ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【知恵熱】難波先生より

2014-06-30 13:19:55 | 難波紘二先生
【知恵熱】
 「広辞苑」には「乳児が知恵づきはじめる頃、不意に出る熱」とある。「国語大辞典」には「歯牙熱、知恵ぼとり」が同義語として載っている。
 幼児は乳離れする頃になると脳の神経回路も急速に発達し、好奇心のおもむくまま多量の情報に接するが、それらを上手く処理できないとストレスで発熱する、とわたしは考えて来た。少なくとも私の子供たちには、そういう時期があった。

 6/27「産経」に<ストレス体温上昇、脳神経回路を解明、京大チームがラット実験>という記事があった。ネットにないので同日の「日刊工業新聞」記事にリンクする。「産経」と同記事で通信社の配信と見られる。
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1020140627eaab.html
 この発熱に関与するのが「褐色脂肪細胞」とは知らなかった。一般に動物は寒さで体温が低下すると骨格筋を痙攣させる「ふるえ」を起こして、ATPを消費して熱を発生させる。冬眠する動物では首の後から背中にかけて、褐色脂肪がよく発達しており「冬眠腺」とも呼ばれる。春になると視交叉上核にある体内時計の作用で、交感神経を介して冬眠腺が刺激され、急激な発熱により体温が上昇するために、動物は冬眠から醒めるのである。(白澤卓二「肥満遺伝子」,祥伝社新書, 2013)

 ヒトでも乳幼児の場合、首の周りや腎臓の周囲などに褐色脂肪を認めることがある。「ラットにストレスを与えると、褐色脂肪で発熱する」というこの記事を読んで、ふと想像したのが幼児の「知恵熱」との関係だ。食慾中枢も発熱中枢(体温中枢)も情動の中枢もともに視床下部にある。1歳頃の幼児が曝される情報の洪水はなみ大抵でない。そのストレスにより視床下部から交感神経を介して褐色脂肪に信号が送られ、脂肪を燃焼させるので知恵熱が発生すると考えたら面白いなと思った。

 ところが念のためにWIKI「知恵熱」を見たら、「特発性発疹」による熱とある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%A5%E6%81%B5%E7%86%B1
同じく「特発性発疹」の項にはこうある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AA%81%E7%99%BA%E6%80%A7%E7%99%BA%E7%96%B9
 「エッセンシャル微生物学・第四版」(医歯薬出版, 1995)を見ると、ヒトのヘルペスウイルス6(HHV-6)は1986年、フランスのモンタニエとHIV研究でノーベル賞を争った米NIHのギャロにより発見され、HHV-7はFrekelら(1990)により発見されたとある。ともに「特発性発疹の病因」とあるが、「特発性(idiopathic)」という用語は原因が不明の場合に用いるものだから、病因が解明されたのなら、病名を変えるべきだろう。しかし欧米では不顕性感染が60~70%、日本でも2歳児までの罹患者は約60%というから、40%は不顕性感染か未感染なのである。
 すると特発性発疹によらない本物の「知恵熱」があってもおかしくないなと思う。
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