この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

#26 米国「イサカ」からのお便り

2005年02月18日 | 随想

私がこのブログを始めてから1ヶ月半ほど経過した。内容のないつまらないものだが、書いている私はそれなりに楽しんでいる。すっかり忘れていた昔のことが次々と思い出されて来る。いろいろな時にいろいろな先輩や友人に恵まれた。お世話になった方も懐かしい。本当に幸せだったと思う。

昨日、勇を鼓して何人かの方に私のこのブログのことをEメールでお知らせした。

その後で、私は何か小学校の父兄参観日の教師のような気持ちになった。

もし見てくれる人がいるのなら、もう少し体裁を整えた方がよかった、などと後悔した。
「最新の記事」には「チボー家の人々」以外は、今は「ダイアナ」と「のらくろ」と佐藤紅緑の「ああ玉杯に花うけて」しか載っていない。同じことなら、「シエークスピア」や「ニーチェ」とは言わないまでも。すぐ前の「内村鑑三」やル・フォールの「教会への讃歌」とか「天国への門」、またその前の
「ハイネ」「ヘッセ」「シュトルム」のようなもっと「ひびき」の良い題のものが並んでほしかった。
「最新の記事」の順番を変える方法はないものか、などとも考えて見たが、どうもできないようだ。
この年になっても妙な「てらい」がある。

思いがけず米国の「イサカ(Ithaca)」からEメールが届いた。旧姓Iさん(以後Iさんとだけ呼ぶ。)からだ。有難い。何と地球が狭くなったものか。

イサカとは米国のあの有名なコーネル大学のある町である。ニューヨーク州にある。
Iさんは、私が大学に入ったばかりの時に同じ語学(ドイツ語)のクラスの女子学生。
私達50人あまりのクラスに女子学生が3人いた。その内のお一人。結婚されて外国の苗字に変わられたようだが旧姓のままIさんと呼ばせて頂く。Iさんは今もまだコーネル大学で教鞭をとっておられるようだ。

感激である。

半世紀前の話である。大学に入ってすぐ私達の語学のクラスの「コンパ」があった。
大学の構内の大学生協喫茶部の小さな建物でのアルコールなしのコンパだったと思う。
思い思いに自己紹介がつづいたが、Iさんの番になるとIさんはろうろうと英語の詩を朗読した。
朗読というのは適当でない。暗誦している詩を聞かせてくれたのだ。(今辞書をひいて見ると、これは吟誦(Recital)と呼ぶようだ。)

Iさんは東京の有名な小中高一貫の私立S高校のご出身。何の苦労もせずにすんなり大学に入ってきたようだ。私は一浪の一つ年上のお兄さん。田舎の高校から東京に出て来た私は目をぱちくりして英語の詩をさっぱりわからないまま聞いていた。東京にはこんな人もいるんだと感心していた。

余談だが、オードリー・ヘップバーンのあの映画「ローマの休日」で、睡眠薬で道端で眠っているアン王女がなにやら詩を口ずさむ。
シナリオを見ると、こういう詩のようだ。
「If I were dead and buried and I heard your voice-beneath the sod ,my heart of dust would still rejoice」
(我死して埋められるとも、君が声を聞かば・・・土の下に眠る塵なるわが心も、なお喜びに震えん)
そしてアン王女は、ジョー(グレゴリー・ペック)に
“Do you know that poem?” と尋ねる場面がある。

そしてジョーのアパートでアン王女が
“Arethusa arose from her couch of snows, in the Akraceronian Mountains.”
(アリシューザはアクロシロニーナの山々の、雪の長椅子から立ち上がらん。)
と口ずさみ、そして” Keats” という。
ジョーはそれに対し “Shelley” という
アン王女はそれでも”Keats”という。

この映画では、ジョーは詩を正しく解するレベルの人間だということを観客に示す小道具のようだが、面白い。このシナリオの解説によれば、ジョーの言っている"Shelley"の方が正解なのだそうだ。(マガジンハウス社CINE-SCRIPTによる。)

どうも詩の吟誦も紳士淑女の条件の一つであるようだ。

映画「ローマの休日」の新聞記者のジョー(グレゴリー・ペック)が、ただのポーカー好きのやくざな新聞記者ではなく、詩の吟誦もやろうとすればいつでもできる教養ある若者、紳士だと知ってこの映画を見るとひときわ味わいが増すだろう。ジョーはアン王女の相手役たる資格があるというものだ。

Iさんに最後にお会いしたのは、Iさんは学部の4年、私は何故か3年だった。図書館の前の藤棚の下で私が人を待っていると、Iさんがたまたま通りかかった。私が呼び止めるといやな顔もせず立ち止まってにこやかに話をしてくれた。卒業したら米国のイェール大学の大学院に行くことが決まったという話をされていたと思う。
(イェール大学とお聞きしたと私は記憶しているのだが記憶違いかもしれない。いずれにせよ米国東部のアイビー・リーグの大学であったことはたしかだ。)
Iさんは米国の大学院に行って、それっきり向こうの人になってしまわれたようだ。

昨日のIさんのEメールの件名は何と「のらくろ」だ。そしてこう書いておられる。「のらくろ、あゝ玉杯、は兄が読んでいたので、すこし読みました」

やはり心配していた通りだった。タイミングがまずかった。のらくろ、や、ああ玉杯、はもっと後にすればよかった。

でも、私が本の出版時期や版について記述しているのは面白いと褒めてくださっている。

Iさんの兄君は、米国H大学の国際関係論で有名なあのI教授。私もNHKのTVでよく拝見している。I教授の知性がそのままあらわれているようなおだやかな口調での静かな語り口。私もフアンの一人である。あのI教授も子供のころはのらくろ、ああ玉杯、を読んでいたと思うとほっとする。同じ仲間だったのだ。    

イサカのコーネル大学におられるIさんからお便りを頂いたのは本当に光栄だ。
これもブログを続けているおかげだ。
一生懸命に書いていれば、またイサカのIさんからお褒めのEメールをいただくのも夢ではないだろう。

ブログを勧めて下さった「シニア・シティズンズ・湘南」のKさんにも感謝したい。(おわり)

 画像はイサカのコーネル大学キャンパス (同大学ホームページより)


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
順序の変更 (scs-kondou1717)
2005-02-19 11:13:41
本題では無いコメントで失礼します



最新の話題の順序を変更することは出来ます、この順序は発行の日時を基礎に並べています、一方記事は発行日付は容易に変更できるようになっています、これを逆手にとれば日付か時間を自分の好む順番に変えてやればいいのです





ところで、最後のKさんって私のこと?感謝いただいて面映い思いですが、最近の貴兄のご精進振りを拝見していると、奥様には「あの人、とんでもないものを持ち込んでくれた!」と怨まれているのではないかと内心恐れる今日この頃です。
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順序の変更 (佐藤元則)
2005-02-20 09:20:58
kondouさん



ご指摘有難うございます。私も日付を変えようかとも思ったのですが、日付も大切だと思ってそこまでやりませんでした。

今考えると、授業参観日とその後数日に限って日付を変えて順序を変え、参観日が終わってから日付を元にもどすという手もあったかなとは思っています。(弟子もそれなりに成長しますね。)



我が家の環境大臣は私がこのようなことをやっていることは全く知しりません。

たとえ知れたとしても、Kさんのお勧めで始めたと言えば全く問題はありません。「Kさんのようによく学びよく遊びなさい」というのが我が家の大臣殿の口癖ですから。

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