ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【読書から】難波先生より

2014-06-23 13:21:01 | 難波紘二先生
【読書から】
 8月用の書評のために
 1.榎木英介『博士漂流時代:<余った博士>はどうなるか?』, Discover サイエンス新書, 2010
 2.仲野徹『エピジェネティクス:新しい生命像をえがく』,岩波新書, 2014
 3.C.マリス『マリス博士の奇想天外な人生』,ハヤカワ文庫,2004
 4.庄司克宏『欧州連合:統治の論理とゆくえ』,岩波新書, 2007
 5.清水勲『四コマ漫画:北斎から<萌え>まで』,岩波新書, 2009
 を並べて読んでいる。私の場合、こうやって四,五冊を同時並行で読むのが一番能率がよい。

 本を読む前に、目次の小項目への頁番号の有無、索引と参考文献の記載の有無をチェックする。通読しないと必要事項が発見できないような本や、参考文献の明示がない本はあまり信用できない。
 キャリー・マリス(Kary Mullis)はカリフォルニアのバイオ会社にいた1983年5月、デート中にDNA断片を増幅させるポリメレース連鎖反応(PCR)のアイデアを思いつき、同年12月実証実験に成功した。PCR法は分子生物学に革命をもたらし、マリスは1993年のノーベル化学賞をカナダのマイケル・スミスと共同受賞した。スミスの業績はDNAの狙った場所に塩基対の変異をもたらす技術の開発であり、今日の遺伝子工学は二人の手法の上に成り立っている。
 が、福岡伸一訳のこの本は、目次は章別のページ番号が振られているだけで、人名索引も事項索引も、参考文献もない。

 索引と年表、参考文献があるのは『四コマ漫画』だが、目次の小見出しにページ番号がない。
 先日(6/15)の「産経」と「中国」が、小松左京が1948年に描いた漫画が発見されたと報じていたが、絵を見ると手塚治虫の漫画にそっくりだった。日本発の漫画が世界に広まった背景には天才、手塚治虫以外にもそれなりの要因があるにちがいない。
 それを知りたいと思う。全8章からなるこの本には、見出しの小項目へのページ番号がなく、いちいち赤いボールペンで書き込まなくてはならないので難儀する。

 『博士漂流時代』と『エピジェネティクス』は小見出しへのページ番号は振られているが、索引と参考文献がない。

 『欧州連合』は小項目へのページ番号配置と参考文献は充実しているが、やはり索引がない。
 日本の新書は「岩波新書」が最初で、これは英国のペンギンブックに範をとった岩波茂雄の「創刊の辞」にあるが、Penguin BookもLoeb Classical LibraryもIndex(索引)がしっかりしている。「や、これは便利だ」と読者が思うような、目次、索引、参考文献、年表、年譜などがしっかりしたよい本を出してくれるように、執筆者と編集者に望みたい。

 『欧州連合』を開いて見て思うこと。
 「三十年戰争(1618~48)」を終わらせた「ウェストファリア条約」(1648)と「ユトレヒト条約」(1713)により、ヨーロッパ諸国の国境が確定し、国語と国民国家の形成が始まった。
フランス革命(1789)以後、強烈な民族意識に支えられて、ヨーロッパでは国家間戦争が絶えなくなった。二度の世界戦争を引き起こした後、西ドイツとフランス提携し、これにベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ)が加わり、1952年に石炭と鉄鋼の「EC(欧州共同体)が設立された。これが1958年に「EEC(欧州経済共同体)」に発展し、現在の「EU(欧州連合)」の出発点となった。
 戦争をくり返した国民国家の歴史を反省し、国民国家の上に共通の経済と政治の仕組みをつくり、欧州全体にひとつの「スーパー国家」をつくるという歴史的実験である。
 EUの拡大はソ連崩壊(1991)と東ドイツを初め旧ソ連圏の国家のEUへの加盟を実現し、「60年以上にわたり欧州の平和、和解、民主主義、人権の向上に貢献した」として、2012年に「ノーベル平和賞」を受賞している。
 他方、旧ソ連圏がロシア以外すべてEUに加盟すると、ウクライナの加盟によりロシアは黒海への進出港を失ってしまう。これが現在の「ウクライナ/クリミア紛争」の根源的な問題だろう。

 ウクライナ、シリア、レバノン、イラク、新疆ウイグル自治区など、S.ハンチントンのいう「文明の衝突」するところで、紛争が起こっているような気がする。
 このうちイラク問題は、北部のクルド族問題、南東部のシーア派と西部のスンニ派の対立問題がからんでいるので複雑だ。
コメント (7)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【検証STAP報道15】難波先生より | トップ | 【ほんの話】難波先生より »
最新の画像もっと見る

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2014-06-24 11:01:26
マリスのデート(ドライブ)のエピソードは有名ですね。
「がん遺伝子の発見」 黒木登志夫著 中公新書(1996)にはこんな話も書かれています。

マリスは1993年ノーベル化学賞を受賞した。その前年日本国際賞を受賞した際、式後のパーティーでガールフレンドとデートした時のエピソードが紹介された。皇后陛下から「今日一緒に来られている方がその方ですね」と尋ねられたマリスは「いや、別の人です」と答えた。皇后陛下はすかさずおっしゃった。「それではもう一つ大発見ができますね」。
Unknown (Unknown)
2014-06-24 21:03:58
修復腎移植については、どう思われますか。
Unknown (Unknown)
2014-06-24 21:14:09
自称医師と言って身分を明かさず、「にせ医学に騙されないために」という本を出版する人をどう思いますか。
Unknown (Unknown)
2014-06-24 22:36:11
皇后陛下のお人柄、すてきですね。お作りになる和歌を目にするたびに、日本語の美しさを再認識しております。
Unknown (Unknown)
2014-06-25 00:24:24
雅子様が「適応障害」と言われていますが、宮内庁が雅子様に「適応障害」と思われます。
Unknown (Unknown)
2014-06-25 00:43:34
最初の書き込みどこかで見たと思っていたら、やっぱり〔num 〕さんのツイートだった。おんなじこと書いてあるよ。
Unknown (Unknown)
2014-06-25 00:55:18
マリスといえば、ノーベル賞の授賞式に愛人のお子さんを連れて行ったとか言われていますが、そういう人が好きな人もいるでしょう。ノーベル賞受賞者にも色々いらっしゃいますが、私は山中先生のご家族の印象が強いです。授賞式に奥様とお嬢様お二人、どちらも当時医学生だったと思いますが、仲睦まじく微笑ましく思った記憶があります。

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事