【書評など】
「買いたい新書」に書評No. Lewis Wolpert「発生生物学」,丸善新書,2013をアップした。副題は「生物はどのように形づくられるか」となっている。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1397627651
著者ウォルポートは、世界的に有名な発生生物学の教科書を書いた、ロンドン大学の名誉教授だ。その経験と知識をもとに,受精卵から個体が発生するという複雑な現象をわかりやすく説明している。原本は英Oxford大出版会から出た「Developmental Biology: A Very Short Introduction」(超短い発生生物学入門)という一般向け解説書で,本文は170頁しかない。
「幹細胞」が詳しく解説されており、ES細胞、iPS細胞、それに今回のSTAP細胞騒動を理解する上で、読めば有益な理解が得られると思う。
【献本お礼】土曜日午後に大阪中之島の「大阪大学中之島センター」で開かれた「STAP細胞問題勉強会」の後の懇親会で、近畿大学講師(病理学)の榎木英介氏から「医者ムラの真実」(ディスカヴァー携書, 2013/10)を贈られた。お礼申し上げます。
榎木氏には「博士漂流時代」(ディスカヴァー21, 2010)や共著で「私の病気は何ですか?病理診断科への招待」(岩波科学ライブラリー, 2010)という著書もあり、「死因不明社会」(講談社ブルーバックス, 2007)を書いた作家の海堂尊氏と同様に、「医療における病理診断」の重要性を社会的にアピールしている。
「博士漂流時代」では、雑誌ミクロスコピアの藤田恒夫先生、「死因不明社会」の海堂尊氏と同様に「日本科学ジャーナリスト賞」を受賞した。博士の乱造により、ポスドクの過当競争が生まれ、契約制の雇用のため短期間に成果を出すことが要求されており、大きな問題があるという本書の指摘は、小保方事件の背景を理解するのにも役立つだろう。
「医者ムラの真実」は現在の大学、大病院の抱える問題点を、自己の体験とさまざまなデータをもとに、指摘したものでいわゆる「告発本」ではない。著者は東大理学部卒後に、生物系大学院博士課程に進んだ後、退学して神戸大学医学部に社会人入学、医学を勉強、32歳で医師となり、2年間の臨床研修を経て病理医となった。
別な世界を経験していることが、著者の記述の強みとなっている。
1960年代には偏差値の高い優秀な高校生は、工学部ことに「宇宙工学」や「原子力工学」分野に進んだ。現状を見ればその選択は妥当だったかどうか。いま、成績優秀な生徒はみな医学部を目指している。が、20年後には今の高齢者のほとんどはいなくなり、医師の過剰時代は必ず来る。
そういうことも指摘して、安易に医者を目指すなと警告している。医者の世界へのガイドブックとしても貴重な本だが、刺激的タイトルのために誤解されないことを祈る。
「買いたい新書」に書評No. Lewis Wolpert「発生生物学」,丸善新書,2013をアップした。副題は「生物はどのように形づくられるか」となっている。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1397627651
著者ウォルポートは、世界的に有名な発生生物学の教科書を書いた、ロンドン大学の名誉教授だ。その経験と知識をもとに,受精卵から個体が発生するという複雑な現象をわかりやすく説明している。原本は英Oxford大出版会から出た「Developmental Biology: A Very Short Introduction」(超短い発生生物学入門)という一般向け解説書で,本文は170頁しかない。
「幹細胞」が詳しく解説されており、ES細胞、iPS細胞、それに今回のSTAP細胞騒動を理解する上で、読めば有益な理解が得られると思う。
【献本お礼】土曜日午後に大阪中之島の「大阪大学中之島センター」で開かれた「STAP細胞問題勉強会」の後の懇親会で、近畿大学講師(病理学)の榎木英介氏から「医者ムラの真実」(ディスカヴァー携書, 2013/10)を贈られた。お礼申し上げます。
榎木氏には「博士漂流時代」(ディスカヴァー21, 2010)や共著で「私の病気は何ですか?病理診断科への招待」(岩波科学ライブラリー, 2010)という著書もあり、「死因不明社会」(講談社ブルーバックス, 2007)を書いた作家の海堂尊氏と同様に、「医療における病理診断」の重要性を社会的にアピールしている。
「博士漂流時代」では、雑誌ミクロスコピアの藤田恒夫先生、「死因不明社会」の海堂尊氏と同様に「日本科学ジャーナリスト賞」を受賞した。博士の乱造により、ポスドクの過当競争が生まれ、契約制の雇用のため短期間に成果を出すことが要求されており、大きな問題があるという本書の指摘は、小保方事件の背景を理解するのにも役立つだろう。
「医者ムラの真実」は現在の大学、大病院の抱える問題点を、自己の体験とさまざまなデータをもとに、指摘したものでいわゆる「告発本」ではない。著者は東大理学部卒後に、生物系大学院博士課程に進んだ後、退学して神戸大学医学部に社会人入学、医学を勉強、32歳で医師となり、2年間の臨床研修を経て病理医となった。
別な世界を経験していることが、著者の記述の強みとなっている。
1960年代には偏差値の高い優秀な高校生は、工学部ことに「宇宙工学」や「原子力工学」分野に進んだ。現状を見ればその選択は妥当だったかどうか。いま、成績優秀な生徒はみな医学部を目指している。が、20年後には今の高齢者のほとんどはいなくなり、医師の過剰時代は必ず来る。
そういうことも指摘して、安易に医者を目指すなと警告している。医者の世界へのガイドブックとしても貴重な本だが、刺激的タイトルのために誤解されないことを祈る。
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