ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【明晰夢】難波先生より

2014-11-03 11:57:47 | 難波紘二先生
【明晰夢】 10/25早朝、「明晰夢」を見た。クリアー・ドリームとは「夢を見ているという意識のある夢」をいう。「夢」の項目は『認知科学辞典』(共立出版)にない。『最新医学大辞典』(医歯薬出版)には「夢」と「夢解釈」があるが、明晰夢が書かれていない。明晰夢はこの前も見たので、3度目だ。李氏朝鮮時代の人が、バーコードのスキャナーを使っている夢で、「そんなバカな」と自分でも夢だとわかった。

 今、明晰夢について書いた本の名前を忘れたが、慣れると夢の中で、見ている夢をコントロールできるようになるという。「エクセルDB」を調べたら5,100冊入力した中に少なくとも3冊、関連本があった。G.アンダーウッド編『オックスフォード・心の科学ガイドブック』(岩波書店, 2004)に「夢」の項目があり、明晰夢や白日夢が説明されている。他は訳本で索引がなく、急場の役に立たない。他は「新鮮な夢」、「はっきりした夢」などと誤訳しているようだ。

 10/27「便り」に「明晰夢」について書いた後、宇和島の近藤先生から、日経サイエンス別冊201「意識と感覚の脳科学」が出たことを教えられた。
 松山市大街道の「明屋(はるや)書店」で買い求め、松山ANAホテルで読んだ。
 これに3頁にわたり「明晰夢」が取り上げられている。ただし、日本語文献はなく、すべて英語の参考文献。英語の正式な名称はLucid Dreamというようだ。ルーシッドは「明解な、クリアな、透明な」という意味だ。
 Stephen LaBerge: Lucid Dreaming. A concise guide to awakening in your dreams and in your life. Sounds True Inc., 2009 という本は副題からはとんでも本の可能性もあるが、米国アマゾンに注文した。読み終わらないうちに邦訳が出るかも知れない…。
 日経サイエンス記事には、やはり私が書いたように、明晰夢を見る回数が増えると、夢を自分でコントロールできるようになり、悪夢の回避や心理的トラウマの治療に役立つと書かれている。この領域の研究も進歩しているようだ。
 「明晰夢を自由に見られるようになるには、夢をノートに書くとよい」とある。

 日本では明恵が夢の記録で知られる。その「夢記」は『明恵上人集』(岩波文庫)にあり、
河合隼雄『明恵、夢を生きる』(講談社文庫)という彼の夢の研究書もある。久保田淳他の校注による岩波文庫には索引がなく、解説で白洲正子に『明恵上人』があるのを指摘するのみ。
 フロイトの「夢判断」は、いまはデタラメという評価が定まったようだ。
 河合の本には索引があるが「明晰夢」は書いてない。「孔子の夢」、「宝くじの夢」が索引にあるが、日本語の「の」には前者のように所有のOFを表す場合と、後者のように「についての」のONを表す場合があるから、索引もやっかいだ。「夢」の項で主索引をつくり、「文脈索引」で区別すればあいまいさは回避できるのに…。それにしても「明晰夢」は索引に載ってない。
 しかし河合の講談社文庫p.364-65にある「夢が覚めて燈火の下で記録した」という夢は、すでに死んだ馬医者が出てきて、見る間に少年に若返ったという内容で、寝入りばなの明晰夢に他ならない。
 ひょっとして日本の心理学者は「明晰夢」を知らないのでは?
 あと明恵の伝記の現代語訳には平泉洸・校注『明恵上人伝記』(講談社学術文庫)がある。明恵を昔は「栂尾(とがのお)の明恵上人」と言った。これは「自叙伝」ではない。

 筒井康隆『パプリカ』(中央公論社, 1993)は、夢の中で現実を操作することができる精神科の女医が主人公のSF小説だ。『夢の木坂分岐点』や近作『繁栄の昭和』を見ても、彼の小説技法である「メタフィクション」とは、「描かれている作中の現実が、実はすでに他者により書かれたフィクションのコピーである」という構造をしている。
 昔、「マルボロー・カントリー」というTVコマーシャルがあった。馬に乗ったカウボーイが出てきて、タバコの絵に向かって飛び込むと、一変して大西部の雄大な風景に入り込むという画像だった。あれをコピーしてビル・ゲーツはWidows OSを開発した。
 ウィンドウの向こうにヴァーチャル・リアリティの世界があり、その世界から現実世界を眺め、それを動かす。それが筒井康隆の手法だろう。彼は明晰夢を見ている可能性がある。
 今後、遅ればせながら日本でも明晰夢の研究が進むであろう。
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-11-03 13:23:54
夢の記録といえば、南方熊楠が日々詳細な記録をつけていたことが有名ですね。出典をすぐ思いつけなくて記載できず申し訳ないです。
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