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安保法案:「経済的徴兵制」とは

2015-07-25 16:14:06 | 戦争法案
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「あかりちゃん」が言っていた「経済的徴兵制」って、どゆこと? というお話。

簡単に言えば、
>国家が経済格差の拡大を意図的に助長する経済政策を採った上で、貧しい人が兵隊に就職する事を余儀なくされるまで経済的に追い込むように誘導する、間接的な徴兵制のことを意味する。(NAVERまとめより)



ついては一昨日(23日)、会員限定記事として、毎日新聞が関連記事をWebにUPした。以下、その一部の紹介。

特集ワイド:狙われる?貧困層の若者 「経済的徴兵制」への懸念 毎日新聞 7月23日/会員限定記事

―― 前略 ――

「格差社会では、徴兵制は必要ありません。志願兵はいくらでも、経済的徴兵制で集められるのですから」。
米国社会に詳しいジャーナリストの堤未果さんは言う。どういうことか。
貧困から抜け出し、人間らしい生活をするためにやむなく軍に入隊する。
そんな実態を、米国では「経済的徴兵制」あるいは「経済的な徴兵」と呼ぶ。堤さんは著書「ルポ 貧困大国アメリカ」で、経済的徴兵制に追い込まれた若者の例を紹介している。

イリノイ州のある若者は「この国で高卒では未来がない」と、無理をして大学を卒業したが職がなかった。
残ったのは奨学金約5万ドル(約620万円)の返済と、在学中の生活費に消えたクレジットカードの借金約2万ドル(約250万円)。
アルバイトを掛け持ちして返済に追われたが、そんな生活を変えたいと2005年に軍に入隊した。
入隊したのは、国防総省が奨学金返済を肩代わりする制度があるためだ。
米軍には他にも、除隊後の大学進学費用を支給する高卒者向けの制度もある。
「若い入隊者の多くは、こういった学資援助の制度に引かれて志願しますが、入隊期間などの支給条件が厳しく、奨学金や進学資金を満額受給できるのはごく一部」(堤さん)。

ちなみに、イリノイ州の彼は入隊直後、イラクに約1年派遣されたが、帰還兵特有の心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患い、働けなくなった。
世界の兵役拒否制度を調べている京都女子大の市川ひろみ教授(国際関係論・平和研究)によると、米国が徴兵制から志願制に切り替えたのはベトナム戦争から米軍が撤退した1973年。その後、フランスも90年代半ばに、イタリア、ドイツは00年以降、相次ぎ志願制になったという。
「徴兵制の廃止や停止は世界的傾向です。無人機の登場に象徴されるように、大勢の兵士が総力戦にかり出された第二次世界大戦期などとは、戦争のあり方が激変したのです」と説明する。
だが、いくらハイテク兵器が発達しようが、敵地を占領するには地上戦は欠かせない。だから軍隊は若い兵士を一定数確保する。
米国の場合、ここで経済的徴兵制が機能する。

―― 中略 ――

実際に貧困と自衛隊を結びつけて考えざるを得ない出来事も起きている。
今月、インターネット上にある写真が投稿され話題になった。
「苦学生求む!」というキャッチコピーの防衛医科大学校の学校案内ちらし。「医師、看護師になりたいけど…お金はない!(中略)こんな人を捜しています」との言葉もある。
作製したのは、自衛隊の募集窓口となる神奈川地方協力本部の川崎出張所。川崎市内の高校生らに自衛隊の募集案内などとともに送付したものだ。

防衛医大は、幹部候補を養成する防衛大学校と同じく学費は無料、入学後は公務員となり給与も出る。
ただし卒業後9年間は自衛隊に勤務する義務があり、その間に退職する場合は勤務期間に応じて学費返還(最高で約4600万円)を求められる。
ネット上では、この背景を踏まえ「経済的徴兵制そのもの」「恐ろしい」など批判が渦巻いた。


政府は鼻で笑うかのように、「徴兵」だけは「絶対に無い」と言う。
だが、憲法無視、民意無視、民主主義無視で「戦争法案」を押し通そうとしている政府の、その言葉を信用することができるだろうか。ムリッ!
むしろそれだけをあの政府が否定するのは不自然な気さえする。

一応のところ、憲法上において「徴兵制」は、戦力不保持を定めた日本国憲法第9条のもとでは採用する余地はないとすることをはじめ、第18条の『人身の自由』に反する、という点でこれを実施できないという従来からの政府の見解はあった。

《憲法第18条》
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

だが一方、憲法では明確に徴兵制を禁止しているわけではなく、憲法解釈を変更するだけで徴兵制が実施できる可能性がある、とも言える。
「憲法解釈の変更」がお得意の安倍政府、「徴兵制」を容認しようとすれば訳がないだろう。

ただ、関わる法律や物理的な整備に、時間はもとより膨大な費用が掛かることもあり、また、短期間で人員が入れ替わる徴兵制は「非効率」との指摘があって具現性に乏しいという見方もある。
そのことから、これ以上いくらなんでもということも言えるが、しかし、それほど直接的であからさまな「徴兵制」ではないとしても、巧みに“兵員”を確保することを考えていて何ら不思議ではない。

巷で、「ブラック企業」だ「ブラックバイト」だと騒がれて久しい。また先頃の「労働者派遣法」の改悪もまたそのひとつだ。

この「労働者派遣法改正案」が成立すると、企業側は働き手を代えさえすれば、派遣社員を際限なく受け入れられるようになる。
働き手からすれば、事実上、直接雇用につながりにくくなり正社員登用の機会が失われることにもなる。従って却って派遣労働者が増え、不安定雇用が広がるという懸念が大いにある。結局労働者は3年ごとに行き先を探さなければならなくなるのだ。
薄給で、かつ、職場を転々としなければならないことを考えれば、厚遇で迎えてくれる自衛隊は有り難い。そう考える者も居るはずである。
「労働者派遣法」の改悪が、即ちそうしたところまで想定していないとしても、その結果において、そのような者達を生み出す「可能性」があることは決して否定できない。

一方、学校を卒業後、教育ローンであるとか奨学金の返済に追われることになる若者はどうだろうか。例えば、「自衛隊に入れば国が返済を免除してくれる」などと甘言を弄されたらどうだろう。


先週、17~19歳の若者が安保法制をどこまで理解しているのか、京都・滋賀の大学キャンパスなどで尋ねたというその調査結果が京都新聞で発表された。
「徴兵制有無25%が誤解 安保法案、17~19歳に聞く」(京都新聞 7月17日)

その質問項目の中に、「徴兵制」についての設問がある。
結果、「25%が「徴兵制を可能にする条文がある」と誤答した。」としている。だが果たして、条文がないだけで「誤答」と切り捨ててしまうのはいかがなものか。
この「25%」の若者たち。「ある」と答えている以上、潜在的に充分に危険性があり、その懸念があると感じての回答だったということも言えるのではないだろうか。





また、上記、引用記事の中に、仏、伊、独が相次ぎ「志願制」としたことについて、「徴兵制の廃止や停止は世界的傾向です。無人機の登場に象徴されるように、大勢の兵士が総力戦にかり出された第二次世界大戦期などとは、戦争のあり方が激変したのです」としているが、私は一方で国際世論全体が「軍事力に頼らない社会」を模索し、それを目指す上での軍縮の動きがあるが故ということも見逃せない理由のひとつだと思っている。

一方、これから「戦争をしよう」と企んでいる安倍。これはこれで、上記、引用記事にあるように「いくらハイテク兵器が発達しようが、敵地を占領するには地上戦は欠かせない。だから軍隊は若い兵士を一定数確保する」ということに立てば、今現在、決定的に自衛隊員が不足している事態において、ましてや「海外派兵」を念頭に入れれば、「兵員」の増強は必須であるということになる。

こうしてみると、名前を変えた「徴兵制」。充分にあり得ることではないだろうか。
言わずもがな、安倍の時代遅れな覇権主義思想故の策謀が、どうにも見え隠れして仕方がない。



《関連・参考記事》
「矢面に立たされる自衛官」
「「戦争に行かない人は、死刑にする」」
「銃弾に倒れるだけが戦死者ではない」
「自衛官も国民の一人である」
「空想と現実の狭間」
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