下さいませ。    館主。

21展ー 家族シリーズの2

2009年01月26日 | Weblog
     (父の絵コーナー 戦時中のアジアから戻ったスケッチ集より〕
        風景・生活編  スケッチNO,8

  画板一つで、満州,支那、東南アジア諸国の各地を絵を描いて周り、その絵と  現地の様子文章に書いて内地に送ったそうです。
  兵隊さんの絵を描いては喜ばれ、兵士が故郷に出す軍事郵便用のハガキに現地  の風景や生活振りを描いて、兵士はそれを使って日本の家族に便りしたわけで  す。
  もうほとんどが散逸していますが、戦後何年か経った頃だったか、数年前に支  那から引き揚げて来たという1人の元兵隊さんが、自分が戦地から我が家に出  したという軍用ハガキを持って、感激してわざわざ尋ねて来たのを覚えていま  す。その軍用ハガキの絵は父の描いたものでした。

21展ー2 家族シリーズの2

2009年01月26日 | Weblog
 
     〔父の絵コーナー 戦時下のスケッチ集より〕
        風景・生活編 スケッチNO、7
   

    ところで戦時中は、絵描きでもお国への奉仕と協力を強制され、生活の為    にも「戦争画」を描かざるを得なかったと聞いています。
    当時の画家達でも、断固戦争反対で例え餓死してでも戦争に協力する絵は    描かないぞという反戦、反骨、信念の画家は少なかったのでしょう。
  国からの規制、制限と統制と命令で検閲のもとで、士気の高揚、兵士の慰    問、国威の発揚、思想の懐柔等の作戦の手助けをしたのです。
    当時、中堅画家だった父も、ご多分に漏れずそんな道を歩んだようです。    何しろ、家には愛妻と可愛い子供たちが二人も居たのですから‥。